表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/96

第28話 転職という一手

 

 翌日、東門の近くで野営をしていた俺たちは、身支度を整えてから冒険者ギルドで魔物の首を換金し、武具で素材も売却した。


 締めて500万円ほどになったが、通常種を50匹狩れば500万になるから、三日でこの額だと少ないと感じてしまう。


 今の俺の強さからすれば、通常種など雑魚でしかないからだ。


 まぁ、ルルルたちのレベルUPや小屋を探すために、移動に重点を置きすぎたことが原因だから仕方ないが、その甲斐あってか、マークⅠは『治療』に目覚めたし、マークⅡも強くなった。


 マークⅡは意識を砂鉄に移動させた時点では、ゴーレム種のようにドシン! ドシン! と一歩ずつ歩いて動きが鈍重だった。


 だが、レベルが上がるとそれも改善された。マークⅡを視てみると攻撃力が約200、守備力が約200、素早さが約100といった感じのステータスの値になっていて、職業的に言えば上級職の【重戦士】に近い。


 さらには砂鉄の塊だからか【重戦士】と同様に、『強力』と『堅守』に目覚めている。それらを反映させれば、攻撃力と守備力の値は300になり、アイアンランスという鉄の槍を飛ばす魔法にも目覚めている。


 要するに、すでにラードたちより強い。


 道具屋で、ポーションなどの回復アイテムや食料などを調達した俺たちは、南門に向かって歩を進める。


 台車はマークⅡが押していて、ダークを抱いたルルルが台車に乗っている。


 ルルルはマークⅢによると、レベルが9まで上がっている。基本ステータスの値が80まで上がっているので、台車に乗る必要はないのだが、好きにさせている。


 歩いたからといって、彼女の身体能力やSPが向上する訳でもないからだ。


 南門に到着した俺たちが、防壁沿いに長蛇の列をなすテントを確認しながら進んでいると、ラードたちがテントを片付けているところだった。


 「どうやら、丁度いいタイミングだったようだな」


 「ロスト!?」


 ラードの驚きの声に、すぐにレシアがテントの中から躍り出てくる。


 「ロストさん!! 戻ってきてくれたんですね!!」


 レシアはこぼれるような笑みを浮かべている。


 「まぁな。だが五日程度に一度ぐらいの頻度で、西の小屋には確認に行くつもりだ。今回は戦闘職の奴らが六人いただけだったからな」


 「なるほどな」


 「ちなみに、北と東も探したが小屋は発見できなかった。お前たちは何か進展があったか?」


 「いや、ないな。それに格好の悪い話だが、俺が安全策をとりすぎて金策すら上手くいってない。だから今日は、西の小屋の方に金策に行こうと考えてたんだ」


 ラードはバツが悪そうに頭を搔いている。


 この面子で金に困るのか……やはり、転職を急ぐべきだな。


 「そうか。だが今日は東の街に行くぞ」


 「はぁ!? そ、それはいくらなんでも無茶だろ……少なくとも上級職の前衛で固めないと、東には進めないんだぞ」 


 「いや、そうでもない。とにかく東の街に行って、転職可能かどうかをまず調べることが最優先だ」


 「て、転職だと!? ロスト、お前は転職に掛かる費用を知ってて言ってるのか?」


 「ああ、上級職で500万、最上級職で1000万だろ」


 「その通りだ。それが分かっているなら、金の無い俺たちが転職なんてまだまだ先の話だろ」


 ラードの言葉に、ネヤたちも同意を示して頷いている。


 「いや、すでに一人、二人なら転職できる金はある」


 「えっ!?」


 ラードたちは面食らったような表情を浮かべている。


 「だが、それ以前に転職できるかどうかのほうが問題だ。転職は資質が全てらしいからな。とにかく行くぞ」


 俺が踵を返して歩き出すと、マークⅡが俺の横に並んで歩く。


 「ちょ、ちょっと待てよ」


 南門から出た俺たちは、東の砦に向かって移動する。


 「で、どうやって東の砦に行くんだ?」


 「まずは魔物と戦っている冒険者たちを目指して進み、そこから別の魔物の群れと戦っている冒険者たちを目指す」


