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''推し活''のすすめ  作者: 雨宮ほたる
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’’推し活’’のすすめ

''推し''とは。

アイドルや俳優などのイチオシのメンバーを指した言葉。

「好き」というよりも、強い支持、憧れなどを示す。

最近では、''推し活''というものが流行り、推しのグッズを買ったり、ライブに行ったりなどして推しにお金を費やす、いわゆる貢ぐ人が増えている。


あなたにとって、推しとはどんな存在だろうか。

推しに貢ぎ、その見返りとして何を望むだろうか。

推しの幸せを願うだけ?


そんなの、私は耐えられなかった。


推しと一つになりたかった。

心も体も繋がりたかった。

あなたの、トクベツになりたかった。

私は推しに、

強く依存、

強依存(きょういぞん)した。



episode 0 愛


 高校一年生のクリスマス、ギラギラと光る街を私は1人、その眩しさに下を向き、早足で家へと向かっていた。どこを見ても、カップル、友達、家族。そんな幸せそうな顔をしている人たちと、その眩しい笑顔を、必要ないほど彩るイルミネーションとクリスマスツリー。

 私はバイトで割った皿を片付ける時に切ってしまった薬指の傷を抑えながら、あちこちで流れる音楽に耳を傾ける。愛だの恋だの、よく分からない言葉を、軽快なリズムに乗せて、(うた)っている。たまに聞こえてくる、少し落ち着いたリズムの音楽は、失恋がどうの、会いたいだの、忘れられないだの、、、

───あほらしい

人はある時、人を好きになる。

そして、その人に一方的な愛を注ぎ続ける。

そのうち多くの人は見返りを求める。

あなたの好きという気持ちが、あなたからの愛が、あなたのトクベツが、欲しいと。

もし相手が、それを受け入れ、注がれ続けた愛への代償を払う、もしくは相手も同じように、見返りを求め、愛を注ぎ続けていた時のみ、2人は対等な立場となり、いわゆる恋人となる。

ただ、恋人が対等な立場で居続けるには、同じくらいの見返りを与え続けなければいけない。

どちらかが見返りを与え続けられなくなったり、求めていたものと違う見返りを与えられたりする、いわゆるすれ違いをきっかけに別れに踏みきることが多々ある。

つまり、恋人とは共依存なのである。

お互いに同じくらい依存をするからこそ、恋人は成り立つのであり、その大きさや形が違うのに、依存を続けるとそれは、(いびつ)な愛へと変化する。

私は誰かと共依存する気なんてさらさらないし、まして歪な愛を注ぐのも注がれるのも、もううんざりだ。私は、正しい愛のカタチに触れたことがなかった。

父も母も愛し方が下手だった。彼らは一方的に愛することしか出来ない人達だった。

決して愛に対して見返りを求めなかった。

それもひとつの歪な愛の形であろう。

私は歪な愛を注がれ、ここまで育ってきた。

正しい愛し方など、分かるはずがない。

だから私は、人を愛さない。

まして、見返りのない、一方的な愛など、、。

そんな、ひねくれた事を考えながら私は下を向き、できるだけ耳を閉ざしながら、歩き続けた。







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