ダメージ勝負
それから、莉乃愛が家に来る前の日常に戻るなんてことはなかったが、ようやく学校に行って配信をして学校に行って…という、高2から続けてるルーティーンに戻った。
「アーク、そっちに敵行ったよー」
「あ、了解です」
今日は、大会以降ちょくちょく一緒に配信をしているgoodさんと、OPEX配信を行っていた。
「やりましたー」
「ないすぅ」
「アーク、このあとどうするー? ランク行く?」
「そうですねー、フルパじゃないデスト帯はちょっときついかもですが、これ終わったら行きますか?」
「おっけー」
そう話している間も、敵を倒すgoodさんと俺。
その試合が終わりロビー画面に移動すると、
「ちとトイレ行ってくるわー」
「了解です」
そう言いgoodさんがディスボをミュートにした。
俺は待っている間、適当に他の方々の配信を見ていると、ちょうどゆきはさんもソロでOPEXの配信をしているようだ。
配信を覗いてみると、いつも通り雑談しながらOPEXのカジュアルモードを配信している。
「そろそろダイヤに向けて、ランクやらないとねー」
『お、ダイヤ道』
『たぶん行ける』
『接近戦がまだな~』
「そうなんだよねー、接近戦やっぱり焦っちゃうんだよねー」
『その気持ちはわかる』
『立ち回りが重要』
『アークの教えを思い出して』
「アークの教えー? 屋根上とるとかそこら辺は気を付けてるつもりなんだけどな~」
丁度俺の話題が出たので、
『Ark:与ダメを増やすではなく被ダメを減らす。です』
と、俺がアーク公式チャンネルのアカウントでコメントすると、
『お、アークいる』
『なんと』
『本人おる』
「え、アークさんこんにちはー! えーっと、被ダメを減らすかー。確かにアークさん言ってた! あと、ショットガンを撃つタイミングか」
『アーク呼ぼう』
『いいじゃん』
『アークを使い倒そう』
「使い倒すってーーーー! でも、結果的にだけど今まで散々お願いしちゃったけどーーー」
『大丈夫』
『アークをぼろ雑巾にしよう』
『まだアーク耐久値残ってる』
と、コメント欄が話していたので、
『Ark:一緒にやりますか?』
と、コメントすると、
「え! いいんですか?! いいのかな?? いっか! じゃあお願いします!」
『Ark:了解しました、では一緒にやりましょう』
「お願いしまーす!」
なんかその場の流れで急に一緒にOPEXをやることになってしまった。
しかし、これ大丈夫なのか? まぁもう言っちゃったし怒られたら謝ろう…
「もどりー、お茶とってきたからちと遅くなった―」
とgoodさんがディスボのミュートを解除にした。
「goodさん」
「んー?」
「1人呼んでもいいですか?」
「おー別にいいよ?」
「ランクはいけないんですが」
「んん? まぁ全然かまわんよ」
「んじゃちょっと待ってくださいね」
そう言うと、俺はゆきはさんにパーティー招待を送った。
「誰呼ぶん?」
「お楽しみです」
「なんだよー、まぁ別にいいけどー! そういやアークまた新キャラでるってやつ見た?」
「あ、見ましたよ」
と雑談しながらしばらく待っていると、ロビーにゆきはさんがきた。
「こんゆきー。えっとアークさん…まさかのgoodさんも?」
「あ、はい、一緒に配信してたので」
「え、あ、初めまして…ホロサンジ所属の日向ゆきはです!」
「お、え、あ、プロゲーミングチームダマスカスのgoodです」
「知ってます!」
「俺も知ってますよー! 初戦でやられましたしー!」
「あはは! なんかお邪魔しちゃってすいません…」
「全然いいよー!」
「ではゆきはさん、今日はなんとgoodさんもいるんで、ダイヤに行くために3人でカジュアル回しましょう」
「いいんでしょうか…」
「あー全然おっけー!」
「まぁgoodさんもいいって言ってるんで行きましょ」
「てか、俺、大会の後ゆきはさんの配信見て、チャンネル登録してんだよね…」
「え、あ、登録ありがとうございます! 日向ぼっこ仲間にようこそ~!」
「っうわー、聞いたことあるけど本物だ…」
そう言って俺達は3人でOPEX配信を開始した。
がっつり教えるって感じではないけど、「こうしたほうがいいよ~」とか「ここはこっちのほうがいいよ~」みたいな感じで、goodさんと俺が普通にプレイする中で教えていった。
「アークとは結構長い知り合いなんですよねー?」
「はい、そうですねー! 転生前から師匠です!」
「あはは、転生前から師匠ってうけるね!」
