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72 Great America Again!

『勝手に飛び出したら殺すぞ』

『そんなに僕は信用できないかい?』

『ああ』


 青の魔女が力強く頷くと、コンラッドは苦笑いした。


 場所はアメリカ大陸ロッキー山脈南部コロラド州州都デンバー。

 時は2030年6月末。

 アメリカ国防省魔王対策部隊と南進を始めた魔王軍は州都郊外で激突し、熾烈な戦争が勃発していた。青の魔女たち主力部隊は、温存のためシティ・パークに急造された仮設テントの中で戦況の推移を見守っている。

 仮設テントでは通信班が目玉の使い魔でひっきりなしに前線と通信を行い、指揮官が地図上で凸型の駒を動かしつつ早口の英語で指示を出している。

 テントの厚い布越しでも分かる強烈な閃光が何度も遠くで輝き、身の毛もよだつ幾重もの咆哮が耳朶をうつ。空気は絶え間なく震え、地鳴りが起こりっぱなしだ。


 コンラッドを隊長とした極めて強力な魔女と魔法使いの計四名は、魔王本体との闘いに備え前哨戦に参加していない。


 アメリカ合衆国キューバ臨時亡命政府を出発した四隻の蒸気船は、西回り航路で地球を一周し、二週間前に母港に帰港していた。


 世界各地に寄港し、魔王との戦いに向け戦力を集めたアメリカだが、全権大使であるコンラッドは現地の困りごとに片端から首を突っ込んだ。


 中国は甲1類魔物、現地名「饕餮」によって超越者の大半が食い殺されており、護り手の無い人民が窮地にあった。

 コンラッドは山を崩し、掘り、積み上げ、乙類魔物であっても容易には攻略できない大規模な山中都市を七日七晩で建設。数千の無辜の民を救った。

 中国から得られた物資や人員は皆無だ。日数を費やした分マイナスだったとすら言える。しかし、生き残りの人々は深く深くアメリカとコンラッドに感謝した。


 インドでは身分(カースト)制度の混乱が起きていた。

 インドの身分制度において下層民は人口が多く、上層民が人口が少ない。

 超越者は概ね人口比を反映し誕生するため、下層民出身の超越者が多く、上層民出身の超越者は少なくなる。抑圧されていた多くの被差別民が力を手に入れたため、インド社会は混乱していた。

 コンラッドは紆余曲折の末に権力者同士の結婚式に乱入。花嫁が好き合った男と駆け落ちするのを助けた。

 アメリカはインドの半分に恨まれ、もう半分からは多大な好意と支援を受けた。


 エジプトでもギリシャでもイギリスでも、一事が万事そんな調子で、コンラッドはまるで戦力増強の旅ではなく、人助けの旅をしているかのようだった。

 東京は訪問時に平和だったため何も無かったが、事件の最中であればコンラッドは躊躇なく事態の解決のため力を尽くしただろう。


 世界各地からもっと大きな戦力や技術を引き出す事ができたであろう者は、アメリカに何人もいた。

 しかし、使節として適任だったのはコンラッドをおいて他に無い。それは不承不承ではあるが青の魔女も認めるところだ。

 あるいはそう信じたいのかも知れない。

 人々の想いを汲み、世界に笑顔を増やし、見返りを求めず人を助けて回る非効率で優しい旅の果てが「余計な事をして消耗したせいで魔王は倒せなかった」だなんてあんまりだ。


『大丈夫ですよ、青の魔女。できる限りの準備は整えたではないですか』


 前哨戦の勝利を座して待つことしかできない青の魔女の背を、聖女ルーシェが優しく撫で元気づける。青の魔女がルーシェの反対隣に目線を向けると、ネズミ人間グレンは勇気づけるように頷いた。だがグレンはどんなに不味い状況であろうと仲間を鼓舞するため平静を取り繕える男だ。そこが信用できるが故に信用ならない。


 聖女ルーシェはバチカン市国から招聘した魔女――――現地風に言うところの「聖女」だ。

 ゆったりとした黄衣に身を包み、十字架(ロザリオ)を首から下げ、髪と瞳は果ての無い蒼穹のように青く深く澄んでいる。膝に乗せた杖は彼女が生まれた時に神父様に贈られ、以来二十年間愛用している巡礼の杖であり、それに手を加えた魔法杖でもある。


