『魔法・魔術論』 補足 魔法陣、魔法の杖について
『魔法・魔術論』に於いて、魔法と魔術の違い、魔法使いと魔術師の違いをはじめとして、色々と書き並べて参りましたが、その中で、魔法陣やシンボルなどについての説明をしておりませんでしたので、ここに補足として投稿させて頂きました。
他、思い付くままに、魔法魔術関連のあれやこれやを書いて参ります。
☆魔法陣
現代のファンタジー作品に於いては、魔法円という言葉より、魔法陣の方が有名だと思います。
ですが、この二つは本質的には別物で、所謂”魔法陣”は日本独自の物です。
先ず、魔法陣の元となった、魔法円について。
その次に、”魔”のシンボル、シジルについて。
最後に、現代ファンタジーに於ける魔法陣について書いていきます。
○魔法円(magic circle)
魔術を行使する時、術者が描く円形を基本とした図形。
通常は杖で地面に描かれますが、神殿の床に常設の魔法円が彫り込まれていたり、魔法円の描かれたカーペットがあったりもします。
基本的に、術者を守るための結界であり、召喚、喚起された”魔”はこの内側の存在に干渉する事ができません。
これ自体が破棄術に近い存在です。
この中にいる限り、術者が自分の術によってダメージを受ける事はありません。
例外として、祈願術に於いては、この魔法円の内側、厳密に言えば術者の内側に”魔”が降りてくると言われています。
個人的には、”入りきらない”だろうと思いますので、”魔”は天界や魔界に類する場所から、円の内側の術者に接続された状態になり、言葉を交わしているのではないかと考えています。
祈願術の場合でも、魔法円が外部からの接触を妨げ、術者を守る物である事に変わりはありません。
古い時代の魔術師達は、杖でざっと描いていたようですが、後になると中央にナイフを突き立てて紐を張り、正確な円形を書くようになりました。
ですが、最近は、わざわざ描く必要は無いという事になったらしいです。
なんでも、「魔法円なんか無くたって、心に魔法円があるなら、それこそが真実の魔法円なんだ」そうですよ。
図形としては、二重円の内側に、五芒星や六芒星などを配した物がよく使われています。
二重の円の間にヘブライ文字やルーン文字などで”魔”の名前や祈願文、場合によっては四方の守護者、四大元素、十二星座の印章などが書かれています。
よく使われる星形図形に関して、下にまとめます。
五芒星(ペンタグラム)
日本では星形と呼ばれていますが、ここでは星その物を表してる訳ではありません。
五大惑星、もしくは四大元素に”霊”を加えた五元素を表している場合が多いです。
キリスト教世界では上下逆の五芒星は悪魔崇拝を表しているとされます。
六芒星(ヘキサグラム)
一般的には正三角形を二つ、上下逆さに重ねた図形です。
他に、三角形の底辺部分を無くし、右上と左下、左上と右下をつなげた一筆書きの六芒星”クロウリーの六芒星”も存在します。
魔術的には”四方と上下”を表していますが、古代イスラエルの王、ダビデを象徴している場合もあります。
その”ダビデの星”はヘブライ語のダビデ、DVDの二つのDを図案化した物ですが、Dが三角形なのはギリシア文字のΔで、ヘブライ文字のダレットとは違います。
「ダビデの軍の盾に描かれていた」と紹介される場合もありますが、厳密には間違いで、十七世紀にユダヤ人を象徴する印章として「ダビデ軍が盾に描いていたのはこんな図形では無いか」と創作された物です。
ダビデ王は、悪魔を使役したというソロモン王の父親で、六芒星を円で囲ったシンボルを”ソロモンの印”とも言います。
七芒星(ヘプタグラム)
五芒星と同じ、二つ隣の頂点に線を引く物と、三つ隣の頂点に線を引く物があります。
三つ隣りの方が刺々しくて格好が良いですが、魔法円で使われるのは二つ隣の方が多いと思います。
中には二種類の七芒星を重ねて描いた物もあります。
日月と五大惑星を表した物で、七芒の各頂点の先か、角の内側に日月と惑星の印章が描かれます。
八芒星(オクタグラム)
四角形が二つの物と、頂点が八つある一筆書きの物とが存在します。