「いやー弟子が急にいなくなったんで、俺は酒に逃げてたんですよ…」
「アニメでありがちな展開(笑)」
「あ、これラストだからゆきはさんさっき教えたみたいに、ショットガン使ってみてくださいー」
「了解です!」
そう言うと、ゆきはさんが操作するキャラが前に走っていって、しばらくするとチャンピオンの文字が画面に出た。
「ナイスでーす」
「なんか、慣れるまで大変ですね」
「まぁでも、早めに慣れておかないと、後がつらいですからねー」
「そうですねー、なので頑張ってください!」
「はい!」
俺はそこで時計を見ると、もうすぐ3人で配信して2時間ほどになる。
「それじゃ次ラストにしましょうかー」
「おっけー」
「了解です!」
「あ、最後ダメージ勝負やります?」
「いいねー」
「それ私絶対勝てなくないですか…」
「俺らロング無しの武器1本縛りでどうですか?」
「俺は全然おっけー」
「ロングで稼げばいいのか……わかりました!」
「なんか罰ゲームあんの?」
「んーーーーなにがいいですかね」
というと、各自のコメント欄に様々な案が出された。
いや、様々な案ではなかった。
『萌え声』
『ゆきはの萌え声』
『萌え声一択』
と俺の配信画面はそればかりだ…。
「えーっと俺の配信では、萌え声1択だと…」
「あ、俺のところもほとんどそれ…」
「えーーーーーーー! ちょっとゆきリスさん! なんか案ください!!」
暫くすると、
「勝てばいいって言われてるんですが…」
「まぁ、そんな大掛かりなこともできないんで、負けた人が勝った人が指定した言葉をイケボか萌え声で言うって感じにしましょうか」
「んじゃそれで行くかー」
「えーーーーー、絶対勝つ!!!」
そう言って、ラストマッチに臨んだ。
goodさんと俺は大人げないぐらい本気でやった。
「ちょ、ちょっと!! 2人とも本気出しすぎ!!!!」
「あ、goodさんこっち敵いるんで来ないでくださいね」
「は? 一人で持ってくなし」
「ちょっとちょっと待って!!!!」
そして、チームで27キルして優勝するという試合になった。
「さーダメージはどうですかねー」
「どうかなー」
「2人とも本気出しすぎですって!!! さっきまでと全然違うじゃないですかーーーー」
「お、えーっと、あーーー残念ながらゆきはさんの負けですね」
「そうですね、goodさんに勝てなかったのはちょっと残念ですが…」
「うわぁぁ、ダメージ倍以上違うじゃないですかぁ…」
「それじゃあ、勝ったgoodさん、ゆきはさんに萌え声で言ってもらう言葉をお願いします」
「んーーー、そうだなーーー、「また来てね」とかどう?」
「あ、いいですね」
「本気ですかーーーーー……萌え声……ちょっと待ってくださいね、練習してきます…」
そう言って、ゆきはさんはミュートした。
「ゆきはさんのリスナーさん俺達がんばりましたよ」
「そうだ、頑張ったぞ。感謝してくれ」
「はい、頑張りました」
「これは称賛に価すると思う」
「そう思います」
と俺とgoodさんが話していると、ゆきはさんが戻ってきて、
「んんんんっん! 行けます! やります! 女に二言はありません!」
「あ、では、いきますよー。ゆきはさんの「また来てね」、3、2、1」
「んんんんんっん! ん! んん!」
「またきてね♡」
「はずかしすぎるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「これは、本当我々頑張ったと思います。」
「いや、本当」
「やばいーーーーーーーーー! 今めっちゃ顔赤い気がするーーーーー」
「いやー、ゆきはさんすいませんでした。でもすごい可愛かったですよ。ね、goodさん?」
「うん、普通に可愛い、だから大丈夫!」
「はずかしいーーーーーーーーーーーーー」
と暫く3人で雑談して、
「では今日の配信はここまでにしましょうー、goodさんゆきはさんありがとうございました!」
「こちらこそありがとー!」
「ありがとうございます!」
「では皆さんまたー」
そう言って配信を終えた。
俺はコーヒーでも飲もうかと部屋を出ると、
「ただいまー」
と、友達と遊んできたのか、首に大きなマフラーをまいた莉乃愛が帰ってきた。
ってかマフラー巻くぐらいなら、その短いスカートなんとかすればいいんじゃ…。
と俺は思いつつも、
「りのあ、お帰り」
「あ、うん、ただいま! あっくん後で部屋いくねー!」
「うん?」
そう言うと莉乃愛は靴を脱いで自分の部屋に向かっていった。