 聖女ルーシェは全世界が渇望していた治癒魔法の卓越した使い手であり、高度な自己再生体質を持つ不死者でもあった。実力的には青の魔女以下、グレン以上というところで、魔王との直接対決を担う四人の中で回復役を担う。

 性格は人類愛に溢れ人当たりが良かったが、宗教的な言葉が鼻につき、青の魔女はルーシェが苦手だった。


『確かに露払いでまだ誰も死んでいないのは出来過ぎているぐらいだが、どこから崩れるか分からないだろう? 南進があと一日遅ければ万全の迎撃ができたのに』


 魔王は倒した魔女や魔法使い、魔石を吸収し強くなる。半端な超越者をぶつけても餌になるだけなので、直接対決するのは超越者の中でも上澄み中の上澄み、即ちコンラッド・ウィリアムズ、グレン・グレイリング、青の魔女、聖女ルーシェの四名と決められている。

 その四名を万全の状態で魔王にぶつけるため、現在は魔王を守りまた手足となり動く甲類魔物の軍勢に総勢46名の超越者が束になってかかっているところだ。

 46名のうち、30名は日本の名工が手掛けた魔法杖を持っている。残り16名も緊急増産されたスクロールと魔法文字、アメリカ製魔法杖で武装しており、おびただしい数の甲類魔物を打ち砕く魔法の嵐を巻き起こしていた。


『明日になっても99%の準備が100%になっただけだ。実質万全で迎え撃てている。前哨戦の心配より魔王戦の心配をする事だ』

『君は心配症だな。心配要らない、全部きっと上手くいく。僕がいるからね。大統領だって間に合うさ』

『大丈夫ですよ。神は人が超えられない試練をお与えになりません』


 グレンもコンラッドもルーシェも、口を揃えて大丈夫だと繰り返す。

 無神論者の青の魔女が胡散臭く思って眉根を寄せると、ルーシェは茶目っけたっぷりに微笑み続けた。


『もしも超えられない困難に直面したなら、それは神の試練ではありません。ただの災厄です。みんなで逃げましょう』


 ルーシェが拳を突き出し、グレンの拳と合わせる。青の魔女も流れに乗って拳を合わせたが、不思議な事にまっさきに乗って来るはずのコンラッドは困り顔で拳を中空で迷わせていた。


『どうした、コンラッド。何が――――! お前っ!』


 途中で青の魔女が気付いてコップを投げると、コップは両手を挙げ降参のジェスチャーをするコンラッドの幻をすり抜けテントの床に転がった。

 それを見た瞬間、グレンは舌打ちしてテントを飛び出していく。数拍遅れ、青の魔女も続いた。

 

『ごめんなさい、魔王討伐隊、出ます! コンラッドが先走りました!』


 ルーシェも何事かという顔をしている指揮官と通信班に頭を下げ、青の魔女の後ろを追いかけた。

 三人は足並みを揃え、市街地を全力で前線へ走る。

 青の魔女は呆れ、ルーシェは苦笑していたが、グレンはブチ切れていた。


『あいつ投影魔法まで使いやがって! 前哨戦で死人が出るのは納得したはずだろ!?』

『いいえ、グレン。彼は最後まで頷いてはいませんでしたよ。黙して語らなかっただけです』

『二人とも、今は馬鹿野郎に合流するのが先決だ。飛ばすぞ』


 青の魔女の号令で三人は加速し、一陣の風になった。

 途中で討ち漏らしの狂暴そうな六足獣を三つの拳で殴り飛ばし、墜落してきた怪鳥を蹴り潰しながら跳躍し、20kmをたった十分で踏破し最前線に躍り出る。

 長旅の中でコンラッドが散々厄介ごとに首を突っ込んで対処に追われたため、三人の連携は完璧に仕上がっていた。強化魔法すらかけない素の身体能力であっても、甲類魔物下位程度ならばものの数ではない。


