表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/188

49 陥落

 未来視の警告を受け取り自分を監視していた荒瀧組の魔女を瞬殺した青の魔女は、文京区へ全力疾走していた。

 走りながら目玉の使い魔を使い大利に念入り過ぎるほど念入りに「絶対に奥多摩から出るな」と厳命し、丸ごと更地にされる恐れがあるという特級危険地帯文京区のど真ん中にいる大日向慧を助けるために疾走する。


 最悪、大日向だけ助けて逃げる事も視野に入れなければならない。

 未来視の対応力を飽和させる同時多発的攻撃は、確かに有効だった。相手は無策で魔女集会に殴り込む馬鹿ではない。

 少なくとも作戦の絵図を描いた頭の良い敵が一人はいる。何をしてくるか、何をされているのか分からない。


 監視役を殺すのではなく情報を引き出すべきだったか、と後悔するが、殺してしまったものは取り返しがつかない。そもそも尋問の方法など知らないし、情報を引き出すために時間がかかれば大日向の救助に間に合わなくなる可能性もある。


 ビル群やマンションの屋上を飛び移り、高所から異変を探しつつ最短経路を走っていた青の魔女は、遠くで漆黒の巨大半球状ドームが展開されるのを見た。

 夜の魔女の魔法だ。場所は、ちょうど文京区。青の魔女の到着を待たずして、荒瀧組の襲撃は始まってしまっていた。

 見えたのは漆黒のドームだけで、霧は広がっていないし、蜘蛛の巣も見えない。蜘蛛の魔女は防衛戦参加を拒否したようだった。すると東京の心臓部、文京区を守っているのは目玉の魔女、夜の魔女、煙草の魔女の三人だけになる。


 正直言って、頼りない。

 これが夜間ならば夜の魔女は強くなるが、現在は真昼間である。並の魔女が三人では全員魔石持ちだという荒瀧組の襲撃をどこまで凌げるか。


 不安は的中し、さほど間を置かず漆黒のドームは宙に溶けるように消え去った。

 夜の魔女がこの危機の最中にあって魔法を解く理由はない。解かされた、つまり敗北したと考えるのが妥当だ。

 いくら三人が戦闘向きの魔女ではないと言っても、早過ぎた。やはり荒瀧組はなんらかの勝算を持って文京区を襲撃し、そしてそれは成功してしまったのだ。

 だが不幸中の幸いで、文京区が更地になっているようには見えない。少なくとも今はまだ。


 全力疾走していた青の魔女は文京区が陥落したと見て作戦を変えた。地上に降り、民家のドアを蹴破り押し入る。

 緊急事態宣言下にあり屋内で立てこもっていた母子家族は、母が包丁を、その息子らしき少年が角材を持って震えあがっていた。


「ひっ! ……あ、青の魔女様?」

「乱暴ですまないが、とにかく急いでいる。一般人に変装したい。服を貸してもらえるか?」

「え。あ、は、はいっ!」


 母親は慌てて包丁を放り出し、箪笥から服を引っ張り出し青の魔女に渡した。青の魔女は胸の窮屈さと腰回りの緩さに難儀したが、ひとまず違和感の無いありふれた服装に着替える。

 仮面、ボロボロの黒コート、キュアノスは青の魔女の識別記号として非常に有名だ。逆にいえばその三つが無ければ人間そのものの容姿をしている青の魔女は一般人に紛れ込める。


「あ、あのう……」

「なんだ」

「僭越ながら、一般人に変装なされるなら、お顔を少し汚した方がよろしいかと」

「なぜだ」

「そのー、青の魔女様はお美しいので。掃き溜めに鶴と言いますか。つまり、お顔だけでもとても目立ちます」

「あ、ああ」


 なんだか気まずくなりながら、青の魔女はありがたく灰と埃、少しの土で顔を汚し、長く艶やかに纏められた黒髪を適度にぼさぼさにしてもらった。良い気分ではないが、必要な事だ。

 変装を手伝ってくれた母と、「悪いやつ、やっつけて!」と声援をくれたその息子に礼を言い、青の魔女は改めて文京区の中心へ早足に向かう。キュアノスを隠す入れ物には、亡き夫のものだという竹刀袋を借りた。魔力もしっかり抑え、一般人への擬態は念入りに。


