第5話 黒亜人のレッサー・コボルトとの戦い
小屋から出た俺は結界を通り抜けてから足を止める。そして、左と右にある小屋を一瞥して溜息を吐く。
小屋にいるかもしれない仲間を頼るのは最後の手段だ。弱い俺が彼らの足を引っ張ってはいけないからな。
で、森で手に入る動ける奴は動物の死体や魔物の死体ぐらいか? けど体が腐って骨だけになるよな? 骨だけで強いのか? そもそも、漫画なんかでは、死霊術師の領分だと思うが『生命付与』でもいけるのか?
逡巡していた俺が我に返ると、俺の前方にいつの間にか人が立っていた。
「――っ!?」
俺は慌てて身構える
身長が一メートルほどで、犬のような顔ということは、レッサー・コボルトだろう。
水晶玉の情報では、魔物の階級はコボルトで例えるとこうなるらしい。
下位種 レッサー・コボルト
通常種 コボルト
上位種 ハイ・コボルト
コボルト種は亜人に分類されていて、亜人は肌の色が白と黒が存在し、白は人とされているが黒は魔物ということらしい。
俺の前方にいる奴は黒い肌なので魔物になる。奴のステータスの値は俺と同じぐらいだったはずだ。
当然、奴のレベルが1だったらの話だが……
俺が注意深くレッサー・コボルトの動向を窺っていると、奴は邪悪な笑みを浮かべ、手に持っていた鉄の槍を俺に目掛けて放った。
鉄の槍は凄まじい速度で飛んできたが、俺は体を捻ってなんとか躱すことに成功する。
――殺さないと殺される。
そういう思いが俺の脳裏を支配し、気がつくと俺は全力でレッサー・コボルトに向かって突進していた。
奴との距離を詰めた俺は右手に持つ木の棒で、思いっきりレッサー・コボルトの顔面を強打した。
一瞬、ふらついたレッサー・コボルトに対して俺は容赦なく、左手に持つマークⅠで奴の頭を殴りつける。
たまらずに奇声を上げたレッサー・コボルトが地面に倒れると、俺は奴の顔面を踵で踏み抜いた。
レッサー・コボルトは、口から血をまき散らしながら地面をのたうち回る。
相手が人なら、すでに死んでいてもおかしくない攻撃のはずだが、さすが魔物といったところか。
奴が立ち上がると、俺は冷静に奴の頭をマークⅠで殴り、レッサー・コボルトが倒れると、踵で顔と胸だけを執拗に狙い続ける。
俺がそれを何度も繰り返すと、レッサー・コボルトは沈黙したのだった。
だが、俺に慢心も油断もない。漫画などではここで気を抜いて、不測の事態に陥っているからな。
俺はレッサー コボルトから視線を逸らさずに後退し、奴が投げた鉄の槍を拾い、レッサー・コボルトの前に戻る。
「じゃあな」
マークⅠをズボンのポケットにしまった俺は、振り上げた鉄の槍を奴の首へと振り下ろし、首を刎ね飛ばした。
「さすがに首がなくなったら死んだだろ」
なんか疲れたな……今日の森の探索は中止だ。
身を翻した俺は小屋に向かって歩き出したのだった。
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