アークと迎える新年
俺は昼食を食べた後、急激に眠たくなって暫く仮眠して、起きたら夕方だった。
起きた瞬間から、「あれを試してみよう」「ここを変えてみようと」頭の中はトップギアだ。
そして2日程、途中仮眠というかうたた寝を2時間ほどしたぐらいでほとんど、例の掲示板へのアクセス元を見つけ出すことに費やした。
幸い、掲示板はサーバーこそ海外にあるものの、そこまで強固なセキュリティではなく、もちろん全然簡単ではなかったが、ようやくなんかそれらしい情報を引っ張り出すことができた。
これはもうハッキングに近いことをやってるんじゃないか…? 別に掲示板自体に何かしようとしてるわけじゃないけど…。と思いつつも、雪菜さんが困ってるしと思いそのまま調べた。
そうして、恐らくスマホからのアクセスであろうものは結局何もわからないのだが、一部PCのアクセスで解析できたものが出てきた。
この投稿完了ページのURLへの到達アクセスのうち、俺の方で解析ができて、タイミングと狙っていた投稿内容が一致したのは15。
15のアクセスのうち、そのほとんどが港区だと推定できるが、わかるのはここまで。
しかし、そのうちの3つが同じアドレスである。
同じアドレス…固定されてるということは……
俺はその時一つの可能性に気が付き雪菜さんに連絡した。
雪菜さんに一通り説明し、翌日打合せの予定があるらしく、その際にホロサンジの事務所のアドレスのスクショをお願いした。
もしこれが、そうだったら、大問題だろう。
そしてその後ももっとわかることはないかと、再びプログラムに没頭した。
そして翌朝、それ以上のことはまだわかっていないが、ぶつぶつ独り言を言いながら考えていると、
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
という悲鳴が聞こえて、びっくりしてドアをみた。
スマホを持ってパジャマの莉乃愛がそこにいた。
「新バージョン!!」
「本当驚くから普通に声かけて……」
「だって無視するじゃん!」
「いや、無視してるわけじゃないんだけど…ごめん」
「あっくん、また徹夜したでしょ!」
「えっと、そうかもね?」
「もー―――! わたしがお願いしといてなんだけどちゃんと寝てよ! なんかあったら嫌だから!」
そう言って莉乃愛は部屋に入ってきて、座ってる俺の腕を持ちベットに連れいてく。
頭は冴えてるけど、それ以外は疲労困憊なので、ヨロヨロと俺は連れられて布団に入った。
「あっくん、頑張ってくれてありがとう。雪菜は大切な友達だから…」
と言いながら、布団に入った俺の頭を莉乃愛がなでてくれる。
俺の記憶はそこで途切れた。
そして、起きたら22時。なんと12時間以上も寝ていたようだ…。
はっ! 雪菜さん大丈夫だったか?
と思いスマホをみるが特に連絡は来ていない。
PCを立ち上げると、ディスボにゆきはさんから1枚のスクショが送られてきていた。
それは、俺がお願いしていたホロサンジの事務所のアドレスだ。
そして俺は直ぐに、調べた気になる3つの投稿がされた固定のアドレスを見比べた。
同じだ。
誰が荒らしている、ということはわからないが、少なくとも事務所の中から誰かが同じようなことを発信していることはこれで確定だ。
俺は直ぐに雪菜さんに連絡を取り、担当の方に内密に連絡を取ってもらい2日に説明することになった。
それから、投稿したパソコンが特定できないかと更に調べようとして、俺は気が付いた。
全く配信してない!
急いで配信の準備をしてOPEXを起動した。
「ちょっとお久しぶりですー」
『なにしてた』
『実はリア充か』
『ゆるせん』
「そんなことないですよー。ちょっと最近プログラムの勉強してて、没頭しちゃって…」
『プログラマーなのか?』
『アークあってそう』
『なんかイメージできる』
そんなことを話しながら、OPEXの配信を行った。
そして深夜3時まで配信して、再び俺は寝た。
それからは、もちろん日中はプログラムに没頭しているものの、夜に配信をしてと、生活リズムが元に戻った。
そうして、
「皆さんあけましておめでとうございますー」
『あけおめ』
『アークと迎える新年』
『新年を祝って耐久配信しようぜ』
「耐久はしませんけど、もう少しやりますよー! 皆さんいい年になるといいですね!」
俺は新年を配信で迎えた。
そして配信を終えて、そのまま眠り、翌朝になった。
10時ぐらいに起きてリビングに向かうと、
「あっくんあけおめー!!」
と莉乃愛が話しかけてきた。
「あ、うん、おめでとう」
「ちゃんと朝に起きてえらいぞ!」
「うん、まぁ、一応」
そう言いながら、いつも通りコーヒーを取り、ダイニングに座った。
「あっくん、なんかわかったの? 最近落ち着いたね!」
「あ、うん、そうだ言ってなかったね」
「え、まじ! なんだったの?」
「あー、えっと、思いの外大きな問題になりそうでまだ言えない…」
「えーーーー! でもそのうち解決するってこと?」
「恐らく」
「流石あっくーん!」
そういう莉乃愛はダイニングテーブルに肘をつきながらニコニコしている。
「それで明日ある企業の人と会うからちょっと外出るんだ」
「そっか! あ、落ち着いたらでいいからさ、初売り行こうよ!」
「初売り?」
「そう! わたし服欲しい!」
「それめちゃくちゃ人多そう…」
「欲しい!」
「わ…わかったよ…」
「約束ね!」
そんな、ニコニコ笑ってる莉乃愛の首には俺があげたネックレスがある。
気に入ってくれてるみたいでよかった。