表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/96

第45話 黒と白の騎士とスケルトン人形

 

 昼前まで魔物と戦い続けた俺たちは、冒険者ギルドにて魔物の首と素材を換金した。


 その合計金額は5000万円を超えた。マークⅢいわく、これにはギルド職員も驚いていたらしい。


 まぁ、さすがに15時間以上も戦い続けた上に、夜間での戦闘だったからな。


 夜は魔物の数は昼よりも多く、冒険者たちがほとんどいないから当たり前だと言える。だが、5000万という金額に達したのは何よりも上位種を倒したことが挙げられる。


 その上位種とは、ハイ・アリゲーターとハイ・ウルフだった。


 俺たちはハイ・アリゲーターが率いるアリゲーター種の群れと、二匹のハイ・ウルフが率いるウルフ種の群れが戦闘を繰り広げている場面に遭遇した。


 ハイ・ウルフたちは果敢にアリゲーター種の群れを攻撃していたが、ハイ・アリゲーターは後方で指揮を執っているのか動かない。


 そこを俺がポイズンの魔法で先制し、ハイ・アリゲーターを強襲した流れになる。


 マークⅢによると、ハイ・アリゲーターは『剛力』を加味すると、その攻撃力は1200を超えていた。守備力は『堅守』を反映させると700以上という驚異的な数値で、一撃もらえば致命傷、俺の攻撃もほとんど通らない相手だが、素早さは300ほどしかなかった。


 戦うならそこを突くしかなく、ポイズンの魔法の重ね掛けにしか勝機は無い。しかし、この戦いは一対一の戦いではないので、俺は躊躇なく奥の手を使用し、ハイ・アリゲーターを輪切りにして屠った。


 ハイ・アリゲーターの死を知ったアリゲーター種の群れは逃走し始めるが、それを俺たちが許すはずもなく、アリゲーター種の群れを全滅し、その流れのままウルフ種の群れも殲滅した。


 ハイ・ウルフはハイ・アリゲーターよりもかなり弱く、ステータスの値も俺よりも低いので、俺は事も無げに首を刎ねることができた。


 俺たちが100を超える魔物の首と素材を回収していると、血の匂いに引き寄せられたのか、3匹のハイ・アントが率いるアント種の群れが姿を現した。


 だが、ハイ・アントはステータスの値がハイ・ウルフよりも低く、気をつけるべき点は『毒霧』を撒き散らすことぐらいなので、難なく倒すことができた。


 合計で6匹の上位種を倒したことで、それだけで3000万を稼ぐことができたが、俺のレベルが上がらなかったことが不安要素でもある。


 かなりの経験値を得たはずだがどうなっているんだ? 俺はまだレベル7なんだぞ?


 俺は不安に苛まれながらも、レベルが上がらないと決まった訳ではないと己に言い聞かせる。そして、想定以上に稼げた金で何を買おうかと思考を切り替えて、俺たちは武具屋に足を運んだ。


 店に入った俺はすぐに服を一式買い直す。服は夜間での魔物との戦いで返り血を浴び過ぎて血塗れになっていて、買い直したほうが早い状態だったからだ。


 これは俺たちが街に入るときに、門番たちが怪訝な目で俺たちを見ていたから気づいたことだ。さすがに視界が悪い夜の戦いでは、魔物の返り血が見えないので躱すことは難しい。


 ちなみに、街に入った俺たちはすぐに建物の影に隠れて、俺とマークⅡの鎧を水を染み込ませた布できれいにしたことは言うまでもない。

 

 試着室で買った服に着替えた俺は、マークⅠたちに話し掛ける。


 「今日はよく戦ってくれた。何か欲しい物はあるか?」


 〈ホネのにんぎょう〉


 マークⅠが即答した。


 「ていうか、スケルトンの人形は三体もあるだろ?」


 〈かおとかいろもちがうし、いっぱいほしいの!!〉


 マークⅠは宿でダークと一緒に人形遊びをよくしている。たまに俺も人形遊びを強請られるが、人形の違いには全く気づいていなかった。


 「まぁ、お前がそれでいいなら俺はもう何も言わん」


 俺たちは人形が飾られている区画に行き、スケルトン人形を二体購入した。


 マークⅠは嬉しそうに二体の人形を触手で持って遊んでいる。


 「私は動ける体が欲しいですわ。具体的には水晶玉を核としてマークⅡのような体がいいですの」


 「なるほどな。それならある程度は水晶玉を守れるな。素材は砂鉄か砂があるがどっちにする?」


 「マークⅡが砂鉄ですので私は砂にしますわ」


 「鎧は女性用だよな?」


 「もちろんですわ」


 「だがそれだとマークⅡと見分けがつかん」


 「色違いがあるか売り場に行ってみますの」

 

