18 グレムリン工学教授、その経歴
東京魔法大学が一年制カリキュラムになってから最初の学生の一人である半田作之助は、元々埼玉県さいたま市に住んでいた。
さいたま市はグレムリン災害で治安が完全崩壊した、ありふれた地域の一つだ。
魔女や魔法使いの誕生に恵まれなかった地域は、例外なく悲惨な運命を辿る。次から次へと襲い来る魔物に抵抗できず、殺戮と略奪の嵐が巻き起こるのだ。自衛隊や警察がいくらか治安崩壊を先延ばしにできたとしても、弾薬が尽きた途端に魔物の暴力に飲み込まれる。
体の弱いものや頭の弱いもの、行動力に欠けるものは老若男女関係なく真っ先に死に、さいたま市の人口は一カ月足らずで激減した。
各地で正確な人口統計が取られたわけではないが、魔女・魔法使いがいる地域の生存人口は平均20%。いない地域の生存人口は0.1~5%程度と言われている。さいたま市も例外ではない。
30代も中盤の働き盛りで水道工事店に勤めていた半田は災害直後に家族を全員失い、嘆く間もなく社会の激変に翻弄された。
生き残ったのは幸運でしかない。
約一年間、魔物が跳梁跋扈するさいたま市内でやむにやまれず略奪で命を繋いでいた半田は、全てに嫌気がさし、隠れ家を捨て理想郷を求め南下を始めた。
旅の途中で魔物に襲われ殺されたとしても、死にかけの老人や親を失った子供からなけなしの物資を奪うような生き方を続けるよりずっと良い。
東京には、魔物の力を得た魔女たちがいて、人々を魔物から守り食料を配っているという噂があった。半田は荒川沿いに、東京を目指した。
情報通信が途絶したこの世界で、噂の真偽を確かめる術はない。似たような噂は山ほどあったし、全て救いがあって欲しいという儚い願いが産んだ幻想に過ぎなかったが、魔女の噂だけはなんとなく信ぴょう性が感じられた。
そう信じたかっただけかも知れないが、結果的に、半田は賭けに勝った。
都外からの避難民として東京に受け入れられた半田は、いくつかの問診を受け、荒川区から台東区にまたがる地域を統治している「花の魔女」の管理エリアに割り振られた。
新生活が始まった。
まず、避難民扱いされた事が驚きだった。見ず知らずの人間を人間扱いする人間に会うのは久しぶりだった。
明らかな規律に基づき移住先を指定されたのはもっと驚きだった。
信じ難い事に、東京では秩序が保たれていた。
そこには組織があり、政治があった。
それは災害前では当たり前のものとして享受していたモノなのに、まるで異世界の異文化に触れたような錯覚すら覚えた。
花の魔女の管理エリアの先住民は、やってきた半田を気の毒そうに迎えた。
曰く、東京各地を支配している魔女集会の面々の中で、花の魔女の管理区に住む事になった者は不運だ。最悪の地区ではないが、まともな死に方はできない……
花の魔女の管理地区で最大の特徴は、区民の死体が花の魔女の養分にされる事だ。これを避けるために区外に逃げようとする民を、花の魔女は許さない。
花の魔女の民に墓は無い。死者は地中から飛び出す根によって土の中に引きずり込まれ、彼女の栄養となる。
そうして死体を啜った花の魔女は、この世の物とは思えないほど美しく咲き誇るのだ。
だが、逆に言えばデメリットはその程度。
花の魔女の豊穣魔法で、穀物・野菜・果物のみの配給だが毎日三食食べられる。
管理区一帯の地中に張り巡らされた根によって、出没した魔物は一瞬で討伐される。空を飛ぶ魔物だけは警備隊が応戦するか、他地区の魔女に応援を頼むしかないが、地上に魔物がいないだけで暮らしは楽だ。
花の魔女は盗むな、殺すな、騙すな、などといった基本的な法を敷くだけで、区民に過干渉をしてこない。
区民の一部がおぞましそうに語る死体喰らいを、半田はなんとも思わなかった。
死んだ後の事を気にするなんて、本当に東京は平和なんだな、と感心するぐらいだ。