 未来視が意識不明になり、目玉の魔女が敗北したのなら、実質魔女集会は群として動くための頭を失った事になる。

 ただでさえ協調性に欠ける魔女集会は、統率者がいなければ烏合の衆だ。烏の中に一匹混ざった竜はそれなりに暴れてくれるだろうが、いまいち信用がおけない。

 暴力的ではあるが統率が取れている荒瀧組が魔女集会の中枢を掌握してしまったのなら、青の魔女ももう力任せには暴れられない。まさか大怪獣の時と同じように文京区を丸ごと氷漬けにするわけにもいかないのだから。

 従って青の魔女がするべきはゲリラ活動。密かに動いて荒瀧組の情報を探り、ここぞというポイントを見つけ一気呵成に吹き飛ばす事だ。


 荒瀧組がどこまで魔女集会の内部情報を知っているか分からない。

 襲撃の手際を考えると竜の魔女が相当ポロポロ情報を漏らしたと察せられるが、青の魔女の監視役が舐め腐った雑魚魔女だった事から考えるに、荒瀧組が持つ情報には相当穴がある。

 青の魔女は、大日向が上手く荒瀧組から逃げ、隠れてくれている事を祈った。

 青の魔女が大日向を溺愛していると知られていれば、人質に取られる事は想像に難くない。

 そうなれば青の魔女は荒瀧組に逆らえなくなる。もちろん、細かな状況次第ではあるが……


 青の魔女はもう一度しつこく大利に「絶対に奥多摩から出ないように」と念押ししてから、目玉の使い魔を解除して消した。隠密中に急に大利から通話が来ると困るからだ。

 大利の危機感の薄さを鑑みれば、通話をしてくるなと言っても何かの拍子に最悪のタイミングで通話してくる可能性はあるように思えた。不確定要素は消しておきたい。


 緊急事態宣言下でも往来に多少の人の行き来はあり、それとなく周囲の様子を観察しながら文京区中心部に向かう青の魔女は見咎められなかった。

 不安げで混乱した様子の警備隊の話を盗み聞いたところによると、やはり目玉の魔女、夜の魔女、煙草の魔女は敗北したようだった。

 しかし荒瀧組は三人の降参を受け入れ、殺してはいないらしい。

 そして未来視は初動の指示の後に指揮を執る事ができていないが、捕まったとか、殺されたとか、そんな話も出ていない。上手く潜伏してくれているようだ。


 青の魔女は早足に歩きながら耳で拾える限りの情報を拾いつつ、一番大日向がいる可能性の高い東京魔法大学の門前まで来た。

 大学内部には明らかに学生でも教員でも無い、如何にもチンピラといった格好の男や女がウロついている。全員一気に殺すのは簡単だが、そうすれば奥に見える魔力の揺らぎの主、魔法使いか魔女が飛んでくるだろう。

 魔女と魔法使いを含め、大学内の敵を皆殺しにする自信はある。

 しかし、大日向の所在も安否も分からない今は安易に暴れるわけにはいかない。


 大日向教授(父)の銅像の後ろの茂みに隠れながら、さてどう探りを入れようかと考えていると、急に小声で話しかけられた。


「魔女様。青の魔女様ですよね?」

「!?」


 青の魔女は突然隣に湧き出した気配と声に悲鳴を上げかけた。

 咄嗟に竹刀袋でぶん殴ろうとして、隣に湧き出たのが魔法言語学科助教授の七瀬(ななせ)七海(ななみ)女史だと気付き寸前で止める。

 七瀬はまつ毛の先で止まった凶器に冷や汗を流し、両手を上げた。


「す、すみません……」

「驚いた。まるで気配が無かったぞ」

「仮死魔法を使ってずっと隠れていました。そうしたら魔女様が近くに来られたので」

「ああ。なるほど、素晴らしい判断だ」


 青の魔女は感心し、頷いた。流石はエリート集団魔法大学の助教授だ。

 仮死魔法は蜘蛛の魔女の魔法の一つで、魔物や魔女、魔法使いから視覚的にも嗅覚的にも感知されにくくなる。喋ったり動いたりした途端に魔法が解けるし、視界の中に目立つ形で入れば流石に気付かれるので奇襲に使えるものではないが、敵をやり過ごすには最適である。正に今のような状況で難を逃れるには最適解と言えるだろう。