魔法円に描かれるのは、四角形が二つの方が多いでしょうか。
一つの四角形が春分・夏至・秋分・冬至を表し、もう一つが立春・立夏・立秋・立冬を表す、簡単に言えば一年を表現した図形です。
もしくは方角、八方位を表した図形です。
私見ですが、前者は時間的に、後者は空間的に、どちらも世界を表しているのではないかと思います。
以上を含めて、三角形や四角形、もしくは、それらを複数個重ねたり並べたりした図形が一般的ですが、中には文字や文様だけで構成された魔法円もあります。
絵画などでよく見かける魔法円は、五芒星や六芒星の各頂点に蝋燭が立てられていますが、書物だと「四方に明かりを灯す」などと書かれています。
まあ、現代ファンタジーでは勝手に光っているのが殆どですから、あまり関係ありませんけどね。
ついでに、数の接頭辞。
1 モノ(mono)
2 ジ(di)
3 トリ(tri)
4 テトラ(tetra)
5 ペンタ(penta)
6 ヘキサ(hexa)
7 ヘプタ(hepta)
8 オクタ(octa)
9 ノナ(nona)
10 デカ(deca)
11 ウンデカ(undeca)
12 ドデカ(dodeca)
線 -グラム(-gram)
角 -ゴン(-gon)
ペンタグラムは五本線で星形、ペンタゴンは五角形。
ドデカグラムと言う言葉は、あまり聞き慣れないでしょうが、あるにはあります。
基本的な、五つ隣りの頂点に線を引く物は、魔法円向きでは無いような気がします。
黄道十二宮を、地風水火のエレメントごとに線で結んだ正三角形四つの図や、活動・固定・柔軟のクオリティごとに線で結んだ四角形三つの図も、やはり魔法円よりも、ペンタクル向きだと思います。
ペンタクルについては、別にまとめます。
ちなみに、-クル(-cle)は「一つのもの」を意味する名詞語尾。
ミラクル(mira-cle)「驚く-もの」で奇跡、オラクル(ora-cle)「祈る-もの」で転じて神託。
○シジル(sigil ラテン語sigillum)
天使や悪魔など、ここでは”魔”と定義する存在を表す印です。
本来は五大惑星と日月や、黄道十二宮をあわらす印章なども含みます。
魔術を行使する時の、実際の祈願対象となる象徴であり、魔法陣を構成する要素の一つではないかと考えます。
”魔”の真名に相当し、これを掲げたり、メダルやペンダントにして首にぶら下げ、祈りを捧げる、もしくは、交渉、または、命令します。
複数の”魔”を利用する魔術師は、前述通り、シジルが描かれた魔術書のページを開く事で代替する場合があります。
マンガ『夏目友人帳』をご存じであれば、あの友人帳に記された”名”を思い浮かべてください。
恐らく、正にそれ、でしょう。
十字架の様な単純なシンボルや記号、文字の他、絵に近しい図形などもあります。
取り敢えず、”ソロモンの七十二柱の悪魔”のシジルは、ウィキペディアの『ゴエティア』の”ゴエティアの悪魔”の項目に全て記載されています。
各印章をクリックすると拡大表示されますので、興味がおありでしたら、覗いてみてください。
ただし、それらも近世に作られた物です。
古い時代のシジルは円で囲まれているとは限らず、英語で悪魔の名前を書いたりしていません。
せめてヘブライ文字かラテン文字を使えば良いのに、とか思いましたが、まぁ、それはおいておいて。
シジルを勉強しようと思うのでしたら、掲載されているシジルを見て「こうなのか」と覚えるのでは無く、「何故こうなのか」と考えてみてください。
所詮、人の作った物です、読み解けるようになれば、貴方にも作れるでしょう。
少し昔の”ソロモンの七十二柱の悪魔”のシジルが見たいのであれば、先のウィキペディアの『ゴエティア』の”外部リンク”の項目から、『ゴエティア』をクリックすると、ゴエティアの日本語訳に当たります。
そこに七十二柱の悪魔の説明と、新旧のシジルが描かれています。
旧シジルは子供の落書きみたいで、新シジルの方が格好が良いですが、それはそれ、どちらもそうである理由があるのでしょう。
他、七大天使だとか七十二天使だとか、四大元素だとか、色々。
ただし、やはり古い時代の物は見つかりません。
