確率100%の「ロシアンルーレット」
目の前に5色の卵がある。
わたしはこの卵に運命を賭けることにした。
「ねぇねぇ! この卵の中に色んなの入れてみたんだけど、やってみない!?
放課後、わたしがそう言うといつもの5人が集まる。
用意したのはイースターで使っているような色とりどりに塗られた卵だ。
わたしの目論見通りなら「100%」のはず。
それでもとても緊張した。
「わぁ! ミドリ、面白そう! ジャンケンで勝った人から取っていこう!」
ヒトミはそう言ってテンションを上げながら真っ先に来た。ムードメーカーなので彼女の言うことには皆付いてきた
1回目のジャンケンではヒトミが勝った。赤いトンボ模様の卵を取った。
「それじゃ、開けるね! えっと……あれ? これ茹で卵だよ!」
笑い声が起きた。2回目のジャンケンではカエデが勝った。黄色い縞々の模様の卵を取った。
「それじゃ、もらいまーす! え……割っても割っても! 卵が!」
マトリョーシカのように入れるのはちょっと大変だったけど、驚きながら喜んでくれたようで良かった。
3回目のジャンケンではヒトミが勝った。緑色の草原を描いた卵を取った。
「うわぁ……何が入ってるのかドキドキするね――えっ! 何これっ!」
ドライアイスを入れておいたので(触られないように保護してある)辺りに白い靄が立ち込めた。
「スゲェ演出だな……お、次は俺が勝ったか」
カズキは黒いギザギザの卵を手にする。
「ピヨ……」
「は? ヒヨコぉ?」
カズキはパニクってる。
「カズキィ、よく見てよ! おもちゃだよ!」
「アハハハハ!」
皆爆笑した。でもわたしは同時に最後の紫の卵に目を落とし、手が震えたのが分かった。
「俺が最後か。さて開けるか。あれ? 手紙が入ってる。『ずっとシユウのことが好きでした。良ければお返事ください』」
シユウが読み上げると私は耳まで真っ赤になっているのが分かった。
「その……ミドリ。付き合おうか」
ヒュー! と聞いていた男子が口笛を吹き、あたりで拍手が起きる。
「おめでとうミドリ! でも、よくこんなロシアンルーレットみたいなことやったね……アタシたちやカズキが引いたらどうしたの?」
「それは大丈夫、みんなの好きな色知ってたから。100%のロシアンルーレットだったんだ。でも緊張したぁ~!」
「ったく、ミドリ。それなら素直に告白しろよな」
「遊びならシユウに断られても傷が浅くて済むかなって……」
「お前らしいな。そこが良いところだと思うけどな」
「エヘヘ、改めてよろしくねっ!」
殺伐としたエッセイに明日から戻ります。