 仮死魔法の効果中でも普通に見聞きはできる。ありがたい事に、七瀬助教授は大学内で起きたり話されたりした事をほとんど知っていた。文京区役所の戦いの一部始終も。目玉の使い魔で探りを入れたりもしていたという(途中で破壊されてしまったが)。

 青の魔女は銅像の後ろの茂みにしゃがみ込みつつ、七瀬助教授からヒソヒソ声で事の顛末を聞いた。


 七瀬助教授は緊急事態宣言発令時に大学構内にいたので、文京区役所に起きた戦いの全てを実際に見たわけではない。ただ、戦いの結末は目玉の使い魔が間に合って見る事ができていた。

 それによると、荒瀧組の魔女が魔法暴走魔法を使ったらしい。


 区役所に攻めてきた敵は三人。全員魔石持ちだった。そのうち一人は使い魔到着前に死んでいて、魔女集会の三人の奮戦ぶりが窺い知れる。

 しかし煙草の魔女が残り二人を一網打尽にすべく大魔法を唱えた瞬間、敵の魔女が未知の呪文を詠唱。途端に煙草の魔女は魔力コントロールを著しく崩し、魔法を暴走させかけた。

 煙草の魔女の杖は量産品で、性能が低い。目玉の魔女は慌てて自分の0933謹製特注杖を握らせ、辛うじて魔力の制御を取り戻させ大魔法が完全に制御下を離れる惨事は防がれた。

 が、一連の混乱の隙に夜の魔女は杖を腕ごと持っていかれ、気絶。夜の魔法が解除される。

 煙草の魔女は魔法を暴走させかけたせいで疲労困憊。

 勝ち目を失った目玉の魔女は降伏勧告に従い、降参した。


 青の魔女は相手が相手だとはいえ負けるのが早いと思っていたが、納得した。

 荒瀧組は最悪文京区を更地にすると聞いていた。隠し玉の正体は大規模広範囲魔法ではなく、魔法暴走だったのだ。

 魔女や魔法使いの魔力コントロールを乱し、大魔法を暴走させれば、敵を極めて強力な爆弾に変えられるも同然。

 葛飾区は魔法使いが魔法を暴走させ、爆死して更地になったし、地獄の魔女も魔法の暴走で管理区を崩壊させている。爆弾の威力は実証済みだ。


 そんな魔法があるとなると迂闊にキュアノスを使えない。

 キュアノスで異常増幅した魔法はコントロールが難しい。暴走させられたら文京区どころか東京の半分が氷河に沈むだろう。


 ちょうど三人の魔女が区役所で敗北した頃、魔法大学には「組長」と「若頭」と呼ばれる二人の魔法使いが取り巻きの兵力を率いて攻め込んできた。

 魔法大学は徹底抗戦派と無血開城派で割れていて、大日向教授の制止を振り切った徹底抗戦派が二人の魔法使いの迎撃を行う。

 戦闘学科を中心にした教授陣と学生たちは、研究用に大学に保管されていたマモノバサミに上手く若頭をひっかける事に成功し、魔法の集中砲火を浴びせた。

 が、魔法の根本的威力不足は如何ともしがたい。

 若頭は全身痣まみれになり膝をついたが、大きな負傷はなく。徹底抗戦派は組長が唱えた魔法によって全員屈服させられ、敗北した。


「屈服というのは? まさか傀儡魔法か?」


 青の魔女に緊張が走る。入間と同じ魔法の使い手だとすれば、いよいよ魔女集会壊滅が現実のものとして見えてきてしまう。

 しかし七瀬助教授は首を横に振った。


「いえ。効果としては『命令に逆らえなくなる』という感じに見えました。命令に逆らおうとして口と体が動かなくなるなど、明らかに逆らう意思自体は持てていたので、思考が捻じ曲げられているわけではないですね。魔法をかけてから効果が発揮されるまでに30秒ほどの猶予期間もありました。傀儡魔法の基幹単語も含まれていませんでした」

