【中里雪菜視点】初めて思った
そして、彩春の学校の文化祭当日となった。
放課後、今日は詩織と二人で動画がどんな感じになっているのか、彩春のビデオ通話でミスコンを一緒に見ることになっている。
「しかし、どんな感じに出来上がったんだろー!」
「ひ…秘密…」
「まぁ楽しみにしとくよ!」
「でも、詩織もちゃんと映ってる!」
「目指せわき役は誰だ状態!」
「詩織そんなことしなくても、普通に彼氏ぐらいできるでしょ…」
「えーそれは今はいらない! 高校生活は雪菜と二人で楽しむって決めたんだ!」
「あ、うん、私は嬉しいけど…」
「しーかーもー、日向ゆきはの…」
「ちょちょっと…!」
と詩織の口をふさぎ、2人で「あはは」と笑っていると彩春から着信がきた。
「あ、おねーちゃーん?」
「あ、うん、聞こえてるし見えてるよー」
「今からミスコンはじまるー!」
「そ、そうなんだねー!」
「とりあえずこの携帯はずっとこんな感じで撮影しておくからー」
「ありがとね! 写真とか大丈夫なの?」
「茜が撮るから大丈夫!」
「こんにちはー!」
と茜ちゃんが脇から出てきた。
「手で持ってると疲れちゃうから、茜に持ってきてもらった三脚で撮るね!」
「あ、うん、ありがとね!」
そう言うと、ステージに司会の人が登ってきてコンテストが始まった。
うちの学校は文化祭がないので、詩織と2人であーだこーだと感想を言いながら見ていた。
そしてついに、りのあちゃんのクラスの番になった。
まずは男子からなのだが、それが面白かった。
もちろんその男子のことは知らないんだけど、ギャップをつけて登場した本人が陰キャになっていたのだ。
しかも、たぶんこれモデルにしたのは湯月くんだ。
海に行ったときに華蓮ちゃんが、「あっくんの勉強会はやべー」って話していたし、絶対その時のやつだ…。
しかし、ふふふ、湯月くんの真似をしていると思うとなんか本当に面白くなって、ふふふとずっと笑ってた。
「んー、雪菜あの男子知ってるのー?」
「え、いや、あの男の子は知らないけど、なんかあのギャップ後の姿が知り合いに似てて…」
「あぁ、なんか身近にいる人と似てると、こういうのってうけるよねー(笑)」
「そうなんだよ(笑)」
「あ、いよいよじゃん?」
「あ、見なきゃね!」
と画面を見ると、ついにりのあちゃんが登場する番になった。
そして流れた動画は、一回見てたけど、スクリーンで見るともっとすごそう。
やっぱりすごい完成度だ。
「ゆ…雪菜…このクオリティはもう高校生じゃないでしょ……」
「私も最初見た時びっくりしちゃった…」
「最後雑誌かよ……」
「本当にね…」
「あ、本人登場だ! いよいよだね!」
そう言うと、もう一回会場が暗くなり、今度は私の動画が流れた。
「え、雪菜の横の私めっちゃ美人じゃない??」
「そうだよー」
「え、てか、雪菜やば…鬼可愛いじゃん………本とか読んだっけ…?」
「いや、全然読まないんだけど、直人くんがそっちの方が雰囲気出るって」
「た…確かに……こうやって芸能人が出来上がっていくのか…」
そして最後に「西の中里 中里雪菜」と出ると、会場がドッと沸いた。
「やっばー! これは会場でみたかったなーーーーー」
「た、たしかにね…」
「ねーねー、この動画限定公開あるんでしょ?」
「あるよー、後で送るね!」
「ありがとー! 親に見せよー!!」
そして、りのあちゃんがステージに出てきた。
「ええ?????」
私は驚いた声をあげると、
「ど、どうしたの雪菜?」
「こ、これ……りのあちゃん髪切ってる……」
「まじ?」
「うん、色まで…」
「うわ、雪菜の髪型とほぼ同じ……ガチじゃんーーーー!」
そして、挨拶したりのあちゃんは、自分で言うのもなんだが、私の喋り方に似ている。
「うっわーーーーーーーー! これやばすぎーーーーーーーー!」
「…」
「声は東の菅谷さんだけど、これは雪菜だわ…」
「妹と猛特訓したらしい…」
「メイクも雪菜テイストだ…」
「妹がやったらしい…」
「完全に妹プロデュースしてんじゃん…」
「もう張り切っちゃって…」
「いやでも気持ちわかるわ…ここまでやってくれるならやりがいある」
「そ…そうだね……」
「会場やばいことなってんじゃんー」
もうりのあちゃんが一言話すたびに、動くたびに会場が沸くのだ。
私はその光景をみながら、もちろんりのあちゃんなんだけど、私になりきってるからか、自分のように思えた。
もちろんりのあちゃんだからってのはあるけど、顔を出すってのも悪いことじゃないのかもしれないと、バーチャルをやり始めてから初めて思った。
「これ、まじで会場で見たかったね」
「そ、そうだね…あ、動画送るね?」
「お、サンキュー」
そしてそのまま、最後のクラスまで終わり結果発表となり、女子は何と80%以上の投票率でりのあちゃんだったらしい。
「いやー、わかるわー、あれ出てきたら勝てる見込みないねーー」
「いつものりのあちゃんも可愛いけど、私もギャップでドキドキしちゃったもん」
「あれ、雪菜だけどね(笑)」
「いや、そうなんだけどさ…」
と話していると、
「おねーちゃんどうだったー??」
と、画面の向こうから彩春が話しかけてきた。
「いや、すごかったね」
「本当! まじやばかった! 後で写真撮ってもらおうっと!」
「あ、それと、この後菅谷さんのクラスの打ち上げに、私と茜と茜のお兄ちゃんも呼ばれてて、もしよかったらおねーちゃんと詩織さんも来ない?」
「行く!」
「ちょ詩織!」
「えー行こうよー! 私も生雪菜な菅谷さん見たいー」
「もー、21時過ぎから配信があるから、遅くとも20時半までに家に帰れるなら…」
「おっけおっけー!」
「そしたらおねーちゃん、19時半には駅にお父さんに迎えに来ておいてもらおうよ!」
「あ、うん、それは嬉しいかも」
「んじゃお母さんに言っとくー! 時間と場所のURL送るねー!」
というと、通話が切れた。
「え、めっちゃ楽しそうじゃーん!」
「りのあちゃんのクラスだから、なんか勢い凄そうだね…」
「まぁでも妹も来るわけだし! いいじゃない!」
「そ、そうだね!」
そうして私と詩織は、りのあちゃん達のクラスの打ち上げに参加することとなった。