 だが甲1類が多数混ざった魔王の軍勢になると話は別だ。

 戦線維持と露払いを務める超越者達は武装を固めてもなお相当の犠牲が出るはずで、その犠牲が出ていなかった時点でコンラッドの介入を疑うべきだった。

 案の定純白の魔法剣を手に縦横無尽に魔物の軍勢の間を飛び回っているコンラッドは、パーティーの到着に気づくと衝撃波を引き連れ音速で三人の元に現れた。

 バツが悪そうに頭をかくコンラッドに、代表して青の魔女が冷たく言う。


『勝手に飛び出したら殺すと言ったはずだが?』

『いや、魔力は200Kぐらいしか使っていないよ。アミュレットで回復する分しか消耗していないから――――』


 最後まで言い訳をさせず、青の魔女はビンタを食らわせた。コンラッドは吹っ飛ばず、よろめき、涙目で頬を抑える。

 青の魔女は舌打ちし、すぐに建設的な話に移った。


『まあ、これで許してやる。流石に勝算あっての独断行動なんだろうな?』

『勝算はグレンが考えてくれているさ』

『……ハァ。説教は戦いの後だ、コンラッド。実際、魔力を消耗していないなら状況は悪くない。ここまで死者ゼロは大きい。全く考え無しに突っ込んだ訳ではないんだな。AA級はどの程度残っている?』

『魔王の周りをがっちり固めているのが二十体。前線に出てきたのを十二体倒して、残っている中で厄介なのはトウテツだね。ほら、中国にいた奴。アレだ』


 コンラッドが郊外の山の中腹あたりを指さすと、そこには意志を持つ黒い雲のような巨大な魔物が渦巻いていた。黒い雲は絶え間なく形を変え、本体から一部が離れ奇怪な魔物の姿に変じ、超越者達を飲み込もうとする。

 黒い雲は岩や土には何一つ影響を与えていなかったが、飲み込まれた木々や逃げ遅れていた動物達は消滅していた。

 中国を壊滅させた甲1類魔物「饕餮」は、無生物をすり抜け生物のみを貪り食らう凶悪な不定形魔物だ。


『ふむ。相当地形が変わっているな。あっちの空が赤くなっているのはなんだ?』

『アレは地獄の魔女だね。AA級を一体、地獄に引きずり込んで一人で止めてくれている。あのあたりに入ると魔物も変異者も全員死ぬから立ち入り禁止区域だと思ってくれ』

『なるほど。すると進行経路は限定されていて……魔力消費を考えると……』


 グレンが髭を撫で目を細め作戦を考えている間、ルーシェは前線に出て戦いに混ざり、魔物の軍勢に殴る蹴るの暴行を加えていた。噛みつかれ、斬られ、叩きのめされても、彼女は怯まない。肉を切らせて骨を断っても、ルーシェは自己再生で肉を元通りにできるのだ。

 我が身を顧みず、血しぶきを浴びながら微笑みを絶やさない聖女ルーシェの姿には助けられた味方の超越者達も引いていた。


『おいグレン。早く作戦を言え。ルーシェが突っ込んでるしコンラッドもウズウズしてる』

『くそっ、どいつもこいつも……よし、こうしよう。まずはトウテツを始末する。見たところ奴一体のせいで十五人は使わされてる。俺達でトウテツを潰せば前線は相当楽になるはずだ。魔力は温存しろ、使っても一人500Kまでだ。トウテツを潰したら一度引け、特に危険な戦線にチョッカイをかけるだけに留めて消耗を避けろ。いいな? あとは大統領が早く来るのを祈れ』

『コンラッド、お前はどうせ強化魔法しか使わないだろう? 私が800Kで道を作る。お前は200Kで自己強化して突っ込め』

『了解。いいだろう、グレン?』

『分かった分かった、好きにしろ。GO!』


 グレンの合図で、青の魔女は何百という魔物の群れの中心にいる黒い雲にキュアノスの先端を向けた。交差した二重の円環が起動し、コアを取り巻きゆっくり回転を始める。

 グレンが魔物の首を引きちぎっているルーシェに伝言を伝えに行くと、ルーシェは頷き、コンラッドに感覚強化魔法をかけた。


It's(リィオ) over(××) power(××) of() all() over() the(プト) world(ラエ).Fervor(×××), my(××) blood(デーニッ)


