【中里雪菜視点】一体何なんだ?
湯月くんと直人くんに、超高級なクリスマスプレゼントをもらってしまった。
実際の値段はわからないけど、もはやブランドで何となく高いことがわかる。
もらっていいのか正直気が引けてしまう…
でも、湯月くんが選んでくれたネックレスも、直人くんが選んでくれたスカートも正直凄くかわいい。
ネックレスなんてもらってからずっと着けてしまってる。
そんなクリスマスパーティーも終わり、冬休みだし配信時間も少し多くしてみよう、そんなことを思っていた。
「こんゆきー! 今日はOPEXのランク配信やりますー! よろしくお願いしますー!」
と言って配信を開始した。
暫くすると、変なコメントがいくつも投稿された。
『声で逝ける』
『中身はどんなんだろう』
んー、それこそ配信を始めてすぐぐらいはあったのだが、それ以降優しいリスナーさん達に守られて、最近はこういうコメントも見ることすらなかった。
とりあえず無視だ無視。
「今日はねー、クリスマスイブだからエイムいい気がするな~」
そう言って、そのままOPEXの配信を続けた。
最初自分でコメント削除をしようかと思ったが、どうも事務所の方が監視してくれていたみたいで、そのうち勝手に削除されていくようになった。
でも、しばらくするとまた違うアカウントで同じようなコメントが投稿された。
うーん、一体なんだろ、と思いつつもそのまま配信を続けて3時間ほどで終了した。
途中から変なコメントは来なくなったが、一体何だったんだろう…
そんなことを思いつつ、一時的なものだろうと思い、翌日も配信した。
「こんゆきー! そしてメリクリ―! クリスマスもこうやって見に来てくれた皆さんに、私からクリスマスプレゼント! この配信中限定で、私のスマホの壁紙が無料でダウンロードできます! 概要欄にURLがあるので、是非ダウンロードしてください!」
『メリクリ』
『今すぐ壁紙変える』
『彼女とのLIMEの背景にする』
「彼女さんとのLIMEの背景は、なんか複雑気持ちになるなー―――ってか、彼女さん怒るだろうからやめた方が…」
なんて、雑談をして、その後OPEXの配信を行った。
そしてしばらくすると、また来た。昨日の変なやつ。
視聴者さんも流石にわかっているので、
『ホロサンジはよブロック』
『また変なのきた』
『昨日まりんちゃんのところにもいたぞ』
『ロイドのところにもいた』
「えーっと、他の配信者さんの話はしないでねー! さー残り5部隊だからキルしに行こうー!」
そう言ってOPEXを続けたが、また昨日と同じく、変なコメント→削除の流れになってしまった。
視聴者さん達も、気がそれてしまっているようで、いつもよりコメントが少ない。
んー、これはどうしようか…と思いつつ、しばらくOPEXを続けたものの、微妙な雰囲気になってしまい、2時間ほどでその日の配信は終了した。
んー、困ったな。
私に実害があるわけじゃないけど、折角見に来てくれていた視聴者さんに申し訳ない。
今日本当は、ダウンロードの時間もあるので、4時間ほど配信しようかと思っていたのだが…
でもあの空気感だとなぁ…
と思っていると、スマホが鳴った。
太田さんだ。
「あ、ゆきはさん今大丈夫―?」
「あ、はい、大丈夫です!」
「配信、ちょっと荒れちゃってるんだけど、ゆきはさんは大丈夫?」
「あ、はい! 私は全然大丈夫なんですが、見に来てくれてる視聴者さんに申し訳ないなぁと…」
「そうだよね~…とりあえずゆきはさんが気にしてないようで良かった!」
「はい!」
「昨日とか一昨日辺りから、他の配信者のところでもチラホラ似たようなことが起こっててさ」
「コメントで見ましたー」
「一時的なものだと思うんだけど、時期的にも放ってはおけないから、直近はこっちで常時監視するから、明確に配信時間決めて欲しくて―」
「あ、ありがとうございます! 明日は~…」
と太田さんに直近のスケジュールを全て伝えて、
「直近こんな感じで予定してます!」
「りょーかい! ちゃんとパトロールするね!」
「ありがとうございます! しかし一体なんなんでしょうか…」
「いや、うちの会社の人達も原因必死に探してるんだけどわからなくて…」
「私だけならともかく、他の人もってなるとなんか不思議ですね…」
「そうなんだよね…まぁそこら辺は私達に任せておいてもらって!」
「はい、よろしくお願いします!」
しかし、本当に謎だ。
私だけなら、私がなんか気に障ることを言っちゃったとか、なんかそう言うのかもしれないのだが、他の人もとなると最早意味不明だ…。
ホロサンジを攻撃したいのかな?
でも全員じゃないっぽいし…
いったい何なんだろう…でもだからと言って、配信をお休みするわけにもいかないので、明日も配信をするんだけど。
あ、クリスマス壁紙、どっか落ち着いたタイミングで再配布できないか今度太田さんに聞こう。
そして次の日、太田さんに伝えた予定通りに配信を開始したが、しばらくするとやはり変なコメントがきた。
視聴者さん達も、流石に慣れたのか、私を擁護してくれる感じだが、変なコメント→削除が続いた。
うーん、これどうしよう本当。どうすることもできないんだけど。
原因も全くわからないし…。
そうしてその日の配信を終えてスマホを見るとりのあちゃんからメッセージが届いていた。
『頑張って!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
ビックリマーク多すぎ(笑) と思いつつも、配信を見てくれて、今の状況を励ましてくれてるのだろう。
『ありがとう! 私は大丈夫だよ!』
『それならよき! あ、あっくんに何とかしてって言っといた!』
『ええ?』
『だからきっと大丈夫!』
『あ、うん、それは心強いんだけど、ええ?』
『そういうことだから!』
『あ、うん、でもありがとう!』
『うん! 頑張ってね!』
いや、どういうこと???
全然わからないけど、すごく心配してくれて励ましてくれてることは伝わった。
りのあちゃんって、なんかこう全身ですべてを伝えてくる感じなんだよね…。
私もあんな風にできたら色々違ったのかな…
でも、今の私だから日向ゆきははいるわけだし!
ところで、湯月くんになんとかしてって、なんて無茶な(笑)
でも、後でありがとうってメッセージを送っておこっと。
そう思い、とりあえず夕飯を食べてお風呂に入り部屋に戻ると、今度は湯月くんからメッセージが届いていた。
湯月くんと何通かやり取りして、とりあえず明日も配信だしと思ってSNSを見つつ布団に入った。
翌日の配信もそれほど変わることもなく、すごく悪くなるわけではないが、良くなることもない。
そんな状況にやきもきするものの、どうにもできないので私は続けることしかできない。
そう思って次の日も配信した。