 「どうせならガダン商会の鋼の全身鎧がいいだろう」


 「こっちですわ」


 俺たちは鎧が飾られている区画に移動する。


 「へぇ、銀色と黒色と白色があるのか」


 俺は黒色の全身鎧と白色の全身鎧を指で触ってみると、塗料で綺麗に塗られているものだった。


 「一般的な鋼の全身鎧の値段は600万円ですが、ガダン商会の鋼の全身鎧は60万円ですの。色付きは黒、白どちらでも65万円ですわ」


「どれがいいんだ?」


 さすがガダン商会だな。十分の一の値段とは安すぎるぜ。


「白がいいですわ」


〈マスター、私は黒が欲しいです〉


「分かった。武器はどうする?」


〈私は戦斧のままでいいですが、大盾は黒の鋼が欲しいです〉


「ガダン商会の鋼の大盾の黒色は45万円ですわ。私はガダン商会の鋼の大剣の白色が欲しいですの。値段は20万円ですわ」


 「ああ、全部買っていいぞ」


 「では購入してきますの」


 マークⅡたちは武具を購入し、マークⅡは試着室で買った装備に着替えた。


 俺はミスリルソードを買おうかと思ったが、通常品質が3000万円、高品質が6000万円だった。どうせなら高品質がいいと思ったので購入を見送り、俺たちは店を出て、人が来ない建物の裏に移動する。


 「ここで意識を移動させるぞ。マークⅠは俺がやばそうだったら、ファテーグの魔法でSPの回復を頼む」


〈わかった〉


 宿に戻るとすぐに狩りに出ることになるだろうから、ここでやるしかない。


 マークⅡの顔の傍の空間から木製の型と砂が入った麻袋が出現したので、俺はそれらを地面に置く。


 俺が型に砂を流し込んで人型に整えると、マークⅡが砂の上にマークⅢを置いた。


 これで準備は整った。問題はどれだけSPが減るかだな。たぶん、ミスリル魔導合金よりはマシだと思うが。


 俺は『生命付与者意識移動』でマークⅢの意識を抜き出した。水晶玉と砂の身体が一体化した生命体をイメージし、水晶玉が最重要だと断定してから、マークⅢの意識を慎重に水晶玉に押し込んだ。


 ぐっ、意識が飛ぶほどではないにせよ、SPのほとんどをもっていかれたが成功したようだ。やっぱり、コアと体の合体は一つの物に移すよりもSPの消費が激しいな。


 「マークⅠ、SPの回復を頼む」


 〈わかった〉


 俺の身体が何度も金色に輝いた。そして、マークⅢがムクリと起き上がる。


 「体が動きますの!!」


 嬉しそうな声を上げるマークⅢは腕をぐるぐる回しながら、水晶玉を胸や腹に動かして位置を調整している。


 水晶玉を顔にするかと思っていたが、確かに胴体部分にあるほうがいいかもしれないな。


 「マークⅠ、お前もついでにスケルトン人形に意識を移すか?」


 〈えっ!? いいの!? やるやる!!〉


 マークⅠはダークから降りて、ダークと向かい合って何かを話しているようだ。マークⅢが無言で手を振ると、空間に裂け目が走り、購入した武具と五体のスケルトン人形を地面に置いた。


 ダークとの話が終わったのか、マークⅠはダークから離れ、地面に並び立っているスケルトン人形の前に移動する。


 〈どれにしようかな……〉 


 マークⅠはスケルトン人形を一体ずつ触手で掴んで凝視し、マークⅢが白い全身鎧に身を包んで大剣を振り回している。


 〈これにするよ〉


 マークⅠは黒いスケルトン人形を俺に手渡し、俺が『生命付与者意識移動』でマークⅠの意識を抜き出すと、液体が地面に広がった。


 だが、ダークは取り乱さずに落ち着いた様子だ。


 さっきの会話は、マークⅠがダークに体を変えることを説明していたんだろうな。


 俺はマークⅠの意識を黒いスケルトン人形へと移し、何の負荷も感じずにマークⅠの意識の移動は完了した。


 やっぱり、対象が一つなら楽だな。


 マークⅠが動き出して両手でダークを抱き上げる。


 「キュキュ!! キュキュ!! キュキュッ!!」


 ダークは楽しそうに鳴いている。


 マークⅠがダークの背に飛び乗り、マークⅢが地面に並ぶスケルトン人形を回収すると、俺たちは宿に向かって歩き出したのだった。

面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価(↓の★★★★★)で応援していただけると、作者の執筆速度が1.5倍になります。(たぶん)


明日も10時に投稿する予定です。


勝手にランキングに参加しています。

リンクをクリックしてもらえるとやる気が出ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング に参加しています。 リンクをクリックしてもらえると作者のモチベーションが上がります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