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第15話 攻撃力1と台車の槍は当たらない

 

 翌朝、俺たちはレベルを上げるために森に赴いた。


 場所は俺の小屋の周辺だ。


 マークⅠはダークの背に乗ってふわふわと空を飛んで移動している。どうやらジェスチャーかなにかで、コミュニケーションを取れているようで、その後をマークⅡが追従している。


 俺は、マークⅠとマークⅡが思念で会話ができると思っていたが、どういうわけか思念で会話できないようだ。


 俺としか会話できないのはさすがにかわいそうなので、今は無理だがどうにかして会話できるようにしてやりたい。


 で、今日の目標はマークⅡをレベル2に、そしてレシアの経験値も稼ぎたい。


 〈まえから2ひきくるよ。たぶんどっちもイヌ〉


 ダークの背に乗ったマークⅠが、俺の傍に寄って思念で言った。


 俺には何も感じないが、こいつが言うならそうなんだろう。


 俺たちの布陣は先頭にラード、真ん中にキャニル、レシア、ルルル、最後尾に俺とマークⅠ、ダーク、マークⅡだ。


 「レッサー・コボルトが二匹接近してるらしいぞ!!」


 俺がそう叫ぶと、マークⅠを背に乗せたダークが、先頭へとふわふわと飛んで行った。


 「分かった。ここで迎え撃つ!!」


 足を止めたラードが叫び返す。


 「……」  


 馬鹿なレッサー・コボルトだからこんなやり方が通用するが、魔物が強くなれば警戒されるだろうな。


 まぁ、今はレベル上げが目的だからどうでもいいが。


 俺たちがしばらく待っていると、マークⅠが言った通りに、二匹のレッサー・コボルトが姿を現した。


 ラードは即座に一匹の首を剣で刎ね飛ばし、もう一匹の両腕を斬り落とす。


 首が無くなったレッサー・コボルトが静かに地面に突っ伏し、両腕が無くなったレッサー・コボルトは、奇声を上げて地面をのたうち回っている。


 やはり、ラードにとって、レッサー・コボルトなど雑魚でしかないようだ。


 ちなみに、【傭兵】のラードはレベル7で、【魔法使い】のキャニルのレベルは4らしい。


 戦闘職の前衛は【戦士】が一番弱いとされている。だが、水晶玉のデータを比較すると【戦士】よりも、【傭兵】と【兵士】のほうが基本ステータスの値が低い。


 それではなぜ【戦士】が一番弱いとされているのか疑問だが、水晶玉にもその辺のことは記載されていないので不明だ。


 俺は二人のレベルが高いので小屋周辺の森ではなく、森の奥で戦った方がいいのではないかと提案したが、ラードたちに丁重に断られた。


 戦闘職でも後衛の魔法使い系や僧侶系は、レベルが上がっても基本ステータスの値はほとんど上昇しないらしい。


 要するに、キャニルが高レベルになったとしても紙装甲なので、弱い魔物の一撃ですら瀕死、あるいはあの世行きだそうだ。


 なので、森の探索のような条件下では、不意打ちなどを防ぐために前衛職たちの間で、後衛職たちを護りながら進むのが理想らしい。


 そういう点では俺たちにはマークⅠの索敵能力があるから、不意打ちを受けることはほとんどないので助かっている。


 「これまでは生き残ることに重点をおいていたが、今はロストたちがいるから余裕ができた。ルルル、止めを刺してみろ」


 ラードがルルルに指示を出す。


 「う、うん」


 鉄の槍を握りしめたルルルが、恐る恐るといった感じで進み出て、レッサー・コボルトを攻撃し始める。


 彼女は一生懸命に攻撃しているようだが、その攻撃はへっぴり腰で、チクチクといった感じの突きを繰り出していて、まるでダメージを与えているようには見えない。


 それもそのはずで、ルルルの基本ステータス、つまり、攻撃力、守備力、素早さの値が全て1らしい。


 まぁ、攻撃力が1しかないのだから仕方がない。攻撃力が3で一般的な成人男性の【村人】ということだから、1という攻撃力は幼稚園児ぐらいが攻撃してるようなものだからな。


