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第37話 魔物の村②


 しばらくすると、唐突にプニがいた場所に魔法陣が出現し、プニとプニを模したような巨大な物体が姿を現した。巨大な物体の大きさは三メートルほどもあり、宙に浮いている。


 「な、何だそれは!?」


 「プニ四号デシよ」


 四号? こんなのがあと三機もあるのかよ。


 プニは触手を伸ばしてプニ四号のボディを外すと、小型の浮遊砲台らしきものが露わになる。


 「ちょっと待ってほしいデシ」


 プニはさらに小型の浮遊砲台をバラしていくと、小型の浮遊砲台は浮力を無くして地面に着地する。


 「これに『生命付与』を使ってほしいデシ」


 プニの触手の先には金色に輝く、一センチ角の六面体が握られていた。


 「……それが浮遊砲台のエネルギー源なのか?」


 「そうデシ。でも、これは一個しかないオリハル魔導合金デシ。普通はミスリル魔導合金を使ってるデシよ」


 「オリハル? オリハルコンってことなのか?」


 「そうデシよ」


 マジかよ? オリハルコンまであるのかよ。だが、プニ四号をバラし始めたときはさすがだと感心したが、バラしすぎなんだよ。


 「なぁ、浮遊砲台っていうのはどういう理屈で動いてるんだ?」


 「それはプニたちにも分からないんデシ。でもマスターは反射で動かしてるって言ってたデシ」


 反射? それって光が物に当たってから返ってくる時間で、距離を計算して動いてるってことだよな。それをAIみたいなやつで制御しているって感じか。


 「たぶん、浮遊砲台を動かしてるのは人工知能みたいなやつだと思うから、それに『生命付与』を使わないと浮遊砲台は動かないと思うぞ」


 「えっ? そうなんデシか? でも、プニはオリハル魔導合金を育てて一緒に暮らしたいデシ」


 はぁ? 浮遊砲台に命を吹き込みたかったんじゃないのか……


 「まぁ、オリハル魔導合金に『生命付与』を使ったら、転がる程度には動けると思うがそれでいいのか?」


 「……仕方ないデシよ」


 「なら浮遊砲台にオリハル魔導合金をつけたままで、『生命付与』を使ったらいいんじゃないのか?」


 「う~ん、それだと浮遊砲台と暮らすことになるデシよ」


 「……質問があるのですが、マークⅡ殿の体は砂鉄ですよね」


 目を凝らしてマークⅡを見つめていたフローが俺に問いかける。


 「まぁな」


 フローも鑑定手段を持っているみたいだな。いったい、こいつらはどうなっているんだよ。


 「マークⅡ殿は体が無数の粒で構成されているのに一つの生命体です。そうであれば、砂鉄の中にオリハル魔導合金を入れても『生命付与』を使用できますよね?」


 「その理屈だと浮遊砲台のときと変わらないデシ」


 プニが即座に反論する。


 「ですから、ロスト殿がオリハル魔導合金をコアと認識し、『生命付与』を使用すれば、オリハル魔導合金が頭脳、砂鉄が体の生命体が誕生するのではないかと思うのですよ」


 「――っ!?」


 俺は頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。


 その発想は全くなかった……こいつら頭良すぎだろ。確かに、ゴーレム種はコアを破壊しないと倒せない生命体だから、それに似たような奴になるかもしれないな。


 「できるデシか?」


 「やってみないと分からんな。それに良い材料を使った場合、SPの消費が激しい傾向にあるから、俺のSPでは足りないかもしれん」


 「SPはファテーグの魔法で回復するから気にしなくていいデシよ。とにかく試してほしいデシ」


 「……いや、ちょっと待てよ。失敗した場合、貴重なオリハル魔導合金がどうなるか分からないんだぞ?」


 「それならこれを使って試してほしいデシ」


 プニは触手を口の中に突っ込んで、白銀に輝く一センチ角の六面体を取り出して俺に手渡した。


 「これがミスリル魔導合金なのか?」


 「そうデシ。それはいっぱいあるから気にしなくてもいいデシよ」


 いっぱいあるといっても、外壁を守っていた浮遊砲台を動かしてる動力源なんだから、とんでもない魔導具なんだろうな。


 「マークⅡで試すしかないが、それでいいか?」


 「デシデシ」


 「マークⅢ、木型を出してくれ。マークⅡは鎧から出て、型の上に寝転がれ」


 「分かりましたわ」


 〈分かりました〉


 裂けた空間から木型が出現し、俺が型を地面に置く。マークⅡは鎧を外して型に収まり、俺はマークⅡの前でしゃがみ込む。


 さて、ここからは俺のイメージ力が勝負を握る。


 俺はマークⅡの腹部にミスリル魔導合金を置いてから、『生命付与者意識移動』でマークⅡの意識を取り出すと、形を保てなくなった砂鉄が型に広がる。


 慎重に作業するなら、ここでマークⅡの意識をミスリル魔導合金に移しておくべきだと思うが、SPを気にする必要がないので一気にやることにする。それにこれができなければ、オリハル魔導合金に生命を宿すことなど不可能だからな。


 俺はミスリル魔導合金と砂鉄が一体化した生命体をイメージしてから、ミスリル魔導合金が最重要パーツだと断定し、マークⅡの意識をミスリル魔導合金に移す。


 その瞬間、俺の視界は暗転する。


 ――やべぇ!?