現代魔術師たちが作るシジルは、もう完全に別方向に走ってしまっていますし。
中世以前のアミュレットとかタリスマンがあれば、或いは見つかるかも、ですね。
真面目な話をすると、シジルとはそれぞれの”魔”が持っている、真名と同等の存在であり、魂であり、”魔”そのものとも言えます。
本質的には人間が作り出す物では無いのです。
一般的に出回っている、悪魔や天使のシジルと称される物の殆どは、本当のシジルでは有り得ない、と言うのが私の考えです。
更に言えば、YHVHを含め、天使や悪魔の名前も、全て真名ではありません。
まあ、ファンタジー作品には関係の無い話ですけどね。
○ペンタクル
アミュレット、タリスマン、チャーム、護符、呪符、お守りの類い。
ペンタクルとは、そのお守りの類いである品物、もしくは、それに書き込まれた図形です。
紙や羊皮紙の他、金属や鉱石に、魔術を表す図形が書き込まれています。
個人的な考えですが、このペンタクルが、現代ファンタジーの魔法陣に最も近いように思います。
先のシジルと違い、術の働きが書き込まれているのがポイントです。
厳密には、シジルと機巧の組み合わせだと思いますが、ペンタクル単体で魔術として完結しています。
スクリプチャーの項で書いた、行使する術を表したシンボル、天使の働きを表したシンボルもペンタクルの一種で、「このように働いてください」が図案化された物です。
ペンタと付いていますが、その形状は五角形・五芒星とは限りません。
恐らく、一番簡単な護符が五芒星だったことから付いた総称でしょう。
実際のペンタクルには、シジルと機巧、つまり、”働きを表してる図形”が組み合わさった物や、魔法円に似たような物、線と文字だけで構成された物、純粋な祈祷文まで、様々な形があります。
魔術的な守りをもたらす物ですが、アミュレット、タリスマン、チャームを、それぞれ、護符、呪符、お守りとして、説明させて頂きます。
アミュレット(護符)
一番有名なアミュレットは、”ワードナの魔除け”でしょう。
今ではタリスマンやチャームと区別が無く、「幸運をもたらすアクセサリー」と説明されていますが、本来は災いを避けるようにと、意図的に作られた物です。
だから魔除け、護符。
装飾品にペンタクルを刻みこんで、持ち主の無事を祈る物です。
タリスマン(呪符)
呪の符ではなく、呪の符。
アミュレットとの違いは、こちらの方が能動的に、目的を達成する為に働きかける術が刻まれている点です。
ファンタジーRPG風に例えると、アミュレットが”回避+1””防御+1”だとすれば、タリスマンは”命中+1””攻撃+1”、もっと言えば、”馬術+1”とか”料理+1”とか、そんな感じです。
日本ではよくある”お呪いグッズ”、「頭が良くなります」「足が速くなります」とかいう、あれです。
チャーム(お守り)
ペンタクルに含めましたが、先の二つとは違い、魔術的文様は刻まれていません。
付与術の項で少し書きましたとおり、”魔法を掛けられた物”です。
”付与術・幸運+1”ですね。
魔法を掛けられた物以外にも、縁起物全般も含むようで、更には”縁起の良い物”の形をした飾りもさします。
日本でいう根付の様な物で、装飾品にプラスする”小さな飾り物”みたいな感じです。
可愛らしいという意味のチャームかとも思いましたが、やはり本質は縁起物のようです。
さて。
以上が前置き。
凄く長くなってしまいました。
○魔法陣
魔法陣の発案者は、漫画家、水木しげる先生です。
聞いた所に拠りますと、『悪魔くん』と言う作品の中で、主人公が悪魔を召喚する際に使ったのが初出だそうです。
前述通り、本来、魔術師が悪魔を召喚する時、術者は魔法円の中に入っており、悪魔はその外に顕れます。
それを演出的に、魔法陣の中に悪魔が顕れる、と描いたようです。
つまり、悪魔が魔法陣の内側に顕れるのは、本来、日本だけで、海外では無かった事です。
長らく、魔法陣は召喚魔法に於いてのみ使われていましたが、転じて、空間を移動する転移魔法にも採用されました。