「基幹単語が違うなら傀儡魔法じゃないな。良かった……」

「大学に連行されてきた三人の魔女様には、教授や学生に使ったのとは別の呪文を唱えていましたし、呪文とは別に契約への同意を求めていました。どうも魔女様方には同意が必要な魔法を使う必要があるようでして、お三方とも同意を拒否され、同意を得るため拷問の準備を始めるという話をしていました」

「穴の多い魔法だな。組長とやらは劣化入間と考えて良さそうだ」


 比較対象を思って安堵した青の魔女を、七瀬助教授は目を吊り上げ見咎めた。


「何を安心しているんですか。未来視様が倒れ、目玉の魔女様が拘束され拷問にかけられようとしているんです。状況を打開できるのは青の魔女様だけなんですよ」

「あ、ああ。悪い。しかし私としては慧ちゃんさえ助かれば……」

 

 青の魔女は言いかけ、顔面に飛んできたグーパンチを反射的に避けた。

 続く二発目も避け、目を白黒させると、七瀬助教授は声を潜めたまま静かに激怒し拳を固く握りしめていた。


「ふざけるのも大概にして頂かないと私も手が出ますよ?

 何が慧ちゃんさえ助かれば、ですか。

 貴女が。貴女が廃墟なんかを守っているせいで。大日向教授は、服毒自殺未遂をしたんです」

「……なんだって?」

「ほら! 知りもしない! 僭越ながら申し上げますが、貴女はただの守護者気取りです。全然守れてなんかいません」


 血の気が引く青の魔女に、七瀬助教授は舌打ちして懇々と状況を説く。


「大日向教授は聡明です。自分が敵の手に落ちれば、貴女への人質に使われると分かっていた。だからギリギリまで荒瀧組に交渉を試み、交渉が決裂した途端に毒を飲みました。

 組長が気付いて毒を吐かせたので一命は取り留めましたが、意識不明です。

 大日向教授に、まだ15歳の女の子に、そこまでさせたのは貴女です!

 貴女が彼女を溺愛するから、彼女には人質としての価値が生まれてしまった。

 それなのに貴女は傍で守る事もしないで空っぽの街に固執して。傍にいなかったせいで、教授はいま敵の手の中で命が危うい。

 貴女が教授の傍にいれば。最初から文京区にいれば。大学は落ちていなかったし、目玉の魔女様も、夜の魔女様も、煙草の魔女様も、敵に降伏せずに済んだ。未来視様だって倒れるまで無理をする必要はきっと無かった。

 分かりますよ、貴女のトラウマと悲しみは私の想像には余るものでしょう。当時貴女はまだ高校三年生だった。

 でも、いつまでセンチメンタルに浸って青梅に引きこもるつもりですか! 今を見て下さい!」


 三度目の拳を、青の魔女は避けなかった。顔面に拳が突き刺さるが、微動だにしない。

 七瀬は砕けそうに痛む拳をもう一度構え、怒気を発しながら脅す。


「もう一発いくか、目を覚まして状況を打開するために真面目にちゃんと働くか。どっちにします?」

「……動こう。確かに全て私のせいだ」


 青の魔女は明白な危機下で第三者に厳しく言われ、胸の痛みと激しい自責に苦しんだ。

 地獄の魔女は、自分と同じように護るべきものを失ってもなお、前を見据え進んでいった。

 彼女を見習ってそうすべきだったのだ。もっと早くに。


 当然、最も悪いのは攻め入ってきて暴力を振り撒いている荒瀧組だ。

 しかし次に悪いのは自分だ、と青の魔女は己を責めた。

 再び大切なものを取りこぼしかけるまで、青の魔女は過去に後ろ髪を引かれたままだった。


 七瀬助教授は顔つきが変わった青の魔女に、構えた拳を下げた。

 まだ怒りの色を残しながらも、更に貴重な情報を授けてくれる。

 仲間が倒れ、囚われていくのを見ながら、飛び出していきたい衝動に耐え、情報収集に徹してくれていたおかげで、青の魔女には充分な情報が渡る。


「荒瀧組は中庭に有力者たちを集め、魔法で屈服させ、情報を引き出しています。大日向教授の所在は隠されてしまい不明ですが、闇雲に探して回るよりまずは中庭の様子を窺うのが良いでしょう」

