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親友を救いに異世界に行った話  作者: 祭
鑑蟲天
48/70

迷い子

 ―兵舎講堂

 「さて、全員揃いましたね。」

 昨日私が紹介された講堂より少し狭い部屋で8人の兵士が円卓を囲んでいた。


 「昨日紹介がありましたが、本日から我々に仲間が加わります。」

 優しそうな糸目の青年は特殊先攻班の全員が揃ったのを確認して話を始める。


 「改めまして、私はカブラル国軍第九師団特殊先攻班班長クラウス=ボイズです。」

 「副班長のレア=ガードルだ。昨日ぶりだな、ははっ。」

 「フェルナンド=ネルラン。以後よろしく。」

 「ラリー=ガルシアです! よろしくお願いします!」

 「カド=タレスだよ~、よろしく!」

 「あ、えっと、ベティ=ルイス、です。よ、よろしくお願いします・・・。」

 皆各々に短い自己紹介をしていく。思ったよりも人数は少ないらしく、もともと6人だけの班だったらしい。


 「本日からお世話になります! マララ=アーベルです! よろしくお願いいたします!!」

 「サクラ。」 

 「あはは、元気があって良いですねアーベルさん。」

 「ま、気負いすぎるなよ。」

 マララは相変わらず緊張しているのか、堅い敬礼をしていた。


 「いや~すごいねサクラ! 初っ端からここに来れるなんて。何歳?」

 「17。」

 「おぉ~、俺の方が若い!」

 「そうですか。」

 そんなマララの様子を見ていると、私はカド=タレスに話しかけられた。


 「サクラ、声小さいね。」

 「だ、ダメだよカド君! 緊張してるんだよ、きっと!」

 「え? 緊張してるの?」

 「別に。」

 「してないのぉ!? 私の時は記憶飛ぶくらい緊張してたのに・・・。」

 そう言ってベティ=ルイスはか細い声で驚いていた。


 秘密裏に国敵を対処する遊撃部隊の最前線と聞いていたからギルバートの様な人ばかりかと思っていかが、どうやらそうでもないらしい。


 「まったく、騒がしいな。」

 「ネルランさんも混ざりたそうですけどね。」

 「黙れ。」

 「まあまあ、アイスブレイクはこれくらいで。本題に入りますよ。」

 班長のその一言で和気藹々とした雰囲気は一転、皆静かに着席する。

 

 「まずは現状の確認と課題です。」 

 班長はざっくりとした地図が書かれた黒板のようなものを指さし、話を切り出した。


 「本作戦での目標である’マルファス’はカブラル共和国と東方の隣国、プラータ王国との国境沿いで活動をしている賊の類いです。いや、だったと言った方が適切でしょう。」

 話しに合わせて地図の脇に補足を書き加えていく。

 

 「ほんの5、6年前まで’マルファス’は国境沿いの山脈のプラータ側に拠点を置き、ガル=ベンガードという男を中心とする山賊でした。それで、その一部の人間がカブラル側で略奪行為を行い、第五に検挙される、ということも少なくはなかったのですが、逆に言えばその程度で徐々にその頻度や規模は小さく庵なっていました。」

 「まあ、一時期は第五の連中もあいつら縄張りで警戒張ってたしな。ハイペース追い剥ぎとかやっても、しょっ引かれる人数の方が多けりゃ利益もない。」


 「はい。ベンガードももともと有力な豪傑というわけでもありませんでしたから、プラータ側でも同様であれば徐々に勢力が減退し、いずれ自然消滅もあり得るような規模感の組織でした。しかし、今から2年ほど前、突然その組織がまた活動を始めました。それも以前よりも人数も大胆さも増して、です。」

 「なるほど・・・。」

 ふと横を見るとマララはまた必死にメモを取りながら聞いていた。


 「ただ、それでけならまだ第五の管轄だったのですが、その規模を増して再発生した’マルファス’はこれまでと違っていて、山に入る者への追い剥ぎや人攫いだけでなく町や村への攻撃を仕掛けるようになったのです。」

 「・・・? でも、それくらいはアラク山賊団も似たようなものだったのでは?」

 ここまでの話では小規模の山賊が市民を積極的に襲っているという話だった。しかし、それは以前ギルドの依頼で相対したアラク山賊団も似たようなものだったはずだ。


 「ああ、クトル村周辺で活動している山賊ですね。確かに彼らも村への襲撃を行っているようでしたが、正直言ってクトル村は山間の小さな集落です。また、あの周辺の樹海は遭難者が多く、土地勘がないものが迂闊に踏み入れることができないのでそもそも治安が良くないのです。」

 「はぁ・・・。」

 「それと、’マルファス’が再び現れ、最初に襲ったのは交易の拠点の一つであるそれなり大きな町です。おかげでしばらくプラータとの物流が遮断されている状況です。」

 つまり、これまでは自然消滅していてもおかしくないような、たいして強大ではなかった山賊が突然勢力を拡大してそこそこ大きな町を襲ったという話だ。


 「そして、最後に避難した町の人々の話を聞いた第五曰く、『見たことのない武器を使用していた。』『賊の中にプラータの国章を身につけている者が居た』と。」

 「そ、まあ単にそいつがプラータで奪った衣服を着ていただけかもしれないけど、一応私たちにバトンタッチしたってところ。ただ、今のところはそうでもないみたいだけどね・・・。」

