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第43話 奥の手

 

 俺たちはエルザフィールの街が見える辺りで魔物の群れと戦い続けていた。


 日が暮れてきたので、そろそろ引き上げ時だと思い始め、周辺に気を配る。


 狩場の環境的に、引き上げるタイミングを誤ると連戦になるからだ。


 俺たちは周辺の冒険者たちの中で、エルザフィールの街に一番近い位置にいる。なので、正面の街方向からの魔物の進行はあり得ないので、他の隊よりは連戦にはなりにくい。それに魔物と戦い始めたばかりなので、俺たちに接近する魔物の影はない。


 だが、俺たちの後方では、三隊の冒険者たちが魔物と戦いを繰り広げていて、そのそれぞれに魔物の群れが接近している状況だ。


 まぁ、ここではそれが当たり前なので俺は気にも留めないでいたが、索敵に終始しているソックが帰還して俺に耳打ちする。


 「後ろの三つの隊のうち、左と右の隊は問題なさそうですが、真ん中の隊が状況に対応できていないように思えますね」


 「何?」


 俺は左右の隊を確認すると確かに問題なさそうだ。つまり、現在戦っている魔物の残りが少数で、次の魔物の群れに対する迎撃準備が整っているということだ。


 しかし、真ん中の隊はアント種が10匹以上残っている上に、アリゲーター種の群れが迫っている。


 左右の隊はこれに気づいているのか? 真ん中の隊が壊滅すると連鎖的に左か右の隊、あるいは俺たちが被害を被ることになる。


 「それに真ん中の隊は後衛職が見当たりません」


 はぁ? 何だそりゃ? 魔法無しでここで戦ってるのか? 正気かよ……


 俺は真ん中の隊に目を凝らしてみたが、一キロメートル以上の距離があるので人数や魔物の数ぐらいは見えるが、冒険者たちの職業を確認できるほど目は良くない。


 まぁ、肉体改造されているからか、俺のレベルが上がっているからか、どっちか分からないが、そのおかげでこの距離からでもある程度は見えているんだと思うが、日本にいた時の視力なら見えない距離だからな。


 ちなみに、マークⅢによると、【怪盗】のソックは『千里眼』を持っているので、遠くても問題なく見ることができるらしい。


 「ロ、ロストさん!! 真ん中の隊の八人が街に向かって逃走しました!! 二人が残っているみたいですがもたないのは確実です」


 マジかよ……けど今動かないと状況は悪くなる一方だ。


 「俺が行く。だが、ラードたちには連携が乱れるから知らせるな」


 マークⅡを連れて行きたいが、前衛の要になっているから外せないからな。


 「は、はぁ? い、いやでもアント種の群れは倒せたとしても、アリゲーター種の群れ迫ってるんですよ!?」


 ソックはひどく取り乱している。


 「盗賊職のお前が冷静さを欠いてどうする。何事もなかったように振るまえるようになれ」


 ラードたちを一瞥して問題がないことを確認した俺は、疾風の如く駈け出して真ん中の隊まで移動し、瞬く間に三匹のアントを長剣で斬り裂いた。


 二人の女は満身創痍で肩で息をしていて、俺は接近してくるアリゲーター種の群れの位置を確認して顔を顰める。


 ちぃ、20はいるな……


 「――なっ!?」


 「えっ!? 何なの!?」


 女たちから驚愕の声が上がる。


 何だと日本人なのか!? 危なかったぜ……日本人の不名誉が拡散されるところだったからな。


 「ここは俺に任せてお前らはさっさと逃げろっ!!」


 そう叫んだ俺は一瞬でアントたちに肉薄し、さらに三匹のアントを長剣で両断する。


 「――えっ!? 日本人なの!? で、でも……」


 「……私たちも戦う!!」


 「二度言わせるなっ!!」


 振り向きもせずに返答した俺が残り三匹のアントを長剣で肉片に変えてから、体を切断してもまだ生きているアントたちを斬り刻んで止めを刺したところで、アリゲーター種の群れが目前に迫る。


 「……ぐっ、アリゲーター種が来る」


 「ご、ごめんなさいっ!!」


 遠ざかっていく足音が聴こえた俺は安堵し、奥の手である『威風』を発動し、俺の体が深紅のオーラを纏う。


 かなりSPをもっていかれた上に、さらにSPが減り続けているのが難点だ……だが、攻撃力と素早さが二倍に上昇した俺にアリゲーター種の群れなど雑魚でしかない。


 矢のごとく突進した俺はアリゲーター種の群れを貫き、目にも留まらぬ速さで縦横無尽に駆け抜ける。


 俺が『威風』を解除すると、アリゲーター種の群れは血飛沫を上げて息絶えたのだった。


 「ふぅ……」

 

 凄まじい力だ……だがSPの消費が激しすぎて今の俺ではすぐにSP切れになる。おそらく、この特殊能力はもっとステータスの値が高い奴しか使いこなせないだろう。


 俺がしれっと自分の隊に戻ると、ラードたちはまだ戦いを続けていた。


 「ロ、ロストさん、あんたいったい何者なんだよ? それにあの赤いオーラも……」


 ソックは動揺を隠しきれないようだ。


 「あれは俺の奥の手だ。マークⅠこっちに来てくれ」


 俺が中衛の上空に浮いているダークに呼び掛けると、ダークの背に乗ってマークⅠがすぐにやってくる。


 「ファテーグの魔法で俺のSPを回復して、後ろの魔物たちの首を回収してくれ」


 〈わかった〉


 俺の体が連続で金色に輝き、ダークが嬉しそうに鳴きながら魔物の死体に向かって飛んでいく。


 助かったぜ。SPが枯渇しかけていたからな。


 しばらくするとラードたちが魔物の群れを殲滅したので、俺たちはエルザフィールの街に入ったのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

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明日もたぶん10時に投稿する予定です。


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