「ああ、分かった」

「私はもう魔力が1Kも残っていません。お役に立てませんから、後は青の魔女様にお任せします。いいですか? 死んでも大日向教授は助けて下さい。それが貴女が果たすべき最低限の責任です。そしてその後に敵を一掃して下さい。できないとは言わせませんよ」


 青の魔女は七瀬に半分蹴り出されるようにして隠れていた茂みから追い出された。

 青の魔女は早速言われた通り中庭の様子を見に行こうとする。が、門から中庭にかけてのルートには荒瀧組の手の者と思われるチンピラがうろついていたので、建物の影で大きく跳躍して屋上へ移動し、屋上伝いに中庭が見える位置へ移動した。

 もし発見されてしまい、大日向の身の安全を盾に脅迫されれば、容易く屈する自信がある。誰のためにも見つかってはいけない。


 幸い誰にも見つからず、青の魔女は中庭が覗けるいい位置につく事ができた。

 中庭にはまるで銃殺前の整列のように後ろ手に縛られた教授たちや近隣の有力者たち(魔女を除く)が横一列に膝をつき並べられている。


 その有力者たちに、五十がらみの厳つい顔をした男が肩に手を置いては魔法をかけていた。全員に魔法をかけ終えると尋問をはじめる。耳を澄ませると、小さく会話が聞こえてくる。


「もう一度聞くぞ。嘘偽りなく答えろ。杖職人はどこにいる?」

「分かりません。青梅市にいると聞いています」

「名前は? 0933じゃないぞ、本名だ」

「分かりません」

「性別は? 年齢は?」

「男か女。年齢は5~150歳の可能性が高いです」


 不明瞭極まる回答を聞き、組長と思われる魔法使いは唸った。


「くそっ、お前はもういい。次、お前だ。杖職人はどこにいる?」

「分かりません。僕は杖職人が現在貿易船で密かに北海道へ送られ技術提供をしているという話を信じています」

「名前は? 性別は? 年齢は?」

「全て分かりません」


 またもや中身の無い答えが返り、魔法使いはイライラと頭を掻く。


「この野郎……! 次、お前! 杖職人はどこにいる!? 何者だ!?」

「分かりません。私は杖職人と未来視様の同一人物説を支持しています」

「ふざけやがって……! 全員話が違うじゃねぇか。どうなってやがる?」


 話を盗み聞く青の魔女は思わず微笑んだ。今この時ほど大利のコミュ障に感謝した事はない。

 表舞台への顔出しを拒否し続けてきたおかげで、荒瀧組はワケが分からなくなっている。

 もしも大利が社交的で人格的に優れ積極的に社会と交流を持っていたら、とっくに居場所の情報を抜き出され、大利の身に危機が迫っていただろう。


 依然、事態は深刻だ。

 しかし大利の意固地な対人恐怖症のせいで敵が混乱しているのを見ていると、肩の力が抜ける。

 大利はあんなにぽけーっとしているのに、名前が出るだけでなんとかなりそうだと不思議と思わせてくれる。


 青の魔女は大利に贈られた御守り(アミュレット)を服の上から握りしめ、必ず大日向を見つけ出し、救い出す事を己自身に誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

書籍化しました!
コミカライズ連載中!!
下記画像リンクから特設サイトに飛べます!
14f6s3b4md58im3azh77p2v1xkg_8ak_1jk_xc_s147.jpg
― 新着の感想 ―
ここ年齢の幅が広すぎて笑うwニュースでこれ出てきたら爆笑する自信がある >「男か女。年齢は5~150歳の可能性が高いです」
魔法強化全力ダッシュで青梅から文京区までどれくらいかかかるん?
七瀬教授の怒りを理解できる一方で、小冊子付の書籍版1巻を踏まえると、複雑な気持ちになりました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