思ってたり、思ってなかったり
序盤同じですが、本話から再構成しています。
現状プロット作りながら書きながらなので、その点ご容赦いただけますと幸いです
その後、個別の配信に戻って投げ銭とかも途中でもらっていたので、それらを読み上げつつ感想なんかも話して、配信を終了した。
こうして、俺の初めてのOPEXの大会は2位という結果で終わった。
イヤホンを外し、のどが渇いたなとリビングにお茶を取りに行くと、
「あっぐうううううん!! よかったよぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」
となぜか大泣きしている莉乃愛が話しかけてきた。
「え、あ、え?」
そう思いリビングのテレビを見ると、俺の配信が開かれていた。
家族で観戦してたのか…
「あ、うん、ありがとう」
「最後めっちゃ感動して泣いちゃったんだけどおおおおおお」
そう言う莉乃愛に、ティッシュをとって渡すと、スビビビ!っと豪快に鼻をかんだ。
「…ズッ…本当いい試合だったねぇ」
「うん、結構頑張ったつもり」
「ってかゲームでこんなに感動するんだねぇ…」
「いや、おれも4戦目に勝った時かなりうれしくてびっくりした…」
「最初のあのキルムーブ? 実況の人が説明してから、なんか本気感伝わってきてめっちゃ見入っちゃったしぃぃ…ズッ」
「キルムーブ成功して本当よかったよ」
「本当本当、雪菜もめっちゃ頑張ってたし…あ、雪菜に連絡しよ」
そういうと莉乃愛はテーブルの上のスマホを取りに行き、スマホを操作しだした。
俺はひとまずお茶を飲み、部屋に戻りネットでSNSを見てみると、今回の大会がすごい盛り上がっていたことがわかった。
1戦目のキルムーブは急上昇ワードなんかにも入っていたみたいで、まりんさんやゆきはさんのSNSはコメントがすごいことになっていた。
そして、俺は自分のチャンネルを見てみると、なんと登録者が9万人を超えていた。
その後、自分の配信アーカイブから、1戦目のキルムーブを切り抜き、配信アーカイブ以外で初めて自分のチャンネルに動画投稿をして寝た。
次の日学校に行くと、
「新、昨日はまじでよかった。不覚にも泣いた」
「ご視聴ありがとうございました」
「てか俺もあのゲームやりたくなるぐらい、めちゃめちゃ面白かった」
「教えないよ」
「親父にも伝えてたから見てたっぽくてさ、親父もめちゃめちゃ感動して泣いたみたいで、あんなに感動するんならって、マジで事務所に動画部門を作るか検討するらしい」
「へぇー。まぁなんかいいきっかけになったならうれしいよ」
「てか雪菜ちゃん、あんなアツい感じなんて全然知らなかった」
「いや、それに関しては俺もびっくりした」
「でも、きっと本気でやってたんだろうな…」
「きっとね。俺も本気でやったしさ」
「ちなみに茜も大泣き。あれ昨日お前らのチームの配信見てた人みんな泣いただろ…」
そんな話を直人としていた。
そして学校が終わり家に帰り、ソロ配信でもやるか―と自分のチャンネルを開くと、昨晩投稿したキルムーブの動画の再生数が50万を超えていた。
それからは、普段通りの日常に………………………………戻らなかった。
まず、今回の大会では敵だったgoodさんや、以前誘ってもらってたspikeさん等プロチーム所属の方々から一緒に配信しようと結構な数のお誘いがきた。
とりあえずまず最初にと思って、goodさんと配信を行うと、「まじで初戦のキルムーブはやられたわ」と感想をもらい、「正攻法じゃ勝てませんから(笑)」なんて話しながら、一緒にOPEXのランク配信を行った。
次に、以前ご一緒した個人勢のバーチャル配信者の方々からも、一緒に配信してほしいとご連絡をいただいた。
全て受けるのは無理な状態になってしまったので、とりあえずあげはさんと一番最初にご一緒した楓なぎささんと配信を行うと、「えー、なんと一番最初にやったからと、運よく時の人とご一緒できることになりました!」と紹介されたりもした…。
そして、動画配信者をマネジメントする会社の、それこそもうほとんど全部なんじゃないかと思うぐらいの会社から、所属しないかと勧誘の連絡が来た。
