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第十三話:忍び寄る魔の手

目覚めると女の子になっちゃって、しかも同じベッドに超美人の裸シャツお姉さんがいる!?

夢のようなシュチュエーションなのに肝心のマグナムが無くなっちゃた主人公に明日はあるのか!?

 

 歩は見知らぬ天所を見上げていた。



「あ、気がついた!」


「あゆみお姉ちゃん大丈夫?」


「あゆみちゃん、のぼせちゃったの??」


「水飲むです!」


「まぁまぁ、あゆみ大丈夫ですの?」


「いやいやいや、一時はどうなるかと心配したよマイハニー」


 どうやら旅館の部屋に戻ってきて布団に寝かされていたようだ。

 アイナが歩に向かって内輪で緩やかな風を送ってくれている。

 歩は起き上がろうとするも、それをアイナに止められる。


「まだ無理しちゃだめよ。のぼせたみたいだけど、いきなり動いちゃだめよ」


「あの女は?」


 歩はそう言うもみんなして首をかしげる。

 その様子を見て歩はばっと起き上がる。



「あの女だよ! あいつは、あいつは……くそ、思い出せない……あの夢に出てきたあいつは!!」



「ちょ、ちょっと落ち着いてよあゆみちゃん!」


 取り乱す歩にアイナは背中をさすりながら冷たいタオルを頬に当ててやる。

 歩はその冷たさにビクッとなって初めてアイナを目にする。

 その瞳には恐怖の色が見て取れた。



「あゆみちゃん、落ちついて。何があったの?」


「……夢が、いや、分からない。あの夢が、あいつが!!」


 しかし歩は頭を抱えてそう言う。

 その様子にみんな心配をするも、歩が言っている事を理解できる者は誰もいない。

 だが歩は震えている。

 何かに恐怖している。



「とにかく、今日はもうゆっくり休みなさい。きっとはしゃぎすぎて疲れているのよ。みんな心配してくれてありがとう。あゆみちゃんの事は私が見るから大丈夫よ」


 アイナがそう言ってみんなに安心するように言う。

 愛菜も恵菜も何か言いたそうだが、こう言うのは確かに年長者であるアイナに任せる方がいい。


「何か必要な事があったら言ってね、あゆみお姉ちゃん」


「あゆみちゃん、今はゆっくり休んでね」


 二人は心配しながら向こうへ行くが、アイナは小声で歩に聞く。




「あゆみちゃん、落ちついたら詳しく教えてくれるかしら?」


「アイナ、あれは……ちくしょう、思い出せねぇ……」


 歩はそう言ってばったりと布団に倒れる。

 そして落ち着いてあの女を思い出す。



 その女は確かに夢に出てきた女だった。

 漆黒の長い黒髪、死人ではないかと思う程の白い肌。

 その黒い瞳の中に赤く怪しく光を灯し、はっと息を飲む程に美しいが、その美しさは何故か死を連想させる。

 まるで中二病ではないかというよなゴスロリチックなドレスを身にまとっているが、それはなぜか死神を連想させるようなデザインだった。


 思い返すだけで震えがくる。


 しかしその彼女は歩を知っていて、そして歩にしか見えなかった。

 歩は大きく深呼吸をしてからアイナに言う。


「あの女は…… 確か、あの女は俺にしか見えないと言っていた。それにあの女は俺の見た夢に出て来ていた。どんな夢かは忘れたけど、いやな夢だった事だけは覚えている…… それが、俺の前に現れたんだ……」

   

