''推し活''のすすめ
更新遅れて申し訳ないです。今回からやっと、奏やNanashiのメンバーが出てき始めます。長かったー!
episode 4 うた
「ここに来て。」
3度目の返信はそんな言葉と、一緒に添えられた地図だった。
凪紗はあれから、毎日、おはようから始まり、おやすみはもちろん、色々なことを一方的にメールで質問し続けた。バンドを始めたきっかけや、好きなNanashiの曲、好きな色、嫌いな食べ物。
凪紗は南野奏という人間のことをもっと深くまで知りたかった。
しかし、どの質問に対しても返事は返ってこなかった。
そんな奏の最初の返信は「奏でいいよ」だった。凪紗が「南野奏さん」と呼び続けていたことに対して言ったのだろう。凪紗には、呼び方を変えただけで、ぐっと距離が縮まった気がして、嬉しかった。そして2度目の返信は、「名前なんて読むの?」という、奏からの初めての質問だった。おそらく連絡先には、感じで一ノ瀬凪紗と表示されており、確認のため聞いてくれたのだろう。「いちのせなぎさ です。」と返すと、そっかという素っ気ない返事が返ってきた。しかし凪紗にとっては推しに名前を覚えてもらうという一大事だった。また距離がぐっと縮まった気がして、凪紗は生きてきた17年の中で、1番どきどきした。彼女にとっては、何十回も言われてきた、好き、かわいい、よりも、推しからの、そっか、の方が何百倍も価値のあるものだった。
そして3度目の返信。
奏から送られてきた地図に従って歩き続けると、街中にあるビルに辿り着いた。凪紗は戸惑いながらも中に入ると、何となく見なれた人が柱に寄りかかって、こちらに手を振っていた。凪紗は急いで彼女の元へ向かう。
「ゆいゆ、北原さん!あの、ここは?」
「あれ、まだ奏に聞いてなかったの?……あいつ、ちゃんと言うって言ってたのに。」
「とりあえず歩きながら説明するから着いてきて。」
そう言ってゆいゆいこと、北原結衣はビルの奥の方へと歩き始めた。
エレベーターの前まで行き、ボタンを結衣が押したところでようやく彼女は口を開いた。
「えっとね、凪紗ちゃんにここに来てもらったのはね、ずばり歌って欲しいの、奏と。だからほら、この前奏が言ったでしょ、歌声くれない?って。」
「えっ、いや。つまり、どういう」
凪紗には突然のことすぎて、理解が追いつかなかった。
「新曲、何曲か出す予定でね、もうほぼ曲としてはどれも完成してるんだけど、そのうちの1曲がデュエット曲でね。そのデュエットの女性パートのとこ、凪紗ちゃんに歌って欲しいの。」
凪紗には、やはりよく理解できなかった。自分が推しである、南野奏とデュエット?よく分からない。だってそもそも、、
「私、本当にただの高校生で、音楽の知識なんか全然ないですし、、」
「正直ね、私達も反対したんだ。ごめんね、でもやっぱりここまで積み上げてきたものがNanashiにはあって、だから全ての曲を納得が行くようにしたいの。それもNanashiにとって、初めてのデュエット曲。奏がデュエット嫌いだから、最後になるかもしれないしね。そう考えると、相手はちゃんと音楽の知識とかがあって、ある程度有名な人がいいってどうしても思っちゃう。」
当たり前だ、凪紗も結衣と同じ考えだった。
「じゃあ、なんで、、、」
───なんで、私を呼んだの?
結衣は、眉をひそめて笑った。
「どれだけ知名度が高くて、どれだけ歌が上手い人の名前を出しても、絶対に首を縦に振らなかったあの奏が、『 あの子にしよう。』って言ったんだよ。ほんとに、凪紗ちゃん何者?ってメンバーで話題になったんだからね。」
「奏…さんが、?」
予想外な返答が返ってきて凪紗はさらに戸惑う。てっきりビジュアルだけでスタッフさんか誰かが選んだのかと思っていた。
「なんで奏が凪紗ちゃんを選んだのかは分からないけどさ、とにかく私たちは奏を信じるよ。」
ゆいゆいは真っ直ぐ前を見ていた。
「えっと、じゃあ今日は私は何をしに来たのでしょう?」
「テストだよ。歌声を聞いたことがない状態では、いくら奏の頼みでも通らないからね。一応どんなもんか、確認するための、抜き打ちテストみたいなやつかな。」
そんなことを話している間に、エレベーターは随分高いところで止まった。エレベーターを降り、スタスタと先を歩き出したゆいゆいの後に凪紗はついて行った。
「ここ」
といい、結衣はドアの前で立ち止まった。
ふぅ、と深呼吸をし凪紗がそのドアを開けると中には、メイキング映像でよく見るレコーディングのセットが置かれていた。そして、透明なガラスで部屋が隔てられており、そのガラスの先には奏や、見たことの無い大人が何人か座っていた。みんなこちらを真剣な眼差しで見つめている。恐る恐る、その部屋へと凪紗は足を踏み入れた。
凪紗の体に緊張が走る。この状況下でようやく凪紗は、自分に置かれた役割の重要性を知った。
「ヘッドフォンつけて」
そんなガラスの向こうからの奏の支持に従うと同時に、凪紗にはまた奏との距離が縮まったような、そんな気がした。
私にもこんなこと起きないかなー、と返す思いながら書いてます。もはや自己満です。誤字、脱字、その他文法で気になるところあったら、どんどんコメントお願いします。また次話の更新遅れるかも、、、。