あくまで死体を養分にするだけで、養分にするために積極的に死体を作りはしないのだから、気にする必要もない。
花の魔女の根元で数カ月平穏に暮らし、疲弊した心身を癒していた半田は、ある日初めて魔法使いに出会った。
未来視の魔法使いを名乗る自分と同年代ぐらいのくたびれた男は、一見してなんの変哲もないヨレたスーツの中年男性だったが、区民が恐れる花の魔女と堂々と交渉し、何かしらの約束をして去っていった(後から聞いた話によれば、代償を支払い豊穣魔法を習ったらしい)。
外からやってきて、無事に帰っていった未来視の魔法使いを見た半田は、蒙が啓けたようだった。
花の魔女は死んだ区民を自らの養分にする。養分に逃げられるのを嫌がり、花の魔女は民が区外に出る事を禁じている。
だが、どうやらそれは絶対の法則ではないらしい。力があれば、立場があれば、交渉すれば。この先一生をこの区内で過ごさずに済むのだ。
数カ月間をその前の一年とは比較にならないほど平穏に過ごしてた半田には、欲が出ていた。東京の別地区を見てみたいと思ったのだ。
今の暮らしも良いものだが、別の地区でもっと良い暮らしができるのなら、そうしたい。
まず、半田は重機が動かないせいで遅々として撤去が進まない市街地の瓦礫から資材を集め、造花や押し花を花の魔女に贈って御機嫌取りをした。今は亡き妻にしか言った事の無いような歯の浮く台詞で美しさを褒め、好感度を稼いだ。
そして、東京魔法大学の学生募集の機に乗じて、区外留学に行かせて欲しいと頼んだ。
必ず戻るから。貴女の役に立つ知識や技術、魔法を覚えて帰るから、と。
訴えを聞いた花の魔女はたおやかに微笑み、半田の耳元で囁いた。
「貴方をここで送り出すと、卒業しても戻らないのですってね? 魔法大学はそんなに居心地が良いのね」
「!」
半田は蒼褪め、花の魔女と未来視の魔法使いが交わした取引の内容を朧気に悟った。
確かに、未来視の魔法使いが取引で何かの代償を支払うとしたら、それは彼の最大の手札である未来視の力に違いない。
半田は根で四肢を捕らえられ引き裂かれるのを覚悟したが、予想外にも花の魔女は身を引いて離れ、反応を面白がるようにくすくす笑った。
「でも、良いわ。許可しましょう。魔法大学に縁を作るのは悪くない。向こうに行っても、たまには手紙の一つでも書いて送りなさい? 半田作之助」
半田は生きた心地がしないまま、花の魔女の御前を辞した。
そういえば、彼女は人の名前を覚えていたんだな、と気付いたのは、魔法大学の入学式を終えた後になってからの事だった。
東京魔法大学には現在「魔法言語学」の一学科のみが存在し、必然的に半田は魔法言語学科に入学した。
二度目の大学生活は一回り以上年下の若者に囲まれる居心地の悪いものになるだろうと思っていたが、同級生は見事に年齢がバラバラだった。自分より年上の60近い初老の男性がいれば、まだ中学生ぐらいだろう少女もいる。
魔法大学は年齢で学生を選ばない、とは聞いていたものの、それは建前で、やはり若者が優先的に入学するのだとばかり思っていたので、かなり意外だった。
半田は魔法を学ぶためというよりも東京を見物して回るために大学に入ったので、授業はほどほどにこなしつつ、暇があれば大学所在地である文京区を散策した。
まず驚いたのが、どこにも死体が転がっていない事だった。
さいたま市では死体は埋葬する事なく放置され、動物や魔物に食い散らかされ、無残な亡骸を晒しているのが普通だった。
花の魔女の管理地区では、死体は魔女の養分として消費されるので、死体が無いのも納得だった。
しかし文京区を治める未来視の魔法使いは死体を食うタイプではない。文京区の人口の80%が死亡したとして、18万体以上はあったはずの死体は全て処理されたのだろうか?