「夢の中の女の人?」


 アイナが確認するように歩に聞くと歩は黙ってうなずく。

 そしてまだ少し震えていた。


「夢の中に出てきた女性が、あゆみちゃんにしか見えずにあゆみちゃんの前に現れた、って事で良いのね?」


「……ああ」


 アイナは歩のその言葉を聞いてしばし黙り込む。


 未来の世界で歩が特異点となり、そこから異界へとの繋がる門となる。

 当時、アイナは高校生。

 歩がいきなり体調を崩し、病院へと運ばれたと聞いて慌ててそこへ向かう途中にあの化け物たちが現れた。

 しかし、当時の歩が体調を崩す前に何か言っていたような気がする。



「少し、アルファたちと確認する事があるわね…… でもとにかく今はあゆみちゃんはゆっくりと休んで。私たちもいろいろ調べてみるから」


「うん……」


 アイナはそう言ってそっと歩の手に自分の手を重ねる。

 そして優しく囁くように言う。


「大丈夫、未来は変えられる。その為に私はきたんだから。そして私の命に代えてもお兄ちゃんは私が守る。絶対にね」


「アイナ……」


 そう言って歩のおでこにそっとキスをする。

 あまりに自然なそれに歩はキスされてから驚く。



「ちょ、アイナ……」


「ふふふ、もう悪夢を見なくなるおまじないよ♡ 大丈夫、今後毎晩してあげるからね♡ それとも唇にした方がいいかな?」


「ふっ////////!?」


 からからと笑うアイナに歩は赤くなる。


 

「とにかく今はゆっくり休んでね、あゆみちゃん」



 歩はアイナにそう言われ、ぶつぶつ言いながら目をつぶるのだった。




 * * * * *



「お世話になりました」


「「「「なりました!」」」」



 翌日旅館をチェックアウトする。

 歩もよく休んだおかげで体調も戻り、無事帰宅できそうだった。

 

 大雲寺魔理沙や、土岐速見凛がリムジンで送ると言い出したが、お土産を買ったりしながら帰りたいので丁重に断った。


 ただ、真理様も凛もアイナとアドレス交換はしっかりとしていたようだが。




「それじゃぁ、お土産屋さんを見ながら帰りましょうか?」


 アイナにそう言われみんな頷きながら歩を心配する。



「あゆみお姉ちゃん、大丈夫そう?」


「あゆみちゃん、荷物持つよ」


「あ、私も荷物持つの手伝うです!」



 みんなのその言葉に歩は感謝しながら言う。


「ありがとう、でももう大丈夫だよ」


 そう言ってぐっと力こぶを作る真似をする。



「もう元気、元気。ごめんね心配かけて」


「無理はしないでね、あゆみちゃん」


「あゆみお姉ちゃん、何か有ったら私に言ってね」


「なんでも手伝うです」



 それでもみんなは歩を気遣う。


「うん、ありがとう。それよりお土産見に行こうよ!」


 わざと元気そうにそう言いながら歩は先頭になって歩き出すのだった。



 * * *



「お饅頭は父さんと母さん向けでっと」



 お土産屋さんでお土産を見ている歩。

 すると、その前に店員さんがやって来る。



「お客様、こちらの商品などは如何でしょうか?」


 そう言って歩の目の前にストップウォッチの様な物を差し出す。

 それはどこかで見たよ様なもので、店員はボタンを押すと画面が表示される。


 その画面には一直線の線を中心に波の様なモノが青とピンク色で対照的に表示されている。

 歩は驚き顔を上げてその店員を見る。



「これって…… ってメサーナ!?」



「静かに。お前は順調に女体化しているが、やはり奴が来たようだ…… これを見ろ」


 そう言ってメサーナはボタンをもう一度押すと、今度はオレンジ色の波が現れる。

 その波は青い波に重なるようであったが、途中からピンク色の波に近づき始めていた。



「これはここ数日に波に変化が起こった事を示す。何があった?」


「なにがって、メサーナあんた一体……」


「状況が変わったアルよ」


 そう言っていつの間にかもう一人の店員が歩の後ろに来ていた。



「マオ!?」


「静かにするアルね。こっちへ来るアルよ」




 マオはそう言って歩の背中に何か固いものを押し付ける。

 歩は仕方なくマオたちに連れられて、そっと店の裏口へと連れていかれるのだった。 



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