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''推し活''のすすめ  作者: 雨宮ほたる
16/41

’’推し活’’のすすめ

episode 7  交差


 凪紗が帰った後も、気まずい雰囲気は続いていた。しかしお客から注目が集まっている事を考えると、一刻も早くこの場を去った方がいいことに間違いはなかった。

「いったん出るか。」

どうやら考えていたことは全員同じだったらしく、百瀬さんの言葉に4人は頷きだけして、席を離れた。


外に停められていた車に乗りこむと、また沈黙が流れた。どこに向かうか、そんなこと話し合いもしなかったが、なんとなく全員が楽器のある、あのレコーディング部屋へ向かうのだろうと考えていた。


ビルに入り、社員証をかざしゲートをくぐる。エレベーターに乗り、部屋に入ろうとした時、

───ガッッ

鈍い音が部屋全体に響き渡り、奏が倒れる。そしてその正面には、振り下げた拳をさらに強く握っている悠貴の姿があった。何が起きたか、まだ把握出来ていない様な奏に、悠貴は近ずき容赦なくその胸ぐらを掴む。あとなら来ていた結と陸が慌てて止めに入るが、悠貴は見向きもしない。

「お前、自分が何したかわかってんのか!?あんな人目に付くところで、今までずっと応援してきてくれたファンを貶すような発言、何年この活動してんだよ!あれが動画でも撮られて拡散されてみろ!俺たちの今までの努力は全部水の泡だ!Nanashiはお前一人のバンドじゃない、俺”ら”のバンドだ!確かにここまで来れたのはお前の努力や才能のおかげかもしれない。負担も確実にお前に偏ってる。ここまでバンドをデカくしてくれたことにも、感謝してる。でもな、最近のお前は傲慢だった。このバンドに俺らは人生掛けてんだよ!」

「っ!それは、、、」

奏は思わず目を逸らした。

奏と悠貴は小学校からの幼なじみだ。もしかしたらこれまでの人生の中で、両親よりも、お互いに長い時間を過ごしているかもしれない。だからこそ、奏は悠貴にだけはなんでも見抜かれてしまっているような気がしていた。

そんな奏の様子を見て、悠貴は掴んでいた奏の服を離し、奏の隣に腰を下ろした。

「、、、あんまりこういうこと、言いたくなかったし、別に俺も言及するつもりなかったけど、凪紗ちゃん、あの子を選んだ理由は歌声だけじゃないだろ?」

「、、、違う。俺はただ歌声が綺麗だと思って。」

「奏、お前俺に1回でも隠し事出来たことあったか?歌声が綺麗な人なら別にあんな素人の高校生、それも俺らのファンを選ぶ必要はなかったはずだろ。リスクが大きすぎるからな。ファンとのデュエットなんて、リアコが多い俺らの界隈は荒れるに決まってるし、話題性も売れてる人にオファーした方が作れた。し、お前がそれに気付かないはずがない。それでも、お前はあの子を選んだ。その理由はなんだ?」

図星をつかれて、奏は黙る。悠貴の言っていることは何一つ間違いってなかった。

───フッ

やっぱり、こいつには隠し事は出来ないなと改めて痛感し、思わず笑いがこぼれる。

「あー、もう。ほんとに昔からなんでお前には嘘が通用しないんだ?それも、お前俺が凪紗を選んだ本当の理由、わかってんだろ。」

悠貴も笑みをこぼしながら答える。

「まあ?何年一緒にいると思ってんだよ。」

「ごめん、確かにここ最近の俺は1人で突っ走ってた。お前らがちゃんと着いてきてくれて、支えてくれて、それに甘えてた。でも、そうだよな。Nanashiは俺らのバンドだ。ちゃんと話すよ。」

───”俺らのバンド”か

バンド結成当初から、自分がみんなを巻き込んで始めたから、という理由でメンバーよりも1歩先を進んできた奏にとってその響きは新しく、でも心地よく、弱さを見せてもいいと思わせた。

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