 コンラッドが並の超越者では負荷に耐えきれず体が破裂する三種類の強化魔法を身に纏ったと同時に、青の魔女は収束した凍結気流(ダウンバースト)魔法を横撃ちし、射線上の全ての物を凍り付かせ吹き飛ばした。

 乱戦の戦場に突如できあがった一筋の白い道を、コンラッドは目にもとまらぬ速さで駆け抜ける。


 一息で饕餮の胸元に飛び込んだコンラッドは光の剣を縦横無尽閃かせ、剥き出しになった饕餮本体……人の顔をした異形の虎を切り刻む。

 ところが、全身を八分割された饕餮は切り刻まれながらバラバラの体でコンラッドに掴みかかった。牙がコンラッドの首を突き破り、爪が腹を切り裂き、尾が脳天を叩き潰す。


 饕餮は人に似たその顔をニタリと醜悪に歪ませ哂った。

 が、直後、手ごたえのおかしさに気づく。

 コンラッドは全身をバラバラの饕餮に組み付かれ切り裂かれ抉られながら、なんの痛痒も見せず更に光の剣を振るう。

 太陽のようなまばゆい光を放つ剣は饕餮を1024分割し、消滅させた。


 後方でコンラッドのダメージを引き受けたグレンが全身から血を吹き出し死にかけるが、即座にルーシェの高位治癒魔法で全快。

 作戦通り、四人は魔力消費を抑え甲1類魔物を屠ってみせた。


 最も厄介な魔物を片付けた四人は打ち合わせ通り後ろに下がった。

 難敵が消え、苦境に立たされていた46名の超越者達はにわかに盛り返した。

 色も規模も形も千差万別の大魔法が吹き荒れ、たちまち百の魔物を木っ端みじんに消し飛ばす。


 ところが、魔王軍の総数は千を優に超える。

 ほんのいっとき戦線に空いた穴は、後方から送り込まれる魔物によってたちまち埋められた。


 魔王軍は、無限に終わらない死の津波のようだった。


 どれだけ戦おうと、打ち払い消し飛ばし潰そうともキリが無い。後から後から湧いて出てくる。

 もちろん視界を埋め尽くす魔物の大軍勢にも限りはある。

 だが、前哨戦を引き受ける露払い部隊だけでは分が悪かった。


 饕餮が倒れ押し上げたかと思った戦線は、やがて押し返され始める。

 魔法杖で威力を増強し、スクロールを切ってなんとか膠着させていた戦線に穴が空き始める。いくら武装強化で水増ししようとも、根本的に物量が違った。


『くそ、やはり厳しいな。コンラッド、そろそろ撤退も考えるぞ。魔力を使い果たせば撤退すら危うい。引くなら今のうちだ』

『いや。僕たちはもう手札を晒した。スクロールも魔法杖も、こっちが使える魔法の種類も、ほとんど全部だ。ここで引けば魔王は学習して対策をするだろう? ここで決め切らないと。大丈夫だ、きっと間に合う。大統領を信じよう』

