直人は完璧
直人からは3日ほど前に、通販サイトの箱に入って直人の買ったプレゼントが届いたので、俺が買ったものと一緒にクローゼットに仕舞ってある。
このクローゼットに合計100万円ぐらいの物が入ってるのかと思うと、高すぎだろ……触るの怖すぎる…と思ったが、よく考えたらこれまでに様々カスタムしてきたPC周りも結構な金額になっていることに気が付いてからは気にならなくなった。
クリスマスパーティーは、雪菜さんも俺も配信の予定が入っているということで、というか主には雪菜さんの予定で決められたのだが…12時ぐらいからと莉乃愛から聞いた。
「あ、あっくーん! おはよう!」
「お、おはよう」
と、朝起きてコーヒーを取りに来た俺に莉乃愛が話しかけてきた。
「もう少ししたら華蓮が来るから、そしたらわたし先に華蓮とパーティールームで準備してるから、時間になったら来てー!」
「あ、うん、了解」
まだ9時だけど…
「あ、直人はあっくんに連絡するように言ってあるから、一緒に時間になったら連れてきてー」
「わ、わかった」
「あ、華蓮からLIMEきた」
そういうと、莉乃愛は部屋に戻っていった。
「新~、クリスマスパーティーなんていつ以来かしら?」
「俺が小学生とかじゃない」
「本当、あんた冷めてたからね~。「サンタさんなんていないよ? ネットで調べた」って言われたときには、一周回って笑っちゃったわ~~」
「そんなこと言ったっけ…」
「まぁ折角だし、楽しんでらっしゃい」
「俺はゲームの方が…」
「まぁそうかもしれないけど、こういうのを経験しておくのも大事なことよ~?」
「…わかった……」
俺はそう母さんに返事をして、コーヒーをもって部屋に戻った。
とりあえず、直人が来るまではフリーだと思い、最近プログラミングの原理の理解のために必要そうだと思ってきた、代数幾何の勉強を始めた。
簡単なホームページを作るぐらいはもうどうにかなるのだが、何かを分析したり結果を導いたりするために必要になるものは、正直高校レベルの教科書では原理が理解できない。
いや、何となく計算過程とか処理のプロセスとかを見ているとわかるのだが、今までの経験上、大体こういう状態になると公式的なものが既に存在する。
わざわざそれを導き出すのは、時間の浪費なので、そう言う状態に陥ったら参考書を買うようになった。
そうなったのも、直人と「どっちがお金を稼げるか勝負」を始めて、それが「どうやったらもっと効率良く稼げるか議論」に変わったあたりで、直人とあーでもないこーでもないと投資の予測を計算しようとした結果、そうか公式があるのか! と2人で行きついた。
あの勝負? も無駄ではなかったということだ。そう思いたい…。
そうしてしばらく、参考書を読んで試しにやってみて「なるほど」と納得して、「だとするとこれはなぜ?」と参考書を読んでを繰り返していると、スマホが鳴った。
時間は既に11時を回ってる。
「後10分ぐらいで着くぞー」
「あ、うん、インターホン鳴らして。オートロックあけるから一旦うち着て」
「了解ー」
そうしてしばらくすると、リビングのインターホンが鳴り、俺が行く前に母さんが開錠してしまったので、そのまま玄関で待ってると、玄関のインターホンが鳴って直人が入ってきた。
「おーっす」
「うん」
すると母さんが奥から出てきて、
「あ、直人くん! この前は新も莉乃愛も海ありがとね~」
「あ、いえいえ! 八代直人です!」
「あら~、新と違って礼儀正しくていいわね~! 新と莉乃愛の母です~」
「あ、これつまらないものなんですけど…」
と、直人が持っていた紙袋を渡した。
「あらー、いいのー?」
「はい! 今日の準備をお願いしてしまいましたし!」
「全然いいのに~。でもそれじゃありがたくいただくわね~」
「はい!」
「ま、とりあえずあがって~」
と母さんが言うと直人が靴を脱いで、玄関をあがった。
「とりあえず、俺の部屋でいいでしょ? こっち」
と言って、直人の前を俺が歩き、直人が後ろからついてくる。
そして俺の部屋に入り、
「やっぱり直人は完璧だな」
「だろー? 自分で言うのもなんだが、俺親受け超いいからな」
「だろうな」
「しっかし、お前の部屋って感じだわ」
「今ちと汚いけど」
「んー、なにやってんだ?」
と、床に落ちていた紙を一枚直人が拾った。
「んーーー、代数だな。んー、この部分、前投資の計算お前とやってた時に似たようなのあったな。らー、りー、るー…ルーマンの定理!」
「流石、その部分はそれが一部使われてる」
「なに、またなんか投資で新しいことでもやるん?」
「あ、いや、最近プログラム独学してて」
「あぁ、そういうこと。俺はプログラムには詳しくないけど、確かに代数とか関数とか結構複雑なものが必要そうな雰囲気ではある」
「んーまぁそうだね」
「てかこんなん大学レベルだろ? やるなら大学行けば?」
「他のことやりたくない」
「まぁなぁ…。でもこういうのは、基礎ちゃんとやっておいた方がよくないか?」
「んー、それはわかるけど、こういうのって結果でしょ? 独学で基礎を学んで結果が出たら、それはそれでいいのではと」
「まぁそう言う考え方もあるわな~。ま、好きにしなよ。こういう効率的にとか、体系的にとか、そういう分野においては天才的なお前の頭の中は、俺にはわからんよ~」
「うん」
「あ! そういや、ちゃんとバレなかった?」
「問題ない、はず…俺が寝静まった後に、忍び込まれたりしていたらわからん…」
「そりゃねーだろ…。それもう完全に夜這いじゃん……」
「とりあえず、12時ぐらいから開始らしい」
「おけー、適当にしてるわー」
というと、直人はゲーミングチェアに座った。
その後、直人と暫く雑談していると、スマホに莉乃愛から『来ていいよー』と連絡がきた。
「来ていいよーとのこと」
「んじゃ行くかー」
「プレゼントは?」
「流れが全くわからんから一旦置いとく」
「また取りに来るのだるくない?」
「いいから置いとく。パーティー初心者のお前は、この件で俺には意見できない!」
「た…たしかに……」
「んじゃ行くぞ」
俺と直人はスマホだけ持ってパーティルームに向かった。




