言うこと聞く券
直人からそう言われた2人は、恐る恐る包装紙をとった。
「いろはとお揃いのGECCIのマフラーじゃん!!!!!!」
「え、めっちゃかわいい!!!!!」
「え、兄貴まじでいいの?」
「あぁ、全然問題ない!」
「アークさんもいいの?」
「あ、うん、大丈夫。使って…」
と俺が言うと、
「最高なんだけどーーーーー!」
と彩春ちゃんが良い、
「兄貴が兄貴で良かったと人生で2回目に思ったわー!!!!」
「おい茜、一回目はいつだよ」
「雪菜さんの連絡先でいろいろ買ってもらったとき」
と、当然! みたいな感じで茜ちゃんが言った。
「茜………お兄ちゃんはお金じゃないよ……」
「お兄ちゃんとかキモ。でもこれは最高! ありがとうー!!」
「え、茜写真撮ろうよ!」
と2人が話し出すと、他の皆は「あはは」と笑った。
「では次に莉乃愛ちゃんと華蓮ちゃんと雪菜ちゃん、来てー!」
そう言うと、3人は「私達はなんだろ~」と言いながら席を立った。
「新、俺が買ったやつ持ってきてー」
「あ、うん」
そう言うと俺は、部屋の外に置いた台車に行き、直人が買ったものの残りを持って戻った。
「えーまずは直人サンタから、3人にはこれ! えっと、はいこれ華蓮ちゃん! これが莉乃愛ちゃんでこれが雪菜ちゃんね! メリークリスマス!!」
と、それぞれに渡した。
写真を撮っていた彩春ちゃんと茜ちゃんも、なんだろなんだろみたいな感じで近くに来た。
プレゼントを渡し終えた直人が近くに来て、コソっと、
「新、お前のすぐ持ってきて。時間置くと、多分雪菜ちゃんあたりが受け取れないって言い出す気がするから」
「あ、うん」
受け取れないようなものになってしまってるのね…
俺は直ぐに、ドアの外の台車に行き、買ったものを持って戻った。
「続きましてー、新サンタからもあります!」
「あ、こ…これ……りのあがこれで、雪菜さんがこれで、華蓮さんがこれ…」
と、それぞれに買ったものを渡すと、
「…あっくん…プレゼントが欲しいとは言ったけど……」
と莉乃愛が言い、
「彼女でもないのに、むしろ彼女だったとしてもこれは……」
と華蓮さんがいい、
「こ、こ、こんな高価なもの、う、受け取れないよ!」
と雪菜さんが言った。
それを聞いた直人は、
「まぁまぁもらってあげてよ! 一応俺があげたやつは、俺が3人をイメージして選んだし、新のはちゃんと新が選んでるから」
「え、がち? あっくんそんなことできたの?」
「え、いや…」
「えーっとね、無数に選択肢があるとこいつは絶対選べないので、もうセンスが問われにくい外さないものというと、もうブランドにお金を払うしかなかったのさ!」
と、直人が自慢げに言った。
すると、華蓮さんが、
「いや、まぁ、確かにありな選択ではあるけど…そもそも買えないでしょ普通…」
「まぁ、そこは我々無駄に稼いでますから! 既に納税してますので!」
「でも本当…いろはもだけど…こんな高級なもの……」
「高校最後に大奮発なんで、次はないかもしれませんので今回はお納めください~~」
と直人がお辞儀すると、
「ま、まぁ、あっくんが意味不明な大金を持ってることは知ってるから、これ以上言ってもあれだし…今回はありがとうということにしよっか」
と莉乃愛が2人を見て言うと、「むむむ…」と2人とも頷いた。
すると華蓮さんが、
「まぁ、それなら! これ洋服だろうし! 着て来ようよ!」
「いいね!」
そう言って、雪菜さんも2人に連れられてパーティルームを出ていった。
「兄貴…」
「なんだ妹よ」
「これ、相当いってるよね? アークさんも合わせると」
「そうだな! 中古車は買えるな!」
「うわー、アークさん本当に大丈夫なの?」
「ん? 新は俺より金持ってるぞ?」
「ガチ?」
「うん、配信もしてるしな」
「まじかーーーー、兄貴は昔から意味不明だったけど、アークさんまで違う世界の住人かーーーー」
と茜ちゃんが言うので、
「ま、まぁ、俺は陰キャだからさ……」
というと、
「なんかそれとこれは話が違うような気がする…(笑)」
と茜ちゃんが言って、
「でも、おねーちゃん達はどんなのなんだろー!」
と彩春ちゃんが言った。
すると、ドアが開いてスカートだけ着替えた3人が入ってきた。
「直人くんよ、あたしは非常に気に入ったぞ。非常に満足している」
と、ウムウムという感じで華蓮さんが話した。
「わたしもめっちゃ可愛いー! 雪菜もめっちゃ似合ってるしー!」
「あ、うん、このスカートすっごく可愛い…」
そして3人の首元は俺があげたネックレスがかけられていた。
「ねーねー、あっくん! わたしはなんでこれ??」
「…なんか華やかそうな雰囲気がりのあな感じかと…」
「えーえー、あたしは?」
「か、華蓮さんの元気な感じがなんかあってそうだなと……」
「わ、わたしはどう…?」
「鍵ってなんかレトロなので、落ち着いている雰囲気が…」
と、答えると、
「おーーーーー、本当に選んでくれたんだーーーー!」
「湯月くん、直人くん、大事にするね、ありがとう」
「本当、まじでありがとう! ヘビロテする!」
と、3人が話すと、茜ちゃんと彩春ちゃんも加わり、5人で写真を撮りだした。
そして、夕方にはパーティーはお開きとなり、皆も帰っていった。
パーティールームを元に戻し、家から持って行ったものを莉乃愛と家に全て持って帰り、部屋に戻ろうとしたら、
「あっくん、これ大事にするね…!」
と、ネックレスをつまみながら言った。
「あ、うん」
「で、でも…うれしいけど……なんか特別な感じの…」
「え、あ、え?」
「わたしだけ~…みたいな……」
「あ、え、う、うん、えっと…じゃ、じゃあなんでも一回りのあの言うこと聞くよ。スノボ含む体動かす系以外で」
「…う、うん! じゃあそれで! わたしも、一回だけあっくんの言うこと聞いてあげる券をあげます!」
「あ、う、うん、ありがとう」
「えっちなことでもいいよ~?(ニヤニヤ)」
「なっ…」
「とりあえず、ネックレスありがとね!」
「う、うん。気に入ってくれた?」
「もち!」
そういうと莉乃愛はニコッとして自分の部屋に戻っていった。
暫くすると、『莉乃愛がいうこと聞く券』と書かれたメモ用紙を莉乃愛が持ってきた。
メモ用紙って…律儀なんだか雑なんだか…
そう思いつつ、俺はその券を机に仕舞った。
そして、短いけど冬休みだし、配信もプログラムの勉強もはかどるな~、なんてのんきに思っていたその時の俺に、その時なにかできたってわけじゃないけど言ってやりたい。
人生で一番忙しい年末年始だぞと…