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''推し活''のすすめ  作者: 雨宮ほたる
29/41

“推し活”のすすめ

episode10 正体


百瀬さんが見せたパソコンの画面には、”ナナ”のアイコンが中央にある薄暗い画面つまり、インスタのライブ配信の画面だった。視聴者数は13.5万人。この人数が集まるのも、今Nanashiの炎上により注目の的となっている謎の存在が急にインスタライブを始めたことを考えるとおかしくは無い数字だ。

「これっ……!!いつから!?」

奏が焦りながら聞く。

「ついさっき始まったところだ。まだ何もアクションはないが、これはマズい気が」

「皆さん、初めまして。Nanaです。」

百瀬さんの言葉を遮ったのは、パソコンの中からの音声だった。透き通った綺麗な声、久しぶりに聞いたその声は、こんな状況でも、奏の心を少し温かくした

「こんなにも多くの方に集まって頂き、ありがとうございます。そして、この度はお騒がせしてしまい、申し訳ありません。playerを始めとするすべての方々にお詫び申し上げます。今出回っている動画に関して、皆さんが抱いている私への不満、疑念、不安に関しまして、少しでも皆さんがこれからも安心して彼らの、Nanashiの活動を見守っていけるように私ができることを考え、思いついたのがこのような形で皆さんの実際の声を聞き、お答えできそうなことにはできる限り答えようということです。一時間ほど続けようと考えていますので、その間にコメント灘をよろしくお願いします。」

凪紗の話し方に迷いは感じられなかった。その場にいた誰もが、彼女が色々試行錯誤したうえでたどり着いた答えなのだと理解することは容易かった。そして何より、

「凪紗、敬語とか改まったしゃべり方苦手なのかと思ってたけど、すごく丁寧にしゃべっているわね。」

そう結衣がつぶやく。そう、凪紗はお世辞にも、賢い方だとは言えなかった。それはもちろん彼女がこれまで過ごしてきた環境や境遇あってのものであり、仕方がないものであるのだろうと理解はしていたが。

「そうだよな。あいつ俺たちと出会ってすぐのころは、かしこまり過ぎてよくわからないような言葉使って話したりしてたもんな。」

陸もそれを聞いて笑う。ただ奏や百瀬さんの顔は強張ったままだった。

「だからこそだ。ぼろが出そうで一時間も見てはいられないな。奏、どうする?止めに行くか?」

奏は画面を見る。これだけの視聴者がいるのだから、当然質問も絶えず寄せられている。

「そうしたいのはやまやまだけど、第一どこでこのライブ配信をしているのかが特定できないと話にならない。それに今止めれば、より世間からの風当たりは強くなりそうだ。もう少し様子を見るか。」

「いざというときに止めに入れるよう、せめてどこから配信をしているかくらいは知っておきたいが、声だけじゃどうにもな…。凪紗の家の場所は?」

百瀬さんがメンバーに目をやるが全員が首を振る。個々の近所だと話しているのは聞いたことがあるが、どこに住んでいるかを知っている人は誰もいなかった。

百瀬さんはため息交じりに、

「わかった、一応凪紗との仕事が決まった時に契約書を書いてもらってる。そこに個人情報の記入もあったからな。それを見てこよう。…ちゃんとそれ、見といてくれ。」

と言い残し、部屋を出て行った。

4人はパソコンへ視線を移す。

「まずは、私がどうして彼らと一緒にお仕事をさせていただくことになったのか、その経緯を話したいと思います。」

そこから凪紗は最初に出会ったあのファミレスでの出来事、そこからメンバーに誘われて、一緒に仕事をすることになった流れを事細かに話した。しかし凪紗は、大きな嘘を交えながら話していた。


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