相当な苦労だったはずだ。どこかにまとめて積み上げられていてもおかしくないのだが、文京区の街並みは綺麗なもので、死体の山や死体を投げ捨てる用の穴は見当たらず、腐臭もしない。
そのあたりについて疑問に思いずっと文京区暮らしだという同級生に尋ねると、予想もしなかった答えが返ってきた。
なんと、死者が最も多く出たグレムリン災害による混乱最盛期に、「ゾンビの魔女が東京中を練り歩き、死体を片端からゾンビに変えて連れ去ってしまった」のだという。
そんなわけで、東京には死体が転がっていない。
半田は感心した。
確かに、死体が自分で歩くなら、死体清掃の手間は大幅に削減できる。
効率的な処理方法だな、と頷くと、同級生は眉をひそめ気味が悪そうに半田から離れていった。
実際、東京の人口密度で山のような死体を放置していたら、腐肉食の魔物や野生動物がひっきりなしに寄って来て、蝿が大量発生し、土壌や水を汚染し疫病の発生源になっただろう。
例え死者の尊厳を冒涜してでも、ゾンビ化して死体を回収して回ったのは生者を守るためにおおいに意義があった。
ゾンビの魔女の多大な功績に対しての失礼な態度に半田はムカッ腹が立ったが、数日後別口で事の詳細を聞いて納得した。
ゾンビの魔女は回収したゾンビの中で見た目が良いものを侍らせ、死体逆ハーレムに耽溺しているというのだ。
流石にドン引きした。
一年間に及ぶ極限生活で感性が普通とはズレてしまい戻らない半田だが、魔女たちの感性には流石に理解が及ばない。
文京区は死体が無い上に住み心地がよく、半田はすぐにこの地区が気に入った。
花の魔女の地区は治安が良かったが、文京区に住んでみると、なるほど花の魔女の民が不平を言ったわけだと分かる。地獄の黙示録の名残は色濃いが、復興の希望に誰もが目を輝かせ生き生きとしている。
文京区では毎月末に交換市が開かれ、東京中から物資が持ち寄られる。貨幣価値が崩壊しているので全て物々交換だが、貴重な酒と文明崩壊前の高額トレーディングカードを交換しようとしている奇矯者がいたりして、見ているだけでも飽きない。
食糧配給は安定している上に彩り豊か。量は少ないものの栄養バランスに偏りが無く、まるで質素な学校給食のようだ。
魔物の被害に関しては対応が素晴らしく迅速で、半田は一度マンホールの前に未来視の魔法使いが懐中時計を見ながらセカセカやってきて、子牛ほどもある巨大蛙がマンホールから飛び出すと同時に脳天を綺麗に殴り抜いて即死させ、急いで帰っていくのを見た事がある。
全ての魔物の出没を予知できるわけではないらしいが、先回りして被害を防いでいる現場を一度ナマで見てしまうと物凄い頼もしさだった。
日曜日限定で銭湯が開かれるのも特筆すべきだ。半田の入学後間もなく開かれるようになった銭湯は、医療班からの進言によるものらしい。水と燃料を大量に消費してでも、区民の清潔さを保つのは長期的メリットが大きいと熱弁し、受理されたという。
実際、イモ洗い状態の混雑しきった浴場であっても週に一度の入浴が叶うのは半田としてもかなり嬉しい。濡れタオルで体を拭くのとは段違いだ。
文京区ではおおよその物事が効率よく、整然と進んでいた。
未来視の魔法使いの魔法が成せるわざだろう。区民としてはありがたい事この上無いが、未来視の魔法使いを見かけるたびにやつれていっているように見えるのは心配だった。
優秀な人材を半田が知る限り最高の指導者が指揮しているのだから、文京区の頭一つ抜けた復興度合いも納得がいく。文京区の大黒柱は名実ともに紛れもなく未来視の魔法使いだ。
しかし港区が吸血の魔法使いの死亡と共に更地になり区民が離散してしまったように、未来視の魔法使いが消えれば文京区はたちまち大混乱に陥るだろう。