 「よし、ルルル、下がっていいぞ。誰か止めを刺してやれ」


 おそらく、ラードの考えは止めを刺せなくても経験値は上昇していると思われるので、それを繰り返していけば、いつかはレベルが上がるというものなんだろうな。


 俺もラードの立場ならそうするだろう。ていうか、止めをさせないのだからそうするしかない。


 肩で息をしているルルルが無言で下がると、瞬時にマークⅠが魔法で攻撃し、レッサー・コボルトは水の刃に首を飛ばされて動かなくなった。


 ダークから飛び降りたマークⅠは鉄の槍二本を回収し、マークⅡに積み込むと、レッサー・コボルトたちの死体もマークⅡに積み込んだ。


 「キュキュ!! キュッ!!」


 なんとなく嬉しそうに聞こえる声を発したダークが、レッサー・コボルトたちに食いついて、バクバクと食べている。


 その光景を目の当たりにしたレシアとルルルは、少し引き気味だ。彼女らはダークを可愛がっていたから、ショックなのだろう。


 俺がダークの主人なら魔物とはいえ、さすがに人型の魔物は食わせないが、ダークの主人はマークⅠなので、俺はあえて何も言う気はない。


 まぁ、人数が増えたことで樽の食料も減ってきているから、ダークが魔物を餌にできるのはありがたいしな。


 「次は俺たちが前に出る」


 「あぁ、分かった」


 俺たちとラードがポジションを入れ替えて、俺たちは再び小屋の周りの森を周回する。


 姿を現した二匹のレッサー・コボルトに対し、俺が片方の四肢を槍で切断し、もう片方は両腕を切断した。


 「四肢を切断したほうはレシア、両腕を切断したほうはマークⅡが止めを刺すんだ」


 「はい」


 〈分かりました〉


 レシアは事もなげに槍で、レッサー・コボルトの首を切断した。


 「よくやった」


 「ありがとうございます。ご褒美にプリンが欲しいです」


 「お、おう。小屋に戻ったらな」


 「は、はい」


 レシアは歓喜に瞳を輝かせている。  


 「私もプリン食べたい……」


 ルルルがジト目で俺を見ている。


 「お、おう……」


 昨日、ルルルに強請られて、プリンを食べさせたのがまずかったか……『プリンに夢中』は使っていないが、食い物が干し肉と果物しかないのが原因なんだろうな。


 〈マスター、攻撃が命中しません〉


 マークⅡは地面をのたうち回っているレッサー・コボルトに、体当たりを繰り出しているが、相手が低い位置にいるので攻撃が当たらない。


 俺が強引に取り付けた槍の位置が一メートルぐらいの高さにあるから、当たらないのは当然だ。


 マークⅡはタイヤでレッサー・コボルトを踏んだりしているが、攻撃力が5しかないマークⅡが、守備力10のレッサー・コボルトに体当たりでダメージを与えることはできないだろう。


 俺は片手でマークⅡを持ち上げる。逃げようと地面を這っているレッサー・コボルトに対して、マークⅡの穂先で後頭部を貫いた。


 レッサー・コボルトは、ビクビクと痙攣して活動を停止した。


 「たぶん、このやり方でもお前に少しは経験値が入ってると思う」


 〈了解です〉


 俺が取り付けた槍の一本を下段に取り付けることも考えはしたが、マークⅡは構造上、方向転換ができないから、攻撃を命中させることは難しいから諦めた。


 やはり、早く村に行って方向転換が可能な台車が欲しいな。


 この時点で俺は巨木を斬り倒し、台車をもう一台作り、回収したアイテムはそっちに積み込むことにした。


 マークⅡを持ち上げて攻撃する度に、アイテムを下すのは面倒だからな。


 俺たちは日が暮れるまで戦い続けて、小屋へと帰還したのだった。

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本日の21時にも投稿する予定です。


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