 「……はぁ? 要するに魔物と戦わないのか?」


 「ああ。前に俺たちが別れた時に、俺たちが東の砦に行くって言っていたのを覚えているか?」


 「まぁな」


 「その時もこのやり方で東の砦に行ったんだ。ちなみに東の街の難易度も東の砦に行くのと変わらないらしい」


 「あの時点ですでに転職を想定してたのか」


 ラードは呆れたような表情を浮かべている。


 「……それで鎧の彼女は何者なんだ? 全く喋らないが新しく加わった仲間なのか?」


 「何を言ってる。俺の特殊能力を忘れたのか? その鎧はマークⅡだ」


 「なっ!? けどマークⅡは台車だっただろ?」


 「俺は俺が生命付与した生命体の意識を、別のものに移動させることもできるんだ」


 「マ、マジかよ……」


 絶句したラードは、台車とマークⅡを何度も見比べている。


 「ねぇ、何の話をしているの? 私たちにも分かるように説明してよ」


 ネヤたちは不可解そうな表情を浮かべている。


 「何だ、俺の特殊能力を言ってなかったのか」


 「ああ、お前たちが新たな仲間たちを連れてくると思ってたから、二度手間になると思ってな」


 「なるほどな。俺の特殊能力は『生命付与』で、命がないものに生命を与えて使役できるというものだ」


 「えっ!? 【魔物使い】じゃなかったの!?」


 ネヤは純粋な驚きに満ちている。


 「そして、俺の職業は【カスタードプリン】だ」


 「は、はぁ!? 何言ってるのよ!?」


 理解が追いつかないのか、ネヤは声を荒げた。


 台車に積んである鞄から皿を取り出した俺は、『無限プリン』で皿の上にプリンを出現させる。


 「なっ!?」


 ネヤたちは雷に打たれたように顔色を変える。


 「た、食べてもよろしいですか?」


 口から少し涎を垂らしているレシアが俺に尋ねると、俺は無言で頷いた。


 俺から皿を受け取ったレシアは、懐からスプーンを取り出してプリンを口に運ぶ。


 「やっぱり、ロストさんのプリンはとても美味しいです」


 レシアは幸せそうにプリンを食べている。


 「ちなみに、マークⅡの本体は鎧ではなく砂鉄だ。砂鉄の塊だから鎧を動かすことが可能なんだ」


 俺は台車の購入を検討していたときに、全身鎧にも着目していた。


 しかし、俺が作った台車が曲がれなかったことから、物理的に動かせない物は動かないことを理解していたから、全身鎧を購入しなかった。

 

 「ねぇ、【カスタードプリン】って聞いたことない職業だけど、強い職業なの?」


 ネヤは探るような眼差しを俺に向けている。


 「ああ、強い職業だと言えるだろう。だが、最初があまりに弱すぎるんだ。だから俺とルルルは、そんな不遇職の奴らを保護するために小屋を探していたんだ」


 「……なるほどね。ていうか、ルルルも不遇職なの?」


 「まぁな。ルルルは【無職】という職業で、俺の初期値は10だったがルルルは1だ」


 「い、1ってそんなのどうしようもないじゃない……」


 「まぁな。だが、今のルルルの強さは、お前たちと遜色ないレベルに達している」


 「えっ!?」


 これにはネヤたちも、ラードたちも間抜けな面をさらすことになったのだった。

お盆の連休が終わったので、明日からは毎日一話ずつ投稿する予定です。

たぶん、10時頃だと思います。


面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価(↓の★★★★★)で応援していただけると、作者のモチベーションが上がりますので、よろしくお願いします。


勝手にランキングに参加しています。

リンクをクリックしてもらえるとやる気が出ます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング に参加しています。 リンクをクリックしてもらえると作者のモチベーションが上がります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