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君の知らない世界 

 ―2046年9月

 よく晴れた日の朝、ごく普通の一軒家の台所には香ばしい匂いが漂っていた。

 

 高校を卒業して20年ほど経った私は家庭をもった。

 決して有名ではないけれど、私は夢だった小説家として活動し、今は結婚もして3人の子供に恵まれた。


 「おはよ」

 「おはよう。ごはんできてるよ~」

 早朝、最初にリビングの扉を開けるのはいつも高校2年生の長女だ。


 「今日も早いね。朝練?」

 「うん。もうすぐ大会だからってみんな気合い入れちゃってさ」

 「ふふっ、そうなの。でも、そういうあなたもね」

 「ん」

 他人事のようにそう言いながらも、この子も毎朝ランニングを欠かさない。


 「おはよー!」

 「あら、今日はこっちも早いのね」

 朝だというのに元気よく走ってきたのは小学3年生の三女。本当に疲れを知らないのかと思うくらい毎日元気が良い。


 「今日何かあったっけ?」

 「ううん。でも、一番に学校に行くと先生に褒められるんだよ!」

 「へぇ~、それは嬉しいね」

 私は食卓に皿を並べながら三女の頭を撫でた。


 「ところであの子はまた寝坊かしら。今日は生徒会があるから早く行かないとって言ってたのに」

 「いつものことでしょ。そのうち慌てて起きてくるよ」

 長女は呆れ顔で食パンを一口食べる。


 そうしているうちに長女の予想通りバタバタと廊下を走る足音が聞こえてきた。


 「うわー寝坊した!!」

 

 「ほらね」

 

 次女はバンッと慌てて扉を開けて駆け寄ってくる。


 「お母さん、なんで起こしてくれなかったの!?」

 「起こしたよ、あと5分だけって言って出てこなかったのはあなたでしょ? もー」

 「う・・・、とにかくパンちょうだい!!」

 「はいはい」

 次女はそう言って食パンを咥えたまま制服に袖を通す。


 「ご馳走様でした。そろそろ行くよ」

 「私もー!」

 気づけば長女は支度を終えて鞄を肩に掛けていた。三女もそれに続くようにランドセルを背おい、玄関へと向かう。


 「あ、ちょっ、待って!」

 次女も慌ただしく髪をとかしながら靴を履いた。


 「お前ほんとに生徒会役員とかやれんの?」

 「失礼な! ちゃんと選挙で選ばれたんだよ!」

 「信じらんねぇ・・・」

 「お姉ちゃんすごーい!」

 

 そんな会話を交わしながら3人はいつものように玄関の扉を開ける。

 まだ夏の陽射しを残す陽光が差し込み、日常風景の中に神々しさが混ざっているような気がした。


 騒がしくも愛おしい。


 ごく普通のありふれた生活だけど、私はこの天使のような娘達に囲まれて、世界の誰よりも幸せだと思う。


 「それじゃあ行ってきます」

 「お母さん、いってきます!!」

 「いってきまーすっ!」


 「うん」


 私はそんなことを考えながら朝の光に包まれる3人に小さく手を振った。


 

 「いってらっしゃい、桐香、桜、恵」






       親友を救いに異世界に行った話 ――完――






これにて「親友を救いに異世界に行った話」は完結です。

最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。

私自身、小説を書くと言うこと自体が初めての経験で、読みづらい部分などあったかと思いますが、最後まで書き続けることができたのは読んでくださった皆様のおかげです。改めて感謝申し上げます。

またどこかでお会いしましょう。

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