一旦保留
「それでさー、そのミスコンみたいなやつにでることになったのね」
家に帰るとすぐに莉乃愛が部屋に入ってきて、俺のゲーミングチェアでくるくる周りながら話してる。
俺は制服のブレザーをハンガーにかけながら、
「そうなんだね、りのあモデルもやってるし得意なんじゃない?」
「まぁ撮られるのは慣れてるけどさー」
「というか、昨日言ってた進路はどうなったの?」
「んー? それは一旦保留! ミスコン全振り!」
さも当然みたいな感じで莉乃愛は言った。
一旦保留にしていいようなタイミングではない気がするんだが…
まぁ決めてない俺が言うのもなんだけど…
「そ…そっか、まぁりのあらしいね」
「でもさーギャップってよくわからないんだよねぇ」
「まぁ個人の主観だもんね。でも、要は「普段とは違う」というインパクトがあればいいわけでしょ?」
「まーそう言うことなのかな?」
「動画のりのあを、不自然でないぐらい必要以上に陽キャっぽい感じで撮ればいいんじゃない?」
「んーーーー難しいというか、よくわからない…」
「んー、まぁ確かに俺も明確に説明するとなると難しいね…」
と、俺は自分のベットに座った。
「それにさー、動画ってスマホで撮ればいいの?」
「まぁ撮るのはスマホでもいいかもしれないけど、編集はした方がいいんじゃない…」
「どうやってやるの?」
「…えっと……誰かできる人いないの?」
「いるわけなくない? うちらだよ?」
「…」
「ねーあっくーーーーん」
「いや、それはまじで無理! 今、動画撮りに行って編集してってほどの余裕は本当ないって…」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーー」
と莉乃愛は口をとがらせてこっちを見ている。
「いや本当……あ、直人に頼めば?」
「できるの?」
「知らないけど、出来るでしょ。ってか調べるの上手い人なら普通にできるから」
「なるほど! 四谷パワーだね!」
どんなパワーか全然わからないけど…
「なんかよくわかんないけど、そんな感じ。直人に電話するね」
俺はそういうと、スマホをスピーカーにして直人に電話した。
暫くすると、
「んーなんだー電話珍しいー」
「よっ! 直人! りのあだよ!」
「おわっと! りのあちゃんか!」
「あー、一応俺もいるよ」
「ああ、スピーカーか。んでどうしたの?」
「直人くん、お願いがある!」
「んん? なに?」
「動画作って!」
「ええ?」
俺が要点をかいつまんで伝えると、
「なるほどねー。作ったことないけど何とかなると思うからいいよー」
「やったー! ありがと!」
「てか結構面白そうだし本気でやってみるか」
「動画の本気ってなに?」
「まーまーりのあ、そこら辺は直人が考えるから」
「それもそうか!」
「あ、てかどうせやるなら親父の会社のカメラ借りるか」
「それガチよりのガチのやつじゃん」
「ついでにライトとかも借りるか」
「あの雑誌の撮影とかで使うようなやつ?」
「そうそう、てかそこまでやるなら親父も巻き込んでみるわ。りのあちゃんと雪菜ちゃんだし、会社で動画部門検討してるらしいからのってくるかもしれない」
「んーわたしはよくわかんないけど、動画作ってくれるならおっけー!」
「りょーかい! んじゃちょっと親父に相談してくるから電話切るねー」
「ばいばーい!」
そう言うと、電話が切れた。
「ねーねーあっくん、直人の家って芸能事務所だよね?」
「そうだよ」
「そこ巻き込むって、なんかすごいもの出来上がりそうじゃない?」
「まぁ本当に関わってくるなら、間違いなくそうなるだろうね…」
「えーーーーーーーー! めっちゃ楽しみになってきたー!!! 華蓮に電話しよー!!!!」
というと、バタバタと部屋へ戻っていった。
ふぅと俺は息をついて、ベットから立ち上がると部屋着に着替えた。
そして、今日はspikeさんと配信をする予定なので、配信の準備をしてOPEXを起動した。
3時間ほど配信して、遅めの晩御飯を食べて部屋に戻りネットを見てると、「むーん」と何かを考えてる感じで莉乃愛が部屋に入ってきた
「りのあ、部屋間違えてない?」
「え? あっくんの部屋でしょ?」
「あ、俺の部屋の認識で入ってきたのね…」
「あ! コンコン!」
「もうノックしなくて大丈夫だよ…(笑)」
「りょ!」
「それでどうしたの? なんか考えてる風だけど…」
「いやさー、華蓮とさっき電話してたらさ、「清楚りのあはギャップ凄いけど、誰がモデルとかわかった方が盛り上がらない?」って言っててさ」
「なるほど、まぁ、確かにそうかも?」
「でも雪菜って別に芸能人ってわけじゃないから、駅とかで見たことある子はもしかしたらわかるかもだけどーって感じじゃん?」
「まぁそれはそうだろうね…」
「どうしようかと思って、考えてる風にあっくんの部屋に来た!」
とりのあはテヘっとしながら言った。
考えてる風ってことは考えてないのか…
「んーー…あー、「西の中里」っていう言葉は結構有名なの?」
「まぁうちの学校の近くの高校生なら大体知ってんじゃん?」
「そしたら、りのあが撮る動画みたいな感じで、普段の雪菜さんを撮影した動画を作って、西の中里ってテロップいれてもらって、その動画をアピールタイムで流したら?」
と俺が話すと、莉乃愛は目を輝かせながら、
「それは、天才すぎる! 流石あっくん!」
「あ、でも雪菜さんがオッケーか聞かないといけないけどね」
「雪菜に聞いてみる!」
そう言うと、莉乃愛はスマホを操作しながら部屋を出ていった。
翌日の朝、俺がリビングにコーヒーをとりに行くと、朝食を食べている莉乃愛が、
「雪菜に聞いたら「事務所に一応確認するけど、普段から普通に話してるし大丈夫だと思うよ!」って言われた!」
と、話しかけてきたので、
「そっか、直人に雪菜さんの分も撮ってもらうことになるかもって、学校で言っとくよ」
「おね!」
その後、ダイニングテーブルに座った俺は、莉乃愛との会話というかもはや莉乃愛の独り言を聞きつつコーヒーを飲んで部屋に戻り、着替えて学校に向かった。




