理由は俺
初の練習試合終了後、3人でもう少しやろうということで、OPEXを続けることになった。
「アークさん今日の反省点をー」
とまりんさんが話しかけてきたので、
「んー…細かいところは色々ありますけど、ちょっと思ったよりポイズン環境になりそうなんで、今のままのキャラピックで行くとゆきはさんの立ち回りの重要度が非常に高くなりますね…」
「ええええ、私ですか…？？」
「そうですね…」
「それは荷が重いというか…」
「ですよねぇ…流石にOPEX歴が違いますからねぇ。ちょっとキャラ構成変えましょうか？」
「どんな感じ？」
「ゆきはさんにスキャン練習していただいて、俺がポイズン、それでまりんさんが次元。もしくは、俺が今日のまま次元で、ゆきはさんとまりんさんのキャラピックを交換でしょうか」
「んーーーーー」
まりんさんが悩んでいるので、
「ではちょっと次軽くやってみましょう。まりんさん次は次元をピックしてください！」
「おっけー！」
ということで、その後何回かキャラ構成を変えて練習し、俺がポイズンでゆきはさんがスキャンまりんさんが次元で行こうとなった。
これで終わりにしようとなり、3人でロビー画面で話しているとまりんさんが、
「これは次元の練習しなきゃだなぁ」
「私もスキャンの練習しなきゃ…まりんさんすいません」
「ああ、いいっていいって！ チームなんだし皆で頑張ろうよ！」
「はい！」
「アークさん次元のコツ教えてね！」
「はい、俺が教えられることなら！」
「じゃあマリンスノーの箱舟の配信は今日はここまでです！ 明日もあるから見に来てね！」
「「おつかれさまでーす」」
そう言って各々の配信に戻り、配信を終えた。
それから毎日、学校から帰ってきてすぐにチームで練習。
練習試合前に1時間休憩して、練習試合という日々を過ごした。
雪菜さんは自分が迷惑をかけてしまっていると思っているようで、結構頑張ってスキャンを練習している。
まりんさんは元々OPEX歴が長いので、割とすぐに順応して、より精密なタイミングでチャージが出せるように練習していた。
そして練習試合4日目の3試合目に、
「いやったーーーーーーーー！ 初めて勝ったーーー！！！！」
とまりんさんが喜んでいる。
雪菜さんも、
「えーーーー！ めっちゃうれしいーーー！」
と喜んでる。
『いけるぞ』
『戦える』
『まりんちゃんプロに撃ち勝った』
『ないちゃんー！』
と二人のコメント欄も大盛り上がりだ。
俺のコメント欄はというと、
『あの場面は、チャージがちょっと早かったな』
『まりんちゃんのフォローが良かった』
『ゆきはちゃんスキャン上手くなったな』
と、なんだか配信者の性格がそのまま出ているような感じになっている。
OPEXにはキャラ毎に、チャージという必殺技みたいなものと、スポットという技みたいなものがあり、このタイミング次第で結果が大きく変わるのだ。
その後2試合練習試合を終えて、
「おつかれさまー」
「おつかれさまでーす」
「いやー、優勝できたのは最高だったね！」
「本当です！」
「てか、今日だけじゃなく平均的に順位もそんな悪くないし、結構いい線いきそうじゃない？」
「そうですね、恐らく上から3番以内ぐらいには今日なら入っていたかもしれません」
「この調子でがんばろー！」
「おー！」
「んじゃ今日は皆ちょっと用事があるので配信はここで終わろー！ 皆ありがとう！ マリンスノーの箱舟これからも応援してください！」
「「おつかれさまでしたー！」」
そう言って配信を切った。
「それでアークさん配信外で相談というのは？」
「本当、どうしたんですか？」
と二人が配信を切った後ディスボードで話しかけてきた。
「えっとですね、大会当日の1試合目、俺らキルムーブしませんか？」
「え、本気？」
「はい、結構本気です」
「私キルムーブってやったことない…」
「本気でやるの…？」
「えっとですね、まずはそう考えた理由をお話ししますね」
「うん」
「大前提、俺らはあくまで総合優勝を目指して勝ちに行くって認識でお二人とも大丈夫ですか？」
「「もちろん（です）！！」」
「であれば、何か策を講じないとかなり厳しいと俺は考えてます」
「ふむ」
「理由は俺です」
「え、アークさん常に最大火力だし最大キル数じゃない？」
「それはそうなんですけど、プロの例えばLuuさんやgoodさんと対面で撃ち合うことになると十中八九勝てないと思います」
「ふむふむ」
「もちろんOPEXはチーム戦なので、チーム力も大事なんですが、局面局面では個人の力がものを言います。現にLuuさんのチームは、何回も優勝していると思います」
「確かに」
「なので、このままだと、ランクが上の人の火力の差で負けてしまう可能性がかなり高いと思ってます。本当申し訳ないです…」
「いやいや、うちらめっちゃ楽しくやれてるし、アークさんのおかげだから！」
「本当ですよ！ リスナーさんもめっちゃチームの雰囲気がいいって言ってくれてます！」
「それはありがたいんですが、やっぱり勝ちに行くとなると何か必要なんです。それで考えたのが、今回初めて開催される大会のそれも初戦だからこそ、成功確率が上がる、キルムーブです」
「なるほど…」
「あくまで俺の仮説ですが、まず初戦は、皆どんな感じか様子見すると思います。対して最終戦は、もしかしてワンチャンみたいなチームがキルムーブに切り替えて荒れると思います」
「んー確かに」
「最終戦で焦っても、そういう環境なんでいい結果にはつながりにくい、であればみんなが様子見する初戦で一気にキルポイントをかっさらおう！ という作戦です」
「なるほどね、確かに一理あるね」
「はい。もちろんキルムーブなんでリスクもありますが、リスクを回避し続けてこもってても優勝できることもないと思うんです」
「確かにそうだね」
「なので、大会初戦のキルムーブに向けて、キルムーブの練習を少ししませんか？」
「なるほど…キャラはどうするの？」
まりんさんが聞いてきた。
「本当は俺が次元で、まりんさんがスキャン、ゆきはさんはライフで俺やまりんさんがダウンしたら速攻起こす。という感じがいいんですが、大会中に扱うキャラが変わるってのも、その後の試合大丈夫かなと思うところもあり…」
「んー、得意なやつだし大丈夫じゃない？」
「一回やってみましょうよ！」
そう雪菜さんが言うので、
「そうだね！ 一回やってみればいい！」
「了解でーす！！」
