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第11話 増えすぎた戦利品

 

 俺たちが正面の森に入ってからすぐのところで、レッサー・コボルトに遭遇した。


 レッサー・コボルトは俺たちを視認すると、即座に俺に向かって槍を放ったが、俺は飛んできた槍を左手で掴んで投げ返す。


 放たれた槍はレッサー・コボルトの腹を突き抜けて、視界から消えた。


 〈あぁ、ヤリがどっかにいっちゃったよ〉


 マークⅠが悲しそうな声を上げる。


 「レシア、あいつに止めを刺せ。できるか?」


 レッサー・コボルトは腹から血を噴き出し、地面をのたうち回っている。


 「は、はい」


 レシアは意を決したような表情で答えた。


 できなくてもいい。できなければ小屋に連れ帰るだけの話だからな。


 レシアは恐る恐るといった感じで、レッサー・コボルトとの距離を詰めていく。


 「首を切断しろ。それまでは絶対に油断するなよ」


 頷いたレシアは槍を大きく振り上げ、レッサー・コボルトの首に目掛けて振り下ろす。


 一振りでレッサー・コボルトの首は胴から離れ、レッサー・コボルトは活動を停止した。


 いきなり、一撃で決めるとは槍の距離感を肌で掴んでいるみたいだな。もしかすると戦闘センスが高いのかもしれないな。


 「よくやった」


 「あ、ありがとうございます」


 レシアは安堵したのか地面にへたり込んでいる。


 「ここからは俺とマークⅠで戦うから、レシアは周囲の気配に気を配りながらついてきてくれ」


 「分かりました」


 俺は小屋に帰りやすいように、できるだけ一直線に森を進んでいく。


 道中、何度もレッサー・コボルトと遭遇したが、いずれも俺とマークⅠの敵ではなく、瞬殺しながら森を進んでいく。


 だが、10匹目のレッサー・コボルトを倒したところで、問題が生じる。


 「この辺りで槍を置いていくことにする」


 〈えぇ!?〉


 マークⅠが不満げな声を上げる。


 回収した槍が10本になり、担いで移動するには無理があるからだ。


 俺は周辺を見渡して巨大な木の根元に、回収した槍を突き刺していく。


 「心配するな。帰りに回収する予定だ」


 〈……とられないかな?〉


 「たぶん、大丈夫だろ。槍よりも死体のほうに奴らは群がるだろうからな」


 俺が最後の槍を地面に突き刺したと同時に、突然、背中に衝撃が走り、俺は背中をさすりながら振り返る。


 俺にダメージはないが、地面を見ると矢が落ちていた。


 〈あっちにハナのながいやつがいる!! ウォーター!!〉


 マークⅠがウォーターの魔法を唱え、水の刃が飛んでいく。


 「なんだと!?」


 俺は水の刃を目で追いかけると、その先には身長が一メートルほどで、鼻の長い黒亜人の姿があったが、水の刃に首を飛ばされてあえなく倒れた。


 どうやらマークⅠの索敵能力は、俺より遥かに上のようだな。


 〈やった!! たおしたよ!!〉


 マークⅠは俺の肩から飛び下りて、動かなくなった黒亜人に向かって進む。


 「あいつは鼻が長いからレッサー・ノームだろうな」


 レッサー・ノームのステータスの値は、レッサー・コボルトより低いが、魔法が得意な種族らしい。


 「ロストさん、体は大丈夫なのですか?」


 俺の傍に駆け寄ったレシアが心配そうに尋ねる。


 「全く問題ない」


 「そ、そうですか」 


 レシアは安堵したのか胸をなでおろす。


 だが、矢ではなく、魔法を撃たれていたらやばかったかもしれん。今後、不意打ちには気を付けなければならないな。


 〈ハナはユミをもってたよ〉


 マークⅠは弓と矢が入った矢筒を抱えて戻ってきた。


 「小ぶりの弓だな。暇な時にでも練習するといい」


 マークⅠから弓と矢筒を受け取った俺は、それらをレシアに手渡した。


 「ありがとうございます」


 レシアは嬉しそうに微笑んだ。


 俺たちは何の問題もなく森を進んでいく。


 遭遇する魔物のほとんどがレッサー・コボルトばかりだが、その中で一匹だけレッサー・ゴブリンがいた。


 レッサー・ゴブリンのステータスの値は、レッサー・ノームと変わらない値で、魔法も使えないから黒亜人の中ではおそらく最弱だろう。


 数値的には3程度しかなく、これは異世界ここの住民である【村人】や【街人】と同様だ。


 ちなみに、レッサー・ゴブリンは鉄の短剣を持っていたので、新しいアイテムが増えたマークⅠは嬉しそうにしていた。


 しかし、レッサー・ゴブリンは皮の鎧と皮の靴も装備していたので、マークⅠがそれらもコレクションに加えようとした。


 だが、荷物がかさばる上に、身長が一メートルしかない彼らの装備を着ることもできないので破棄したが、マークⅠは持って帰りたいと最後までだだをこねていた。


          ***


 俺たちは三カ所目の槍置き場を探して周辺を探索していた。


 つまり、レッサー・コボルトだけでも30匹は倒したことになる。


 「さすがに槍が30本となると、帰りに回収するのは難しいかもな」


 俺は目印となる巨大な石の前で、槍を地面に突き刺しながら呟いた。


 〈えぇ!? い~や~だよ!! ぜったいにもってかえる!! なんとかしてよ!!〉


 どんだけ槍が好きなんだよ。


 俺は苦笑しながら思案する。


 「こうなると台車でも作るしかなさそうだな」


 俺は巨木の前に移動し、槍を横なぎに振るった。巨木を手で押すと、巨木はゆっくりと倒れた。


 こういうことが簡単にできてしまうと、日本にいたときよりも、とんでもなく強くなっていることを実感できる。


 巨木の幅は一メートルほどあり、俺は槍で巨木を二メートルほどの長さに切断し、それを短剣で中身をくり抜いた。


 まるで発泡スチロールを加工しているような感じで、台車の本体が完成した。


 俺は巨木を輪切りにして四つのタイヤを作り、巨木を細く斬ってシャフトを作って台車を完成させた。


 「不格好だが無いよりはマシだろう」


 俺は台車の本体を押したり引いてみたりしたが、動きに問題はなかった。


 〈すごい!! これならいっぱいつめるね!!〉


 「まぁな。だが、これを運搬するにはルートが限られるのが難点だな」


 俺は巨大な石の前に突き刺した槍を回収し、台車に積み込んだ。


 「……」


 今回はいいとしても毎回、この台車を運搬するのは面倒だな……マークⅠの意識をこの台車に移動させるか? アイテムが好きなマークⅠなら喜ぶかもしれん。いや、そうなると運搬は楽になるが戦闘力の低下が問題だ。ならマークⅡを生み出すか……ん? ちょっと待てよ。俺はいったい何体まで使役できるんだ? ……まぁ、いい、とりあえず小屋に帰ったら試してみるしかないな。


 俺たちは台車を運搬しながら進んでいると、マークⅠが声を上げる。


 〈まえからなんかがくるよ〉


 「何?」


 何も見えないし聞こえないぞ。


 俺は足を止めて前方を注視していると、しばらくすると何かが接近してくるのが俺にも分かった。


 マジかよ……マジでマークⅠの索敵能力は上がっているな。


 それからすぐに俺たちの前に現れたのは、人間の女だった。

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本日の20時にも投稿する予定です。


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