『あの男は信じられなくもないが……騎獣の方に不安があるんだが』

『彼女も根は良い方ですよ? 少し強欲ですが』


 四人は言葉を交わしながら、じりじりと身を焦がされるような思いで戦況を見守る。

 四人が戦線に本格介入すれば、前哨戦は勝てるだろう。魔物の軍勢は全て排除できる。

 しかし、それをしてしまうと消耗しきった状態で魔王と戦う事になってしまう。

 いくら超越者の上澄み四人であろうとも、魔王の強さは常軌を逸する。万全で挑んでも危ういのだから、消耗していては絶対に勝てない。


 魔王に勝つのならば、四人の温存は必須だ。

 既に前線維持のために介入を行い、若干の消耗をしてしまっている。これ以上魔力を使う事はできない。


 四人それぞれが別のものに祈りを捧げる中、唐突に場違いな音楽が戦場に響き渡り始めた。


 アメリカ合衆国国歌「星条旗」だ。


 突如爆音で流れ出した合衆国国歌が、ただの歌が。雲に投影されたなびく星条旗が。戦場の空気を一変させた。


 グレンは呆気にとられた後、笑い出す。

 コンラッドは空の白い雲に投影された巨大な星条旗を見て、快哉を上げ拳を振り回した。


『Deus autem omnipotēns benedīcat tibi!』

「は。全く! アメリカは好きだな、こういうのが」


 ルーシェは杖を大空に向けて振り、青の魔女も笑う。

 四人が見る大空の向こうから、ドラゴンに乗った精悍な中年の男が飛んできた。


 投影魔法と拡声魔法を使い、大芝居と共に現れたアメリカ合衆国大統領の声が戦場に轟く。


『諸君! 勇敢なるアメリカ国民諸君! そして同盟国の皆さんも! よく戦った、よく生き残った! 総員――――あっこら! 暴れないでくれたまえ、今いいところなんだから!』

「まだ返事聞いてないの。超特急で無理してやったんだから、金山の権利も寄越すの! さもなきゃお前をここで落っことしてやるの!」

『いや失敬、ドラゴン君もご苦労! 君の奉仕を合衆国は永遠に忘れないだろう!』

「だから英語わかんねーて言ってんの! 金山! ゴールド! オッケーなの!?」

『ああ、契約の話かな? もちろんOKだとも!』

「オッケー? 今オッケーって言ったの。よしきたの。総員退避! 退避ーッ! 世界最強兵器のお通りなの!」

『総員退避! はーっはっはっはっは! 刮目せよ魔物ども! そして聞け! これがアメリカの力だと知るがいい!』


 退避命令を聞き、超越者達が一斉に帰還魔法を唱え離脱していく。

 コンラッドも大空を飛ぶ大統領専用機(ドラゴン)に敬礼を送ってから、仲間を促し急いで距離をとる。


『Great!』


 大統領の最初の声と共に、ドラゴンはアメリカ各地からかき集めた爆弾を腹袋から大量に投下し始める。


『America!!』


 甲類魔物達は知性を持っている。

 知性を持っているばかりに、戦場の異常な空気感を感じ取り、遥か上空から降り注ぐ投下物を見上げる。

 しかし魔物達はソレの脅威を知らなかった。魔力の欠片も無いソレがどれほどの破壊力を持つのか、魔物は分からない。知らない。知りようがない。


『Again!!!』

「人類の禁断パワーをナメんじゃねーの!! みんなまとめてブッ飛ぶの!!!」


 そして1000発を超える核兵器が炸裂し、地上に太陽の力が顕現した。










 大地震が起き、眩い閃光は魔物の群れを容易く薙ぎ払った。


 巨大なキノコ雲が天を衝く。

 衝撃波が吹き荒れ、ビル群が木の葉のように宙を舞う。

 途方もない爆熱は大地を焼き、赤熱させ泡立たせた。


 衝撃波に追われるように炸裂圏内から退避した四人は、熱を孕んだ大風に服と髪をたなびかせながら、手でひさしを作り爆心地を見る。


『……やったか?』

『あ。グレン、最近コミックで読んだんだけど、そういうのはフラグというそうだよ』

『馬鹿を言うな。口に出す出さないで事実が変わるものか。あー……よし。取り巻きは一匹残らず吹き飛んでいるな』

『さあ行きましょう。散々言いましたが、一時間以内に決着をつけますよ。それ以上は治癒魔法でも被曝の影響を取り払えません』

『魔王に物理攻撃が効けばな。まあ、ここから先は私達の仕事だ。さっさと片付けて帰るぞ』


 炎と煙の中から、無傷で魔王が現れる。

 四人は杖を握りしめ、灼熱の中に立つ世界の敵に向け、空前絶後の戦いの火蓋を切った。

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特装版制作&宣伝販促プロジェクトが動いています↓
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― 新着の感想 ―
アメリカも魔力の単位をKで統一したのね。そもそも測定はできてたのかな
サラッと流されてるけどやっぱ地獄の魔女強いな。AA級を一人で凌いでるし。 アトミック・アタック!!!!!インテリジェンス・パワー!!!!!
放射能という継続ダメージまで与える人類最強兵器ですもんねーアメリカ広いし植物魔法使える人に頑張って吸い取ってもらえば早期に除去は可能だろうしな
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