そうならないようにするために、技術や人材を育てる東京魔法大学があるんです、という授業前の大日向教授の短い演説は、すっかり文京区に馴染んだ半田の胸に染みた。
文京区が好きになると、大学や授業にも愛着が湧いた。
今は文京区の恩恵を受けるばかりの身ではあるが、恩を返したいと思うようになる。
そんな半田は、授業で使っていた汎用魔法杖回収騒動の後、学生寮の自室で改良されて戻ってきた杖を調べていた。
大日向教授によると、杖の柄に魔力逆流防止機構が組み込まれたそうで、今日の授業の始めに杖の正しい構え方と逆流防止機構原理の講習を受けた。
構え方はとにかく、機構の原理は例え理解しても簡単には真似できないものだったが(反射炉なんてどうやって用意しろというのか)、半田は非常に興味をそそられた。
半田は水道工事店に長く勤めていた。店長から色々仕事の役に立ちそうで立たない知識を教え込まれていたのもあり、流体力学についてはそれなりの知見がある。
激動の日々の中で忘れかけていた知識が、逆流防止機構の解説を聞いて蘇った。
逆流防止機構は、棒状の融解再凝固グレムリンの中を逆流魔力が通る際、魔力ロスが発生する事で成り立っているという。
つまり、魔力が、管の中を、流れている。
穴だらけの理屈だと自分でも思うが、水道菅を流れる水のように感じられ、半田は問題の本質とその解決策について考えていた。
そして半田は一つの思いつきを試すため、分解禁止の魔法杖を分解し始めた。
魔法杖は卒業後に授与されるものであり、卒業するまではあくまで貸出品。大学の備品だ。大切に扱わなければならないし、分解なんてもってのほか。しかし半田は好奇心に負けた。
半田の考えによれば、融解再凝固グレムリンの形状を棒ではなくテスラバルブにすれば機能が向上するはずだ。
まっすぐな管の中を逆流する魔力は、当然まっすぐ勢いよく流れてくる。
そこで管の形状を変え、逆流する魔力が管の中で乱流と渦巻を作るようにする。形状変更によって流れを乱して逆流する魔力の勢いを衰えさせれば、魔力逆流軽減率の飛躍的向上が見込める。
逆流する魔力が融解再凝固グレムリンの中で流体と同じような挙動で流れているのなら、の話だが……
半田は魔法使いではないので、魔力がどう流れているかなんて分からないし感じ取れない。実際にやってみるしか検証方法はない。
なにも大日向教授の愛杖、正十二面体フラクタル型魔法杖アレイスターのような人智を超越したド変態加工をしようというわけではない。まっすぐな棒を少し削って感触を確かめるだけだ。
自分の加工技量でもそれぐらいならできるはず、と工具を手に加工に取り掛かった半田は、ものの数十秒で融解再凝固グレムリンを複数の大小片に割ってしまった。
最初の一片の切削で感触を掴んだ気になり、次の一片を同じ要領で削ろうとした瞬間、意味不明なヒビの入り方をして、そのヒビが一瞬で全体に広がり割れたのだ。
半田は蒼褪めた。
やってしまった。
ちょっと欠けたどころではない。それはもう、言い訳ができないほど派手に壊れた。
加工が難しいというのは知識の上で知っていたが、これほど繊細とは思わなかった。
グレムリンはもっと強度が高いはずだが、どうやら図らずも特に弱いへき開面に衝撃を集中させてしまったらしい。
半田は頭を抱えて小一時間ベッドの上で言い訳や隠蔽を考えた後、壊れた魔法杖を持って素直に学長室へ向かった。
相手が自分より年上の学長ならば上手く隠す事を選んだだろうが、13歳の少女に対してミスの隠蔽を図るのは気が引けた。大人としてあまりに情けない。謝りにいくのも情けないが。
