担当じゃない
そんなことを思ってると、ガヤガヤと2階から女子が降りてきた。
それを見た直人が、
「うわーー、やっべー! これは……………………………!」
と、テラスの方に戻っていった。
俺もテラスの方に戻ると、水着に着替えた女子がリビングに集まっていた。
これは……水着だから当然なんだが、もうモロなんだよ…
莉乃愛は白色の首の後ろで紐を結んだビキニで、服を着ていてもわかるぐらいスタイルがいいから、胸の部分が盛り上がっておりしっかり谷間ができている。下はショートパンツのままだ。
雪菜さんは、水色のなんか布を巻き付けたようなデザインのビキニで、莉乃愛ほどではないにせよ、こちらもまたしっかりと谷間ができていて、下はなんか薄い水色のひらひらした布を巻いている。
華蓮さんは、花柄のビキニで、髪もいつもと違いツインテールみたいな感じになっていて、すごく似合ってる。
「菅谷さんとおねーちゃんは、なんで高3でこんなに発育がいいんだ!!!」
と彩春ちゃんが叫んだ。
「スタイル良すぎだよねー!」
と茜ちゃんも叫び、
「「写真撮りましょう!」」
と、二人で莉乃愛と雪菜さんと華蓮さんに詰め寄っていた。
「おっけー!」と莉乃愛がいい、5人であーだこーだ家の中で写真撮影をしだした。
一通り写真を撮り終わったのか、ぞろぞろと皆サンダルをもってテラスに出てきた。
「どうよー?」
と莉乃愛が聞くと、直人が、
「やばいね、やばいよ。写真とっていい?」
「いーよー!」
といい、直人がスマホで莉乃愛や皆を撮りだした。
「湯月くん…どうかな??」
そう雪菜さんが話しかけてきた。
「…」
「あーーー雪菜ちゃん、新はただいま壊れたロボットを実演中です」
「実演中って…(笑)」
いやだって、無理でしょ…
本当お世辞抜きに全員、可愛いや美人って言われる容姿をしている上に、莉乃愛と雪菜さんにいたっては、もはや水着モデルだ。
「まぁとりあえず新は暫く置いとかないと稼働しないんで、皆あそこのビーチいこうー!」
「行こう行こうー!」
莉乃愛はそう言うと、サンダルを履いて海の方に向かっていった。
「おー気持ちいいー!」
と足だけ海につけた莉乃愛が言い出すと、「わたしもー」と皆向かっていった。
「おい、新、俺らも行くぞー」
と俺は直人に腕を引かれ、海辺に連れていかれた。
そしてサンダルのまま、海に少し足を入れると、冷たくて気持ちよかった。
海ってこんな感じなんだ…
そんなことを思って少しボーっとしていると、雪菜さんが、
「湯月くん、海いつぶり?」
と話しかけてきた。
「えっと、記憶がないぐらい小さい頃いらい…」
「え、そうなんだ…私は中学ぶりだから久しぶりって感じだね」
「そ…そうなんだ…」
「あ、そうだ一緒に写真撮ろう??」
そう言うと、雪菜さんが横に来て、スマホを自撮りにして写真を撮った。
すると、先に歩いていた莉乃愛が、
「ああーーーーー! あっくんがいちゃついてるー!!!」
と言いながら戻ってきた。
「お、お前雪菜ちゃんとツーショットなんて羨ましすぎるだろおおおおおお」
と言って、直人も戻ってきた。
そして、莉乃愛が、二人でとるというので写真を撮り、俺は最早なされるがまま様々なパターンで写真を撮られた…
そうこうしながら、俺達は近くのビーチまで海沿いを歩いていった。
ビーチにつくと、少し時期はずれているものの、そこそこ人がいた。
俺達はまず適当な海の家に入っていき、直人が場所をとった。
俺はもう日の当たるところにいすぎて疲れてきたので、一旦その海の家の中に入った。
「女子たちはー?」
「なんかあっちのかき氷買いに行くって」
「俺もいこーっと。お前ここいる?」
「あー、普段こんなに外出ないからちょっと休憩する」
「おっけー、ってかもうナンパされてんじゃん!」
そう言うと直人が走っていった。
すごいなぁ陽キャな世界だわ本当…。
俺つい最近まで家でひきこもってゲームしてただけだったんだけどなぁ
なんか俺がこの場にいることに俺自身がまだ付いて行けてないな…
そんなことを思いながら海の家で座っていると、遠くから「あっくーん!」と莉乃愛が向かってくる。
「あっくん! 見てみてこれ?! すっごいでかくないこのフランクフルト! めっちゃ映える!」
という莉乃愛は、左手にフランクフルトを持っていた。
「かき氷買いに行ったんじゃ…」
「買ったよ! 今あかねちゃんに持っててもらってる! はい、このフランクフルトあげるー!」
と俺にフランクフルトを渡してきた。
「え、いや、映える写真撮るんじゃないの?」
「もうあっちで撮ったから大丈夫!」
「いらないの?」
「うん、食べたかったわけではない!」
そういうと、莉乃愛はフランクフルトを俺に渡して皆のところに戻っていった。
なんで買ったんだよ…と思いつつ、俺は日陰の海の家で、もらったフランクフルトを食べながらスマホを見だした。
暫くすると中里姉妹と莉乃愛が海の家に戻ってきた。
「わたしたちも休憩―」
