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''推し活''のすすめ  作者: 雨宮ほたる
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“推し活”のすすめ

コメントを読んでいたであろう凪紗が口を開く。

「……対面での謝罪、……常識……。」

凪紗も流石に気づき始めているのであろう。自分に今、何が求められているのか。これはまずいと4人は目を合わせる。今すぐにでも凪紗を止めなければ。

「私、百瀬さんのところ行ってくる!!!連絡だけでもとらないと!」

結が勢いよく立ち上がり、防音室から走り出ていく。

「……分かりました。皆さんにはもう一度、面と向かった状態で、謝罪をさせていただきたいです。少しだけ、待っていてください。」

奏たちの心配とは裏腹に、凪紗は既に顔を出すことへの決意を決めていた。よく冷静になり、第三者から客観的に見れば、凪紗が起こした今回の問題はそこまで大きなものではない。ライブ配信を視聴している人達の中で考えている、1番の責められるべきことはプレイヤーを軽んじるような発言だが、それ自身も全くの嘘であり、凪紗に責められるべき様なことはひとつもなかった。強いて言うのならば、連絡先を交換しようと奏に頼んだことだろうか、しかしそれも、交換を許可した奏の責任だと言えるだろう。しかし、言葉とは怖いもので、自分は何一つ悪いことをしていなくても、多くの人から、「お前が悪いんだ」とか「お前の責任だ」なんて言われてしまうと、本当に自分が悪いことをしたと思ってしまう、これが洗脳と言うやつなのだろう。

「……お、おい……。でも凪紗ってそんな人の事素直に信じる、従順な性格じゃないだろ。人に顔出せって言われて、はいって受け入れる感じだっけ?どちらかと言えば、人間不信で疑り深い感じじゃなかった?ねえ!!」

陸が焦りを隠すことなく、早口で喋る。確かに陸の話にはうなずける、と奏も思った。凪紗は基本的に人を素直に信じるタイプではなかったし、顔をSNSに晒すなどということは、1番毛嫌いしているような様子だった。そんな凪紗が「顔を出して対面で謝ってくれたら許す」という言葉をそう易々と信じるわけが無い、陸はそう考えているのだろう。

でも……

「でも、凪紗は顔出しすると思う。」

「「え?」」

悠貴の言葉に奏と陸が反応する。

「凪紗がまだボイトレとかしてる頃、2人で話す機会があって、聞いたことがあるんだよ、どうしてうちのバンドが好きなの?って。どうせ顔が好きとか、歌詞が刺さるとか、奏が好きとか、あとは、奏に助けてもらったからとか?そんな薄っぺらい理由だろうなって思ってさ。そんな軽い気持ちのやつと一緒に仕事は出来ないから、牽制のつもりだったんだけど……凪紗はケロッとした顔で、こう言ったんだよ。「私と似てるから」って。「Nanashiの音楽って明るいリズムに乗せて暗いこと歌ってて、それが笑顔とか取り繕って生きてる私みたいだなって思ったの。でもね、同時に、すっごく綺麗だなって思った。取り繕ってる明るさが、すごく綺麗だって。私今まで、心の中では人の事下に見て、自分のことも蔑んで、地球滅亡しちゃえとか思ってるのを隠すように、表面上では必死に笑顔作って、嫌われないようにビクビクして、空気読んでる自分、大っ嫌いだったの。でも、Nanashiのおかげで、こんな風に生きるのも悪くないかなぁって、いつの間にか、生きる理由になってた。バカみたいな理由だよね。笑っていいよ?」って困ったように笑ってた。俺この時さ、奏が俺をバンドに誘った時のこと思い出してさ、「自分みたいに生きる理由探してる人に、その理由与えられるような曲作りたい。寄り添えるような、バンド作りたい。」って、俺は奏にバンド誘われたなって。こんな回りくどい嫌がらせして、必死に奏の大事なもの壊そうとして、凪紗にも意味もなくイライラしてたけど、多分それ全部ただの嫉妬。凪紗に理由聞いて、俺の方がずっと奏のそばにいて支えてきたのに、凪紗の方が奏の気持ちちゃんと汲み取ってて、凪紗には敵わないなって、多分それで嫉妬した。凪紗にはNanashiへの思い、敵わないなって。だから凪紗は自分の生きる理由、守ると思う。死んでも守ると思う。そのくらい、バンドのこと思ってくれてるって、ちょっとしか話してない俺にも分かる。……ずっと傍で見てきた奏も、分かってるんじゃない?」

悠貴は目を細めて奏に問いかける。つられて奏も目を細める。

─────確かに凪紗は顔出しなんて絶対しないだろう。顔をSNSに晒すくらいなら死んだ方がマシくらいに思っているだろう。でも……

「そうだな。凪紗は俺達のこと守るだろうよ、死んでもね。だから、俺達も凪紗のこと守らないとな。」

フッと奏と悠貴が笑う。

「……え、じゃあ俺は凪紗のことあんまわかってなかったってこと……!?なんだよ!あいつ表情筋硬いし、そんな俺達のこと想ってくれてるとか知らねーよ!言えよ!!」

「「それは陸が鈍いんだよ。」」

「なんだよ!お前らが鋭すぎるんじゃねーの。」

3人で笑い合う。

─────お前が死んでも俺らを守ろうとするなら、上等だ。俺も、お前を死んでも守るよ。大袈裟だけどな。


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