学長室で半田から事情の説明を受けた大日向教授は、獣耳を伏せ、尻尾をへにょりと垂れ下げてしまった。分かりやすい困り顔で腕組みをする。
「うーん、困りましたね」
「すみません……」
「ああ、大丈夫ですよ。私が何とかします。悪戯ではなく学術的好奇心、それも実験のために分解して壊してしまったのでしょう? それを咎めるのは、学び舎の長としてあってはならない事です」
「……あの、失礼ですが本当に十三歳ですか?」
「そうですけど」
首を傾げる大日向教授は年齢相応の可愛らしさだったが、言動が熟練の教育者のそれだった。半田はますます自分が情けなくなる。
大日向教授はしばらく腕組みをしてうんうん悩んでいたが、やがてポンと手を叩き明るく言った。
「そうですね、こういうのはどうでしょう? 半田さん」
「は、はい」
「来年新設するグレムリン工学の教授をやってみませんか」
「はい?」
耳がおかしくなったのかと思い聞き返すと、大日向教授は人好きのする笑顔で同じ言葉を繰り返した。
聞き間違いではなかった。
「半田さんのアイデアは、本職の魔法杖職人ですら思いつかなかった理論的かつ素晴らしいものです。それに、二度目の切削で割ってしまったという事は、一度は削れたのでしょう? しかもありあわせの工具で。初見でそれは本当に、本当にすごい事なんですよ! 今募集しているグレムリン工学の教授枠志望者で、同じ事ができた方はいませんでした。世界二位を名乗ってもいいぐらいです!」
「は、はあ。しかし一度ですよ。偶然でしょう。そんなにおだてられても」
「仮に切削が偶然の賜物だとしても、アイデアは本物です。半田さん、あなたは自分で思っているよりずっとずっとすごいんです。是非、その知見を大学で教えてもらいたいのですが」
「いえ、そう言われましても、私は昔水道工事店に勤めていただけで。今回はたまたま、偶然、そこで得た知識が役に立ったというか、役立てようとしただけで」
退学覚悟で謝罪に来たはずが、話がとんでもない事になってきている。
怖気づいて辞退しようとする半田だったが、大日向教授に両手を握りしめられ、キラキラした目で熱心に説得され逃げられなくなる。
「今、あなたがグレムリンの専門家ではないのは重々承知です。いきなり完璧な授業をしろ、生徒を導けだなんて言いません。
でも、誰かがグレムリン工学に先鞭をつけなければいけない。誰にも真似できない個人の突出した技量に頼りきりではなく、ある程度の素養か熱意さえあれば誰でも模倣できる知識技術。つまり学問として、グレムリン工学を研究し、教え広めていかなければならないんです。
それができるとしたら、半田さん。あなたしかいない。私はそう確信しています」
「し、しかしですね。私が大学の教授にだなんて」
「大丈夫ですっ! ウチの大学に歴史なんてありません。生まれたての大学です。大学と一緒にゼロから育っていくぐらいのつもりで、気楽にやって下されば。どうしても無理だと感じられたら、いつでも辞めて頂いて構いませんから。いかがでしょう?」
「う……」
「お願い、できませんか?」
「わ、分かりました。やってみます。ただ、本当に期待はしないで下さいよ」
「ありがとうございます! 期待しないで欲しいのならしませんけど、信頼はさせてもらいますよ? 半田さんが最初は授業に興味無かったけど、興味を持って真面目に取り組むようになって下さった事、ちゃーんと分かってるんですから。教授のお仕事もそうなるって信じてます!」
「はは……」
普通ならお世辞にしか聞こえない言葉だが、大日向教授が言うと純粋な本音にしか聞こえない。
信頼には、応えたくなる。特に信頼が貴重な世界なら。
こうして半田作之助は、東京魔法大学グレムリン工学科の教授になった。