第4話 石の相棒、マークⅠ
目覚めると俺は樽の前で突っ伏していた。
……そうか、俺は『生命付与』を使って意識を失ったんだな。
俺は立ち上がって水晶玉に手で触れると、HPとSPは全快していて腕時計に視線を移す。
「12時だと?」
俺は窓を見てみると、明るい陽射しが射し込んでいた。
少なくとも24時間ぐらいは寝ていたことになる……今後、『生命付与』は安易に使用しないほうがいいだろうな。
〈マスターおきた?〉
「――っ!?」
唐突に聴こえた声に、俺は辺りを見渡したが人の気配はない。
〈ここだよここ〉
再び聞こえた声に、俺は不審に思いながら部屋を見渡すと、俺の近くに黒い石が転がっていることに気づく。
そうか!! 『生命付与』を使った石が喋っているのか!?
俺はしゃがみ込んで黒い石を見つめながら、心の中で「おい、石。聴こえるか?」と念じてみたが返答はない。
「おい、石。お前は話せるのか?」
〈はなせるよ〉
「……」
何か変な感じだな?
俺は自分で耳を塞いでから、もう一度石に問いかける。
「お前は話せるのか?」
〈うん、はなせるよ〉
「なるほどな」
耳を塞いでいるのに声はクリアに聞こえている。
要するに、この石は俺の声を認識できるが、心の声は認識できないようだ。そして、石の声は俺の脳裏に直接届いているみたいで、どうやら思念の声らしい。
「お前は動けるのか?」
〈うん、うごけるよ〉
黒い石は俺の前でコロコロと転がっている。
「……お、おう」
俺は苦笑する以外になかった。
こいつのステータスはどんな感じなんだ? 強いとは思えないが一応確認しておくか。
俺は転がり続けている黒い石を手で捕まえて、『生命付与者解析』を黒い石に使用した。
『生命付与者解析』を使用しても、『生命付与』を使用したときほどの変化はなく、俺は心の底から安堵しながら表示されたウィンドウに目を通す。
名前: 黒い石
全長: 約10cm
職業: 【無し】レベル: 1
HP: 100
MP: 50
SP: 50
攻撃力: 1
守備力: 10
素早さ: 1
魔法: 無し
特殊能力: 無し
「HPとMPは俺より高いな……」
だが、攻撃力と素早さが低すぎるから戦闘には向かない。ということは戦闘は俺がメインでするしかないようだ。
とりあえず、木の棒を拾っておいて良かったぜ。
「お前は名前がないから名前をつける。マル、クロ、マークⅠのどれがいい?」
〈マークⅠがいい!!〉
「ならお前の名前はマークⅠだ」
〈わかった〉
「で、お前は石だが痛みは感じるのか?」
俺はマークⅠを左の掌の上にのせて、右手の指で軽く弾いてみる。
〈いたくないよ〉
「ならこれならどうだ」
俺は立ち上がってマークⅠを軽く放り投げると、マークⅠは木の床に衝突して甲高い音が辺りに響く。
〈ぜんぜん、いたくない!!〉
「へぇ、さすが石だな」
感心した俺はマークⅠを左手で拾う。
敵に遭遇した際に最悪、こいつを投げつけるのもありだな。とにかく、一緒に戦える動ける奴がほしい。
俺は右手で木の棒を掴んで、小屋から外に出たのだった。
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