初めて攻撃魔法に魔法陣を重ねたのが何方かは存じませんが、恐らく、西洋ファンタジーでは魔術師が魔法円の中に立って魔術を行使しているのを知って、その魔法円と魔法陣を混同したのでは無いでしょうか。
○日本の現代ファンタジーに於ける魔法陣について
なんだか、持って回ったような言い方ですが、ご勘弁を。
先にペンタクルの項で書いた通り、ペンタクル、特にタリスマンに描かれた物が、現代ファンタジーに於ける魔法陣に最も近しいと思います。
魔法円にペンタクルを取り込んだ、”魔術機巧”こそが、今、我々が知る所の魔法陣だと考えます。
恐らく、本来重要であったはずの呪文、祈りの言葉や契約行使の命令文が簡略化され、何故、魔法が発動するのかという理論を、魔法陣の図形の中に求めているのでは無いでしょうか。
複雑怪奇な図形と、文字のような文様が組み合わされた、そこに、何故、何が、どう働くのかという理が込められており、「その理に則って魔法が発動するのです」という説明付けこそが、最近のファンタジー作品に於ける魔法陣の役どころでしょう。
結論
魔法陣とは、魔法円とペンタクル、シジルを組み合わせ、祭壇と祈願文と”魔”を図形化した物。
魔法円で術者を外部と隔離、魔術機巧であるペンタクルの中を術者の魔力が巡り、”魔”の真名であるシジルに働きかけ力を引き出し、そこに記された通りの魔術が形成され、魔法円の外に放たれる。
と、私が勝手に考えました。
うーん、これが頭の中で思い描いただけで展開できるなら、魔術書は要らないかもしれませんね。
更に、最近のマンガやアニメなどでは、積層型立体魔法陣とかもありますね。
恐らくですが、複数の”魔”から力を借りて術を組み合わせる為か、もしくは発動状態に達した術を、増幅・強化・拡大する為でしょう。
あれも、一層ごとの役割、魔術理論とか、どうなっているのか気になります。
他にも、球状立体魔法陣とか、立方形・多面体魔法陣とか。
☆杖
古来より魔法使いの所持品として定番となっている、”魔法の杖”。
杖は本来は歩行のための補助具、もしくは打撃武器です。
同時に、神話の時代より、権威の象徴として機能してきました。
それは、杖を所持していたのが主に老人、つまり権威者であったから、また、振り翳したり、指し示したりして集団の指揮を執ったからだと思います。
そして、権威者は宗教的指導者、または賢者、ウィザードであり、魔術師的要素を持っていたのでは無いでしょうか。
魔術師の杖は、形状、大きさ等、様々ですが、用法、由来として大きく二つに分かれます。
一つは先の魔法円の項で書いた通り、魔法円を描く道具です。
魔術師は基本的に年寄りであり、杖を突いている事から、魔法円を描く道具としてそのまま利用したのだと考えられます。
これは、比較的長いスタッフなどが使われたでしょう。
第二に、魔術を掛ける対象を指し示す、指示具です。
魔術の根源には、”相手を睨む””指を指す”という二つの行動があります。
これらは特定の社会に於いて、今でもやってはいけない行為であり、非常に忌み嫌われます。
この”睨む””指す”の延長として、杖で指し示す、があります。
ワンドやステッキのような、比較的短い杖で、指揮棒のように真っ直ぐ指し示す、もしくは、目線と杖頭の延長線上に対象をおいて睨みつける事で、魔術の対象を指定するのです。
日本語では全て「杖」という言葉で表せますが、英語では何種類か杖に相当する言葉がありますので、以下にそれらを書き並べます。
ファンタジー作品で、魔術師が持っていそうな杖としては、スタッフ、ロッド、ワンド、スティック。
その他として、バトン、メイス、セプター、ケイン。
そして、箒。
スタッフ(staff)
長い杖。
羊飼いの杖のように、使用者の身長ほど、もしくはそれ以上の長さがあり、荒れ地を進むための道具でした。
魔法円を描くための杖は、恐らくこれです。
聖職者の杖も、羊飼いの杖が元だと考えられます。
クオータースタッフは特に打撃に特化した杖で、真っ直ぐな六~九フィート(180~270cm)の樫の木の両端に、金属製の石突きを取り付けた物です。
西洋棒術に使われ、日本では六尺棒とも言われます。
