一言で言えば
気まずい感じになった2人を見た直人が、
「あ! 菅谷美乃梨さんが亡くなっていることは既に存じ上げてるのですが、その旦那さんご存じないですかね??」
「あ、そ、そうですか。旦那さんですか……吉田さん知ってる?」
「んーーー流石に旦那さんは知らないですね…」
「だよねぇ、からめるスタジオに連絡取れる?」
「もうないですよ?」
「え?」
「あそこ、菅谷さんがいらっしゃったからなんとかなっていたようなもんでしたから、お亡くなりになってしばらくして解散しましたよ」
「あ、そうなんだ…」
「あ、でも、当時からめるスタジオに所属してた人、1人今うちにいますよ?」
「え、本当?」
「連絡してみましょうか?」
「お願いできる?」
「少々お待ちくださいねー」
そういうと吉田さんは自分のデスクに戻り、スマホで電話しだした。
そして電話がつながったのか、少し話すと、スマホを持ったままこちらに戻ってきて、
「あきらさんが知ってるみたいですよ旦那さんもー」
「おお!」
「スピーカーにしますねー」
というと、スピーカーにしたスマホをテーブルの上に置いた。
「あきらさんお疲れ様ー! 芹沢ですー!」
「おつかれさまでーす」
「ちょっと色々あってね、今エンゲージの代表さんがいらっしゃってて、人を探してるみたいなの! 菅谷さんって人の旦那さん、あきらさん知ってる?」
「あ、はい知ってますよー、といってももう連絡先も知らないですけどねー」
「あら、そうなんだ…」
「美乃梨さんの旦那でしたが、一言で言えば紐男でしたよー」
「あ、あきらさん…」
と芹沢さんがオロオロすると、
「あ、いえ、大丈夫です! そんな感じだろうと思ってましたから!」
と直人が言った。
「なんで美乃梨さんがたかしと結婚したのかはからめる最大の謎ですが、確か息子と娘がいたはずですー。あ、たかしは確か芸名なんで本名の下の名前なんだったかな~~」
と電話越しにあきらさんが話したので、直人が、
「ちなみに、最近というかここ数年でもいいんですけど、何してるとかどこにいるとか聞いたことないですかねー?」
「さーー、たかし見てくれだけはイケメンなんで女のところにでもいるんじゃないかと思うんですけどーーー」
「な、なるほど…」
「あ、でも1年ほど前かな? 昔のメンバーと飲んでるときに、そのうちの一人が中野で飲んでるときにばったり会ったってやつがいましたね!」
「中野ですか」
「あ、でも、なんか一緒にいた人たちもたかし本人も、あんまりまともな感じの人じゃなさそうだって言ってましたねー!」
「なるほど」
「からめるもそうですが、結局家も美乃梨さんで成り立ってたと思うんで、そうなりそうだわーって皆で飲んでましたわー(笑)」
というあきらさんの話を聞きながら、俺も直人も直人の親父さんもうーん…となった。
「あ、あきらさんありがとう! とりあえず、わかったからこれで大丈夫!」
「そうですかー! 芹沢さん次の舞台のノルマ減らしてくださいねー」
「そ、それは検討する!」
「おねがいしますよ~」
というと、電話が切れた。
芹沢さんがばつが悪そうに、
「そ、そんな感じなようなんですが…」
「あ、いえ、大変ありがとうございます!」
「あ…ありがとうございます………」
直人に続いて俺もお礼を言った。
「ちょっとあんまりいい結果ではないかもしれないんですが…」
と芹沢さんが言うと、直人の親父さんが、
「いえいえ、逆に貴重な情報伺えてよかったです!」
「そ、そうですか…」
「あきらさんの次回ノルマの半分、うちで持ちますんで三澤さんに請求出してください」
「あ、いやいや、流石にそれは!」
「いえいえ、大丈夫ですから! こういうのは持ちつ持たれつですからね」
「そ、そうですか、あきらも喜ぶと思います」
「三澤さんお手数なんですけど、取次と動員だけお願いできればと思います」
「大丈夫ですよー、いつもの請求に混ぜ込みますねー」
「それで大丈夫です。今日はありがとうございました。」
と直人の親父さんが挨拶したので、俺と直人も、「ありがとうございました」と挨拶した。
そしてオフィスGの事務所を後にして、帰りの車の中で、
「これは困った感じになりそうだねー」
と直人の親父さんが話しかけてきた。
「そ、そうですね…」
「でも、何となくの可能性はわかったな」
「うん」
「まぁ、舞台俳優の人から見て、普通な感じじゃないって、もう夜系とかそう言う感じだろうな」
「うん、俺からすると芹沢さんも普通というにはえらくダンディーな感じだったしね」
「りのあちゃんに仕事っていうぐらいだから、十中八九夜系の話なんだろうな。そしてもしかしたら金もなんかあるかもなぁ」
「そ、そうだね…」
「どうすんの?」
「ちょっと考えてまた相談する」
「おっけー、でも危ない橋はわたるなよ?」
「うん、大丈夫。あ、ノルマ代俺払うよ」
と、俺が言うと、運転している親父さんが、
「大丈夫だよー! その代わり、りのあちゃん本当に事務所検討しだしたら、うちに一回は話しさせてね!」
「わ…わかりました…」
莉乃愛の為だから、しょうがないと思いたい…。
そして、その日はそのまま直人の親父さんに車で家まで送ってもらった。




