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外から見ててもわからない

この物語はフィクションです。

「アークさんもゆきはさんもここだけの内緒にしてくださいね」




そう太田さんが神妙な面持ちで言った。


ゆきはさんから連絡を受けた太田さんは、すぐに小平さんに連絡して、初めて社内の線を考えたらしい。


そして一つの答えに既に行きついていた。


ホロサンジには、バーチャル配信者をマネジメントする部門があるが、実はその中がグループ1とグループ2みたいな形で別れているらしい。


太田さんが所属するグループ1は個人の好きな配信をメインに取り扱い、登録者を伸ばし広告収益を伸ばしていく配信者が多い。


対してグループ2は、積極的に企業案件を実施して収益を伸ばしていく配信者が多い。


元々は同じグループだったが、ここまで大きくなると意思統一することが難しく、かといってどちらも企業としては間違っているわけではないので否定もできない。


その結果グループ分けとなったらしい。


最近は、バーチャル配信者の存在が企業に認められて、グループ2が大きく伸びていたらしいが、ゆきはさんが来たあたりから流れが変わったらしい。


そして極めつけは、OPEXの大会だそうだ。


グループ2はゲームがうまい人が少ないらしく、ホロサンジは殆どがグループ1からの参加だったとのこと。


そして、マリンスノーはじめ、この大会で一気にグループ1の配信者たちがトレンドとなった。


伴って、企業案件の相談もグループ1にかなりが流れていき、そして年末年始。


冬休みな上に、クリスマスに正月にとバーチャル配信者にとっては、こういっちゃなんだが稼ぎ時だ。


そこで会社は、グループ対抗で12月1月の合算売上で勝った方のグループの配信者達に、3D化等の優先権を出すという、マネジメント部門内での社内的な競争イベントを企画した。


しかし、フェアな競争に見えつつ現在のグループ1の配信者達の勢いは増すばかりで、どちらが勝つかはこのままなら明確だったらしい。


そこで、今回の荒らしである。




そう言って見せてくれたのは、どの配信者がグループ1でどの配信者がグループ2でという社内資料だった。


そしてその横に、配信が荒れているかどうかのフラグが立っている。




ここで、始めて基準と目的がわかった。




要は、社内競争で勝つために、グループ2からグループ1に対するいやがらせ行為だ。


そりゃ外から見てたってわからないよな…。


微妙にグループ2の配信者も入っているあたりは計画的だが、グループ1の配信者の方に大幅に偏ってる。




「なるほどですね…」


「というわけでして、もちろん3D化等もあるでしょうが、担当する配信者達の売り上げが伸びるということは、マネジメントしている人間のインセンティブもあがるということでして……恐らくこのグループに所属する社員の誰かか、はたまた全員かが恐らく仕掛けているのではないかと…」


「残念ながら投稿したパソコンまでは特定できなかったので、個人はわからないのですが…」


「いえ、大丈夫です。ちょっとあれですが、視聴者さんにもご迷惑をおかけしてしまっているので、早急に社内に通達します。」


「そ、そうですか」


「専門家に依頼して、既に社内からのアクセスがあることが明確で、パソコンの特定も進めています。配信者さんや視聴者さんにご迷惑をかけている以上、これ以上続くようであれば本格的に社員のパソコンを調査します、みたいな感じで行きます」


「大丈夫ですかね…?」


「もちろん直ぐに社長に相談しますが、企業として悪いことをしているわけではなく、問題を明らかにしようとしているだけで、それが社内にあるとわかってる以上問題ないと思っています。」


「そうですよー。本当配信や投稿してくれてる皆に申し訳なさすぎますよ…」


「本当です…。うやむやにはできないと思うので、対象となった配信者にはそのうち全ては無理でしょうが伝えようと思います。」


「いつ実行するんですか?」


「今日です! この後社長に連絡します」


「本当すぐなんですね…。」


「一刻も早く止めないと、配信者や視聴者さんに申し訳ないので!」


「そ、そうですか…」


「うまくいきますかね…」


「まぁ正直半分はったりですが、専門家に依頼したというところはアークさんのデータを出せば嘘ではないですし、大丈夫だと思います。見せて頂いたデータをいただく事はできますか?」


「あ、もちろんです」




その後、小平さんに調査データを渡して、どのデータが何を示しているのかを説明した。




「アークさん今回は本当にありがとうございます」




そう小平さんが頭を下げた。




「あ、いえいえ! ゆきはさんが困っているのを助けたかっただけですので!」


「アークさんのデータがないと、確証のあるものがなかったので、本当にありがとうございます」


「それならよかったです」


「ゆきはさんも本当申し訳ない」


「あ、いえ、是非早く元に戻ると嬉しいです!」


「もう、それに関しては最速で取り組ませていただきます!」


「ゆきはさんよかったですね」


「はい!」


「あ、アークさんもゆきはさんも、今回の件は他の配信者含め内密にしておいていただけますと…」


「あ、大丈夫です、もちろんそのつもりですのでご心配には及びません」


「ありがとうございます…」




そして俺はゆきはさんと2人でホロサンジの事務所を後にした。




「アークさんありがとう」




そう駅に向かいながら歩いてると、雪菜さんが話しかけてきた。




「いえいえ! 本当にこういっちゃあれですけど、明確な目的ができたおかげで、プログラムの能力が一気に向上しました」


「そんなこと言ってたね…(笑)」


「なのである意味winwinです(笑)」


「それないいですが…あ! 湯月くん、このままついでに初詣行こう?」


「え、あ、え」


「あ、もう行っちゃった?」


「いや、行ってないですが…雪菜さんと俺が一緒にいちゃ…」


「そーんなことないよ! 原宿近いし行こうよ!」




そう言って雪菜さんは俺の腕を引いて振り返った。




「あ、えっと、うん…」




そして、2人で原宿に行き、想像を絶する初詣の人の量に圧倒されながら、雪菜さんとお参りした。




「湯月くん、プログラマーになるの?」




神社から少し離れたところで、石垣に腰かけながら、たこ焼きをもった雪菜さんが話しかけてきた。




「そうですねー、なれたらいいなとは思ってます」


「もうなってるみたいなもんじゃないの??」


「いやいや、今の俺の実力なんてブロンズですよ」


「そ、そうなのかな(笑)」


「きっとそうです。雪菜さんは日向ゆきはに専念ですかね?」


「そうしようと思ってるけど、どこかで顔出し配信とかもできたらいいな~とか…」


「おお、そうなんですね! どういう心境の変化かはわかりませんが、それはそれで需要しかないと思いますよ」


「そうだといいんですけどね(笑) ただ日向ゆきはである以上は無理なんで、一旦は日向ゆきはとして頑張ります!」


「そうですか、雪菜さんならきっとできますよ!」


「うん、湯月くん、本当いつもありがとう!」




そう言うと雪菜さんはたこ焼きを横に置き、腕を組んできた。



ちょ、ちょ………


な、なんで?!



そんな、雪菜さんの首には俺があげたクリスマスプレゼントのネックレスがつけられていた。

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