クオーター(四分の一)という名は、丸木を十文字に四分割して作る事に由来し、枝から削り出した杖より頑丈だと言われています。
ロッド(rod)
細くて真っ直ぐな棒、竿。
杖と言うより、棒状の物を指す言葉です。
つまり、釣り竿や体罰のための棒など、杖以外の物も含みます。
後に書きますセプター(王笏)が、装飾の施されたロッドと説明されています。
恐らく、本来は用途ではなく、形状を指す言葉ではないでしょうか。
ワンド(wand)
魔法の杖。
マジックワンドという言い方もありますが、一般的にはワンドといえば魔法の道具と認識されます。
対象を指し示すタイプの小さな杖ですね。
スティック(stick)
日本ではステッキとも呼ばれます。
本来は歩行の補助具として突いて歩く物ですが、お洒落や権威の象徴としても使われます。
以前は、魔法のステッキが魔法少女の標準装備でした。
それらは床に突く物では無く、完全に象徴的な魔法の杖です。
たまに打撃武器にもなります。
バトン(baton)
棒状の道具。
比較的短い円柱形で、一般的にはリレー競技のバトンやトワリングバトンなどが思い浮かぶでしょう。
私の知る限りでは、杖と訳されるバトンは元帥杖。
君主より元帥へ、軍事統帥権を委譲する事を示したバトンで、他の権威を象徴する杖とは違い頭部を持たず、両端が同じ形状をしています。
メイス(mace)
日本では杖と言うより鈍器、金属製の棍棒がイメージされると思います。
厳密には、一つの素材で作られた棍棒がクラブで、複数の部品で組み立てた物がメイスだったはずです。
尖端に装飾が施された頭部を取り付けた、権威の象徴的な杖でしたが、聖職者は他人に血を流させてはならない、よって、刃物を使わない、と言う論理から、メイスで殴るようになりました。
儀仗はセレモニアルメイスと言います。
セプター(sceptreもしくはscepter)
王笏。
所有者の王位、王権を表す杖、レガリアの一つ。
正に権威を象徴する杖、その物です。
見た目は非常に豪奢で、魔法の杖っぽくはあります。
ファンタジー世界であれば、何らかの魔法効果を持っていてもおかしくは無いでしょう。
ケイン(cane)
歩行の助けとする杖。
魔法など関係なく、本当に生活の補助具としての杖です。
語源は葦で、杖の他、籐や竹、サトウキビなどの節のある茎、植物を指します。
鞭打ちの鞭もケインだそうです。
以上、杖の類い。
個人的には、
ほぼ単一の素材で装飾の少ない長い杖がスタッフ。短い杖がワンド。
杖頭に宝石や装飾が施された長い杖がロッド。短い杖がステッキ。
と言うような認識で良いのではないかと思います。
ちなみに、英語圏でも区別は結構適当です。
スタッフが長い、ワンドは短い、くらいの認識ですね。
箒(broom)
魔女の箒。
魔女が跨がり空を飛ぶための道具として知られていますが、ここでは杖の一種として紹介させて頂きます。
魔女は全裸で薬物を塗った箒に跨がり、自慰行為に耽る。
その箒は、房の部分で隠されているが、尖端部分が男性器を模した杖である。
とは、まあ、キリスト教会の言う事ですが。
魔女が乗る物を、ブルームスティック(broomstick)、つまり、箒の柄とする場合もあります。
そして、その”柄”の部分こそが、実は魔法の杖にあたる、というのは、キリスト教会と同じ考えです。
根本的には、単純に、男性魔術師が手に持っていた杖で魔法円を描いたのと同じように、女性魔術師が手に持っていた箒の柄で魔法円を描いたという、ただ、それだけの話です。
杖頭が房の側にあるのは間違い無く、古い時代の絵画では房の方を前にして空を飛んでいます。
ひょっとすると房を外すと、不思議な文様が描かれていたり、装飾が施されていたりするのかも知れません。
ただ、男性器を模しているというのは、悪意あるデマですね。
ホウキギと言えば、コキアの事ですが、魔女の箒の房に使われているのはエニシダです。
漢字は金雀枝、英名はそのまんまbroomです。
毒草であり、薬草。
熟した種は爆発して10m以上も跳んでいくそうです。
日本でも手に入るはずですので、興味のある方は育ててみて、自分で箒を作ってみるのも面白いかも知れません。