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第55話 戦うべき相手、逃げるべき相手

 

 朝まで魔物と戦っていた俺たちは、マークⅠのファテーグの魔法でSPを回復してから、無銘の刃の拠点に帰還した。


 食堂にはすでにシズナとソローミの姿があり、俺は南の砦と東の砦のどちらを狩場にするか迷ったが、二人の狩場になるのは南の砦だと思い、南の砦に移動した。


 だが、俺が教えられることはたかが知れている。彼女らは前衛職二人しかおらず、彼女らの戦闘力に全てがかかっているからだ。


 そんな俺ができることは、少しばかりの経験値UPと強い魔物の情報を提供するぐらいのものだ。


 なので、俺は彼女らに、強い部類の魔物との戦闘経験を積ませることを重視することにした。


 この南の砦の周辺は駆け出しの冒険者たちが多く訪れるが、強い魔物は敬遠されて放置されがちなので、丁度、俺の考えにピッタリの環境でもある。


 俺は彼女らに魔物と戦わせつつ、マークⅠに強い部類の魔物の居場所を探るように指示を出す。


 その情報により、まずはスネーク種と戦わせてみることにした。


 無論、ワンちゃんの経験にもなるので三人で戦わせている。だが、通常種のスネークの巨大さに彼女らは圧倒され、噛まれたことで毒に侵されて、シズナとソローミは悲鳴を上げて地面をのたうち回っている。しかし、ワンちゃんは高い身体能力を生かして噛みつき攻撃を躱していて、心配そうにシズナたちを見つめている。


 まぁ、これでスネークの毒を食らうと体がどうなるのか、身に染みて分かったはずだからいい経験になっただろう。


 すぐにマークⅡがスネーク種の群れを倒し、マークⅠが彼女らの毒を『浄化』で解毒して『治療』で傷を癒す。


 シズナとソローミの顔は青ざめて身を震わせているので、俺はしばらく彼女らを休ませることにした。その間はマークⅡたちが魔物を倒しているが、無傷のワンちゃんも戦っている。


 その姿に感化されたのか、シズナたちは俺が想定するよりも早く戦意を取り戻し、俺は次の魔物であるアリゲーター種を彼女らにあてがった。


 通常種のアリゲーターはレベル1でも、特殊能力を加味すると攻撃力600、守備力300という強敵だ。


 彼女らは噛まれることを警戒していたからか、噛まれることはなかったが、尻尾の一撃をまともに受けたシズナが吹っ飛んで地面を転がって瀕死になった。


 ここでもワンちゃんはアリゲーターの攻撃を躱し続けて無傷だった。


 次に俺は亀の魔物のタートス種をぶつける。


 通常種のタートスは特殊能力を加味すると守備力が400近くになる。なので、一般的な上級職ではダメージを与えることができない上に、多彩な魔法を使うので敬遠されがちだ。


 正直、タートスは彼女らにとって強くはない相手だと思うが、一応、戦わせてみることにした。

 

 彼女らは最初の方はあまりに高い守備力に驚いていたが、特殊能力を使用することでタートスを倒すことに成功する。


 まぁ、予想通りといったところか。彼女らも勝つことができて嬉しいだろうしな。


 俺は次の相手に悩んでいたが、スコーピオン種にすることにした。


 通常種のスコーピオンは特殊能力を加味すると守備力が300超えで、ポイズンの魔法を使う。


 彼女らは『毒牙』や『毒針』を警戒しているようだが、ポイズンの魔法を食らってしまう。だが、スネークの毒よりも毒レベルが低かったようで、彼女らは毒に侵されながらも、スコーピオンを倒し切ったのが意外だった。


 強い部類の魔物たちの中で、ここまでは戦うことを選択してもなんとかなる相手だ。だが、これから戦う魔物たちは逃げることを第一に考えるべき相手であることを俺は彼女らに伝えた。


 なので、彼女らには俺たちが戦うところを見学させることにとどめる。


 理由は、彼女らが死ぬ可能性が高いからだ。


 その相手は、百足の魔物のセンチピート種と蟷螂の魔物のマンティス種で、この辺りに出現する魔物たちの中で、極めて厄介な相手だ。


 まず、通常種のセンチピートは特殊能力を加味すると守備力が300超えで『毒牙』を持っている。これだけでは、これまでの魔物と変わらないと思うだろうが、センチピート種は地中を自由に移動し、混乱の魔法であるコンヒューズトの魔法を使う。


 これにより、地中から背後に回られて突然、姿を現したセンチピートにコンヒューズトの魔法をくらうパターンが多く、混乱して同士討ちが発生し、死人が出ることも少なくないらしい。


 俺はセンチピート種の群れと戦いながら、「パーティ人数が多いときや素早さの低い後衛職がいる場合が最も危険だ」と付け加えた。


 最後はマンティス種だ。マンティス種は遠距離から『斬撃衝』という風の刃を、下位種の段階から撃ってくる。


 当然、数が多ければ多いほど脅威でしかない。それに彼らの初撃の『斬撃衝』は必殺だ。


 つまり、姿を隠しながらこちらの油断を待ち、遠距離から『斬撃衝』を放ってくるハンターなのだ。


 さらには風の刃をかいくぐって接近戦に持ち込んでも、鎌を振るうモーションと『斬撃衝』を撃つモーションが同じで、剣で鎌の攻撃を受けると『斬撃衝』をくらう可能性があるので、鎌の攻撃はかわすしかない。


 まぁ、俺たちにはマークⅠの『気配探知』がある。なので、彼らが隠れていてもその所在は分かるし、『斬撃衝』を防ぐマークⅡの『鋼壁』もあるし、遠距離攻撃手段もあるので敵ではないが。


 だが、実際にマンティス種と戦ってみると、こちらに遠距離攻撃手段があることを認識すると彼らは上空に飛んだ。それからは空から『斬撃衝』を放つという攻撃に終始し、機をみたところで空の彼方へと消えて行った。


 この高い知性を目の当たりにしたシズナは「虫とは思えない」と動揺を隠しきれない様子だった。


 あとはこの辺りの魔物で逃げるべき相手は、オークアヴェンジャーだが上位種扱いになっているので言葉で伝わるだろう。


 俺たちは昼頃まで魔物と戦い、俺はシズナたちとの別れ際に「SP管理には十分に気を配れ」と言い残して彼女らと別れた。


 彼女らは魔法を使用できないから特殊能力に頼ることになる。戦闘中にSPが切れるということは死を意味するからだ。


 そして、俺たちは昼飯を食べるために、一度戦士の村に帰還したのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

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明日もたぶん10時に投稿する予定です。


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