 俺は全力で抗おうとしたがプツンと意識が途切れた。


 目覚めると俺は金色の光に包まれていた。


 「――っ!? 俺は何秒意識を失ってたんだ!?」


 「一秒ぐらいデシ!! ごめんデシ……まさか一瞬でSPが全部なくなるとは思ってなかったデシよ。でもでも『無詠唱』で回復するからもう大丈夫デシ!!」


 『無詠唱』だと? こいつらとことん無茶苦茶だな。


 俺は半分ほど入っていたマークⅡの意識を、全力でミスリル魔導合金に押し込んだ。


 「『無詠唱』ってやべぇな……全力でやったのにSPが減った感覚がなかったぜ」


 〈マスター、起き上がってもいいですか?〉


 どうやら上手くいったようだな。


 「ああ」


 安堵した俺は『生命付与者解析』でマークⅡを視る。


 「おいおい、マジかよ……MPが1万超えてるぞ……」


 「ミスリル魔導合金を取り込んだらそうなりますよ」


 フローが当たり前のように言った。


 ならオリハル魔導合金だとどんな異常な数値になるんだ? そう考えるとプニ四号って化け物だったんだな。


 「じゃあ、次はオリハル魔導合金でやってほしいデシ。体になる素材はこれデシ」


 プニは口の中から、白く光るクリスタルのような粒を大量に取り出し、地面に置いてからその上にオリハル魔導合金を置く。


 「何だこの粒は? ミスリルじゃないよな? それに人型にするには量が少なすぎる」


 「この粒はアダマンタイトデシ。量が少ないのはプニと同じようにスライムの形にしてほしいデシよ」


 アダマンタイトまであるのかよ……


 「で、スライムにすればいいのは分かったが、オリハル魔導合金への『生命付与』はミスリル魔導合金の比じゃないはずだ。マジで頼むぞ」


 さっき俺はSPがマイナス領域まで及んで、一瞬死んでたんじゃないのか? 死ぬにしてもそんな理由は嫌すぎる。


 「任せるデシ!!」


 俺はさっきの要領でスライムの形をイメージし、オリハル魔導合金に『生命付与』を発動した。


 ぐっ、なんか頭がクラクラする……俺の体は金色に輝き続けてSPは回復してるのに、どんだけ奪われてるんだよ?


 何秒経ったか分からないが、俺の眩暈が収まった瞬間、透明の球体が、アダマンタイトの粒の塊を包み込んだ。


 何だ今のは? まぁ、とにかく成功したはずだ。


 俺は『生命付与者解析』で、饅頭のような形になっている生命体を視る。


 「――っ!? 何でステータスが視れないんだ?」


 「プニがテイムして、プニのペットになったからデシよ」


 「おそらく、プニ殿がテイムしたことによって、生命付与者から魔物に変化したのだと思いますね」


 「……テイムだと?」


 【魔物使い】ってことか!? 職業に就けるのは人族と獣人だけじゃなかったのか? どういうことなんだ? こいつらといると訳が分からなくなる。


 「名前はオリタイトにするデシ!!」


 プニは嬉しそうに触手でオリタイトの頭を撫でている。


 〈マスター、オリタイトのMPは10万を軽く超えていますわ〉


 「……それはすげぇな」


 すげぇけど、なんとなく納得できる数値でもある。


 「ロストのおかげで新しい仲間が増えたデシ。ありがとデシ。お礼にこの二つの指輪の中から一つをあげるデシよ」


 プニは口の中から二つの指輪を取り出して俺に見せる。


 「それはありがたいが、どんな指輪なんだ?」


 「『覇気』の指輪と『威風』の指輪デシ。どっちがいいデシか?」


 〈マスター、『覇気』は一時的に自身の攻撃力と守備力が二倍に上がり、『威風』は一時的に自身の攻撃力と素早さが二倍に上がりますわ〉


 「とんでもない効果の指輪だな……」


 違いは守備力と素早さだが、俺のステータスの値だと素早さが上がったほうが汎用性は高いと思う。


 「『威風』の指輪だな」


 「分かったデシ」


 俺はプニから『威風』の指輪を受け取った。


 「助かるぜ」


 「プニたちはここにいるから、困ったことがあったらまた来るといいデシよ」


 「ああ、そのときは頼らせてもらう」


 こうして、俺たちは魔物の村を後にしたのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

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明日もたぶん10時に投稿する予定です。


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