中には、最初の連絡ですごい破格の条件を出してきているような会社もあったが、とりあえずは、全ての会社に検討しますとだけ返事した。
更に、ホロサンジからは、俺がまりんさんゆきはさんというホロサンジ所属の2人とチームだったこともあり、太田さんから再度勧誘された。
正直マリンスノーの箱舟は実力以上の順位に食い込めたのは間違いないので、他のホロサンジの方も育成枠に出てみたいと言っているらしく、バーチャルじゃなくてもいいからなんとかならないかと結構食い下がられたが、お断りした。
お断りすると「他の事務所に所属するとかは決める前に必ず教えてください!!」とだけ、念押しされた…。
そもそも、ゆきはさんのプラチナ道が終わったので、育成枠の予定すらないのだが…。
投稿したキルムーブの動画は100万再生に迫る勢いで、俺のチャンネルの登録者数も10万人を超え、止まることなく増えていった。
配信者名のSNSは作っていなかったのだが、偽アカウントがあると直人から送られてきたので、流石に困ると思い、配信者名の公式のアカウントも作ることになった。
配信の方は、登録者の方から立ち絵をもらい、同じ方が「サムネイルも言ってくれれば作るよー」と仰っていただいたので、最近はサムネイルを変えてその立ち絵を載せて配信するようにもなった。
収益の数%をお礼としてお渡ししますと話したが、公式のSNSで誰に書いてもらったって言ってもらえる方が嬉しいということなので、運用する予定のなかった公式のSNSの運用も始めた。
大会時のマリンスノーの箱舟の人気もすごく、様々な切り抜きも投稿された。
中でもまりんさんが投稿したダイジェスト版『マリンスノーの箱舟の航海日誌 前編/後編』は、もうすでに100万再生を超えている。
なんか急激に忙しくなったなぁとこの1週間ぐらいを振り返りつつ、spikeさんとの配信が終わりドアにかけたホワイトボードを外した。
暫くすると、ガチャっとドアが開いた。
「ねー、あっくん!」
もうノックもしなくなった莉乃愛が入ってきた。
最近はもう指摘するのも面倒くさくなったので好きにしてもらってる…。
「んー、どうしたのりのあ?」
「あっくんってさ、どこの大学行くの?」
「ええ、急にどうしたの?」
「なんか今日学校で先生に、進路を決めろって皆言われたんだけど、なんも考えてなかったからあっくんどうなのかなと思って!」
「なるほどね…結構進路決めるの遅いんだね」
「まぁほとんどの子が就職とか専門学校とかで、そんなに悩む必要もない感じだからねー」
「な、なるほど…そうなんだね」
「それで、あっくんはどこの大学行くの?」
「んー悩んでる」
「でも、どこでも入れるんでしょ?」
「まぁそれはそうなんだけど…」
「ま…まさか海外とか…?」
と驚愕の表情を浮かべた莉乃愛に聞かれた。
「いやいや、流石に俺こんなんで外国で生活できる気がしないよ…」
「そ…そっか…よかった…」
と、ホッとした感じでニコッとする。
莉乃愛は会話一言一言で表情がコロコロ変わって、本当に忙しそうだ…
「そ、それでどこの大学で悩んでるの? 帝都がいい!」
「えぇ? いや、まぁ帝都にいることは間違いないと思うけど、なんかあるの?」
と莉乃愛に聞くと、
「と…遠くは…嫌だなーって……思ってたり…思ってなかったり……」
少しはにかんだ感じで手を首の後ろに回して、斜め下を向きながら言った。
まぁ、莉乃愛にとってはつい最近家族ができたみたいなもんだから、そういう感じに思ってもしょうがないか。
と思いつつ、俺は答えた。
「帝都を出るってことは考えてないから、心配しないで」
「そ…そっか! じゃあ、帝都内の大学で悩んでるんだね!」
「んー、というか大学に行くか行かないかを悩んでる」
「えぇ? そこ?!?! 大学って入った方がいいんじゃないの??」
「まぁ入った方がいい側面ももちろんあるけど、今は昔と違って大学入ってないからと言ってすべてが決まってしまうような世の中じゃないからさ」
「そうなの? でも帝都内ならいいや! ありがと!」
そう言うと莉乃愛は部屋を出ていった。
家族ねぇ~、と思いつつ、俺はネットを見だした。