 なるほど、だんだん話の概要が分かってきた。


 「とりあえず2人はここまで大丈夫?」

 「はい! 万全です!」

 「はい。」


 「じゃあ次に・・・、ラリー君、報告お願いします。」

 「お任せください!」

 ラリー=ガルシアは陽気に敬礼をして、班長と場所を交代した。

 

 「ここまでの報告です! 現状の調査だとやはり’マルファス’のバックにはプラータが関わっている可能性が高いです。ここまで国境沿いで襲われた町や集落は3カ所、回数で言うと7回なのですが、いずれの痕跡も見たことないものばかりでした。」

 「・・・と言いますと?」

 「はい。一番最近に被害があった場所で見つけたのですが、特に損害が酷かった建物を見ると大砲で撃たれたように抉れていて、周囲には焼け焦げた形跡がありました。」

 

 「それでなんでプラ―タが関わってるって分かるんですか?」

 「大砲と言ったら基本固定砲。仮に砲身を台車に乗せて運ぶにしても砲弾と火薬も同時に運ぶなどあまりに効率が悪すぎる。」

 「そうですね。僕が思うに、ここで’マルファス’はおそらくプラータが開発した兵器の威力実験を行っている可能性があります。」

 「ほう・・・。」


 「過去2年間で’マルファス’が行った同様の襲撃は一定の周期で行われています。対照的に、国境沿いでの追い剥ぎや略奪はほとんど報告されていません。加えてプラータから同様の襲撃があったという報告は上層部から届いていません。これらの事実から推測するに’マルファス’はプラ―タが開発している兵器を試し、その対価として支援を受けていると考えるのが妥当でしょう!」

 ガルシアはそう興奮したようにバンッと黒板を叩いた。


 「なるほど。ラリー君、報告ありがとうございました。」

 班長はあくまで冷静にガルシアを席に戻すと、少し考えるような仕草をして、また続けた。


 「分かりました。では、今後の方針としては調査の継続と掃討作戦に向けた本格的な情報収集といきましょう。今日の報告は改めて僕から団長に伝えておきます。」

 「了解。」

 「了解です!」

 

 

 「あ、そしてアーベルさんとサクラさん2人は今日は被害のあった町に情報収集に言って貰って良いですか。」

 「2人で、ですか?」

 「はい。住民の方に話を聞いたり、些細なことでも良いので。」

 「はい! 承知しました!」

 班長はそれだけを告げ、この場は解散となった。


 +++


 ―被害のあった町

 カブラルとプラータの国境沿いにある山脈の麓に位置し、交易路となる山道の入り口となる町。確かにさっき聞いたとおり人通りが少なく、森に近い方に歩くほど建物は倒壊し、まるで戦争の跡のようであった。


 「酷い・・・、こんなことになってるなんて。」

 「・・・・・・。」

 「これじゃあ確かに物資の流れも悪くなるよね。1年前にバーリングもあんなことになっちゃったから、早くなんとかしないと。」

 「・・・そうですね。」

 マララはボロボロになった町並みを眺めながらそんなことを言っていた。 


 「とりあえずそこに居る人に話を聞きに行こう。」

 「・・・はい。」

 「すいませ~ん・・・・・・」


 私はマララが駆けていくのを後ろから見ていた。


 町の人と話しているマララを見ていると、昔ツヴァルスフィアで堕天使の情報を村人から聞いていたことを思い出した。ほんの1年くらい前のことのはずなのに遠い昔のような気がする。


 「・・・痛いな・・・・・・。」

 まだズキズキと痛む脇腹に触れる。

 でも、この傷は昨日と比べるとあり得ない速度で閉じていて、改めて私がもう普通の人間でないことを実感する。


 「サクラもこっち来て!」

 

 いつまでもこんなところで足踏みをしているわけにもいかない。


 「・・・? サクラ? 速くこっちに・・・・・・。」

 「すいません。ちょっと森の方に行ってきます。」

 「え!? なんで・・・、ってちょっと!?」

 私は町の外にある森の方へと向かった。


 そろそろ休むのはやめにしよう。兵士なったのはあくまで手段に過ぎない。ここまで来てそんなことに付き合う筋合いなんて・・・。

 「・・・何?」

 

 少しでも怠けないようにと刀を取り出し、森の中を歩いていると、草むらの方から物音が聞こえた。


 獣・・・? 若しくは’マルファス’の人間か。

 まあどっちでもいい。いずれにせよリハビリには好都合だ。


 私は音がした方向に草をかき分けると、少し開けた場所に出た。


 だが、そこに居たのは獣でも山賊でもなかった。


 「・・・死体?」

 1本の木の根元に項垂れるようにして座り込む1人の人間。ぐったりとしていて、死人を思わせる格好であったが、その予想とは裏腹に、それは私の方にゆっくりと顔を上げた。


 「た、助けてください・・・・・・。」


 か細い声でそう溢したのは綺麗な銀髪に翡翠色の瞳をした1人の少女だった。



 


お読み頂き、ありがとうございます。

そして、あけましておめでとうございます。


次回は1/ 12投稿予定です。

本年もよろしお願いいたします。

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