と莉乃愛がいい、3人が思い思いのところに座る。
「直人は?」
「茜ちゃんと華蓮と3人でなんかボートみたいなやつのるってあっち行ったー」
と、なんかボートとか並べてある方を指さした。
「りのあはいいの…?」
「え、わたし泳げないからああいうのはできないね!」
「え?」
「え? なに?」
「泳げないの?」
「うん?」
「え、なんで海に行こうって?」
「え、夏じゃん?」
「うん」
「海じゃん!」
「…うん」
「ってなるじゃん!」
「…」
「まぁこうやって皆と食べ物買ったり写真撮ったりしてるだけで結構楽しいし!」
と莉乃愛がニコッと言った。
もう本当に、陽キャの思考がまじでわからない…。
すると雪菜さんが、
「私も泳ぐのはそんなに得意じゃないけど、なんかこういうのはこういうので楽しいよね」
「だよねだよねー! ねーねーあっくんなんか買ってきてよ! ちょっとお腹すいた!」
「わ…わかった…なにがいいの?」
「いい感じで!」
「どんな感じだよそれ…」
と俺が困っているのに、莉乃愛は彩春ちゃんとSNSがどうだの話し出していた。
「ふふふ、私も一緒に行くね!」
そう言って雪菜さんが、席を立ったので、
「あ、ありがとう…」
と言い、雪菜さんと二人で食べ物を買いに海の家のカウンターに向かった。
雪菜さんと二人で、適当にシェアできそうな、焼きそばやたこ焼き、フライドポテトや唐揚げを買って戻ると、席に知らない二人組の男がいた。
「ねーねー、二人ともめっちゃ可愛いじゃんーいくつー? 俺らと遊ばなーい?」
「どちらさまー」
「俺らジェット運転できるからさ後ろのせてあげるよー?」
近づくにつれてそんな会話が聞こえてきた。
席の近くまで行くと、俺と雪菜さんに気付いた莉乃愛が、
「あ、あっくーん! お、たこ焼き食べたい!」
と言いながらこっちに手を振った。
それと同時に男たちがこっちを見た。
おいー…こういうの俺対応できないって…。直人―早く帰ってきてー……。
と思いつつも無視するわけにもいかないので、雪菜さんと二人で席まで戻ると、
「んー? 男連れだったのー?」
「まぁ一人しかいないし、俺らと遊ぼうよー」
「ってか君もめっちゃ可愛いね!」
と男達は雪菜さんを見ていった。
「ジェット楽しいよ! 安全運転するしさー!」
「興味なーい」
「そう言わずー乗ってみるとわかるってー」
「いや、ジェットに興味がないんじゃなくて、あなた達に興味なーい。あっくん食べよー」
莉乃愛はそう言うと、雪菜さんが持ってきたお盆から箸をとってたこ焼きを食べようとした。
「完全にガン無視してくれちゃってー、ちょっと調子乗りすぎじゃない?」
と一人の男が言い出すと、
「ってかお前もなんか言えよ。キモいな」
ともう一人の男が俺を見ながら言ってきた。
「…えっと…本人が…興味ないみたいなんで…」
「んあ゛あ゛? んだお前喧嘩売ってんの??」
「あ、いえ、それは俺の担当じゃないんで…」
と話していると、向こうからお店の人とかが出てきてこっちに向かってこようとしていた。
「チッなえたわ。行こーぜ」
そう言って男たちは海の家から出ていった。
そうしてお店の人が近くに来て莉乃愛達に「大丈夫でしたかー? 困ったことがあったらすぐ言ってくださいねー」と言って戻っていった。
そして、しばらくの沈黙の後、莉乃愛が、
「…く…くくく…あはは! ってかあっくん、担当じゃないってなにーーーー! めっちゃうけたんだけどぉーーー!」
と笑い出した。
「い、いや俺の担当じゃないからさ…」
というと、他の3人も「くくく」っと笑ってた。
「じゃあ担当誰なのよー(笑)」
と莉乃愛が笑いながら聞いてくるので、
「直人…かな?」
そう俺が答えると、彩春ちゃんが、
「くくく…ってかでも、菅谷先輩もあんなん無視してほっとけばいいじゃないですかー」
「えーだって、話しかけてくるからさー」
「菅谷先輩らしいですけど(笑)」
そう言って皆であははと笑って、買ってきたものを食べていると、ずぶ濡れの3人が返ってきた。
「いやーーーー、やべーーーー。めっちゃ濡れた!」
と直人が言うと、
「でも、めっちゃ最高だったわ! あのジェットに引っ張られるやつ最高!」
「うん、めっちゃ面白かったー!」
と、華蓮さんと茜ちゃんが話し出した。
すると彩春ちゃんが、
「お、喧嘩担当の直人さんお帰りなさい!」
「え? どういうこと??」
と直人が言うので彩春ちゃんが説明すると、
「あはは(笑) そういう時は相手にせず店員さんを呼べよーーーー」
と俺の背中をバンバン叩いた。
「そんな対処法は事前に聞いていない」
「くくく、でも担当じゃないはうけるなぁーー!」
「ですよねー! 菅谷先輩も無視すればいいのに、「どちらさまー」って言うしーーー」
と彩春ちゃんが言うと華蓮さんが、
「ほんそれ。りのあいつもそう言う反応するから、周りが大変なんだよ~」
と言いながら、友よ、みたいな感じで彩春ちゃんの肩をたたいていた。




