無理だから
それから数日後、顔合わせ配信の当日になった。
まずは運営側から既に参加が発表されているまりんさんが配信を開始し、そこにゆきはさんが合流し、最後に俺が合流するということになっていた。
「こーん! まりんです! 今日はー、先日発表のあったOPEXの大会に一緒に出るメンバーが決まりましたのでその初顔合わせ配信です!」
『お、ついにきまったか』
『だれだれ』
『いいメンバーに期待』
「はいではまず一人目!」
「こんゆきー! ホロサンジ所属の日向ゆきはです! 今回まりんさんにお声がけいただきご一緒させてもらうことになりました!」
『ついにきた!』
『転生告知の子か』
『まりんちゃんコメントしてたもんね』
『ちゃんと言ったこと守るのまりんちゃん偉い』
「そしてー、二人目は、色々考えた結果この方になりました!」
「こんにちは、アークです。一応一番ランクが上にはなるのですが、プロの方に比べると見劣りしてしまうので、必死に頑張ります」
『なんと』
『まさかのアーク』
『流石にきつくないか?』
「はいはーい! 一応アークさんからも事前に、その話は言われていて、ただOPEXってチームだから、育成枠やってくれてるしホロサンジとの練度を重視しました! もちろん勝ちに行くから!」
『まぁ確かに練度は重要』
『でも火力不足にならないか…』
『まぁまりんちゃんが言うなら…』
「と、言うことで今日はこの3人でOPEXやっていこうと思いますので、みんな見ていってね! アークさんキャラ構成どうする?」
「そうですね…現時点では大会環境がどうなるかわからないので、何とも言えませんが…お二人得意なキャラとかありますか?」
「うちはー、スキャンかダッシュかなー」
「私は、ライフかポイズンですかね…」
「なるほど、そうすると大会環境でライフが活躍できる場面は結構少ないと思うので、ゆきはさんポイズンでまりんさんスキャンで、俺が移動系の王道な感じでやってみましょう」
「おっけー!」
そう言って3人でOPEXを始めた。
「まずはチーム名決めなきゃねー」
そうOPEXをやりながらまりんさんが話してきた。
「まりんさんが決めちゃっていいですよ!」
「えー! チームなんだから一緒に決めようよゆきはちゃんー」
「あ、そ、そうですね! そうなるとー…」
とゆきはさんが考え出すと、各配信者のコメント欄にチーム名案が流れてきた。
『アークと愉快な仲間たち』
『海物語』
『転生告知会場はこちら』
と俺の配信を見てくれてる人からもコメントがきたが、俺は一旦チームのディスボをミュートにして、
「みんなまって。無理だから。俺から提案とか無理だから!」
というと、
『チキッたな』
『俺について来いぐらい言ってやれ!』
『諦めたらそこで試合終了』
とコメントが流れてきた。
俺がコメントに対しては話そうとすると、チームの方のディスボから、
「えーなになに。アークがミュートして自分の配信で、まりんがこわくて提案できないっていってる…なんだってーーーーー! アークさん! コラもどってこいーーー!」
と言われたので急ぎ戻り、
「いやいや、そんなこと言ってないですって! 誤解しかない! いやでも確かにちょっとびびってますけど…」
「なんで! こんなにか弱い乙女なのに!」
「いやいや、か弱い乙女って言いながら、銃乱射するのやばいですって!」
「そう言うゲームじゃん!」
「そ…そうですけど…!」
と俺とまりんさんが漫才みたいな状態になってると、ゆきはさんが、
「ふふふ、でも皆で仲良くなれていいですね!」
「確かに! さっきのリスナーさんグッジョブ!」
「いや、俺そんなこと言ってない…確かにちょっとびびってはいるけど…」
「まだいうかー!」
「あ、ご、ごめんなさいーーー!」
そしてその後、多くのリスナーさんからご提案いただいた中で、ゆきはさんのリスナーさんが考えた「マリンスノーの箱舟」というチーム名に決まった。
Arkに箱舟という意味があるので、あとはそれぞれの名前からとった感じだ。
そしてまりんさんが運営にチーム名を伝えて、決定チームとして発表された。
チームが発表されて俺のチャンネルの登録者数は一気に1万人以上増えた。
やるからには勝ちたい。
俺はこの日からOPEXの配信時間を増やし、チーム練習をしない時も積極的にランク配信を行った。
二人とも相談して、やるからには勝つ! という方針なので、ほぼ毎日チーム練習も行うことになった。
そして、出場20チームがすべて決まり、運営による出場チームだけが入れる練習試合が1週間開催されることとなり、今日がその1日目だ。
俺は一人で配信しながら練習場で試し撃ちをしていると、ディスボにゆきはさんが入ってきて練習場に登場した。
「アークさんいよいよですねー」
「どんな感じになるか楽しみですね」
「まだ練習試合ですけどね!」
と話していると、まりんさんも入ってきた。
「さーて、勝ちに行こー!」
「おー!」
「そう言えばランドマーク決めないとですね」
「ランドマーク?」
そうまりんさんが聞いてきたので、
「あ、俺も色々調べたんですけどこういうクローズドの大会形式の場合、降下場所を各チーム決めて被らないようにする場合が多いんですよ。プロの試合とかも大体そうなってます」
「へー、なんで?」
「降下直後ってアイテムが乏しいので、運次第では強い人も余裕で負けるんで、お互いそうならないように、かつ効率よくアイテム収集できるようにって感じですね」
「なるほど」
「そしていい場所=アイテムが潤沢な場所は取り合いになる感じですね…」
「そうなるよね」
「でも結構大事ですよね…」
とゆきはさんが言うので、
「はい…結構大事ですね…辺鄙なところしかとれないと、初期のアイテムが乏しいことが確定してしまうので…」
「なるほど…」
「なんで今日からはランドマーク争いって感じなりますね! がんばりましょう!」
「了解! なんか楽しみになってきたー!」
と、まりんさんは練習場で銃を撃ちだした。
そしてその日5試合して、マリンスノーの箱舟は2位が最高だった。
優勝はできなかったが、今日のところは無事ランドマークの確保はできた。
明日以降の練習試合で、「ここは俺達の場所だぞ!」と、アピールして維持しなければ。




