【菅谷莉乃愛視点】心が落ち着いた
「そういうわけで、その日向ゆきはさんの中の人の中里さんも一緒に来るってー! 華蓮―? 聞いてるー??」
今日は華蓮と遊びに、高校の近くの駅まで来ている。
海の日程が決まったことや、メンツや場所等を話して、とりあえず中里さんのことを華蓮に伝えた。
「え…あ、ご、ごめん! 聞いてる! なんか色々びっくりして、思考停止してた!」
「いや、びっくりするよねー。わたしもびっくりしたもん」
「いや、本当…ってかなんでバーチャル配信者やってんだろ? 駅でチラッと見た感じだと普通に顔出ししたほうが人気でそうだけど」
「んー…わからん!」
「まぁ考えてもしょうがないか! でも、西の中里も来るなら、気合入れなきゃだね」
「なにに?」
「いよいよ東西対決でしょ???」
「いやいや、何を対決すんのよぉ!」
「でも、あっくんの知り合いなんでしょ?」
「んー…まぁそうだね」
「りのあよりも先に」
「わ…わたしのほうが先!」
「そんな大昔の話は記憶にもございませーん」
「ぐ…」
「だから、あっくんをとりあって東西対決!」
「いやいや、とりあうってどういうことよ! でも、わたしも中里さんチラッと見たことあるけどさ、これは映えそうじゃない??」
「いやぁ、まじでそれ。買うつもりなかったけど水着買おうかな…」
「ふふん、わたしはこれ買った」
「どれどれ…?」
そう言って華蓮にスマホを見せて、水着をどうするとか何をもってくだのを話し合っていた。すると、
「あれー、菅谷と三好じゃーん! 菅谷休みなのに珍しいー」
と、いつもの3バカ+2人の5人のクラスメイトが、ハンバーガーのお盆をもって近づいてきて横の席に座った。すると華蓮が、
「お前ら、聞いて驚け、あたしとりのあは海へ行く」
「いいなぁ。おれらも行きてぇ」
「更に西の中里も一緒だ」
「「「「「はぁ?!?!?!?!」」」」」
華蓮は自慢げにバカどもに話した。
「いいだろ?」
「いや、それは良すぎだろぉぉぉ! 菅谷もいて西の中里もいるなんて眼福以外の何物でもない!」
「あたしもいれろや!」
そう言うと、華蓮はバカのお盆からポテトを強奪した。
「え、ちょ…! でもそれ俺らも一緒に行ってもいいじゃん! 一緒に行こうぜ!」
バカどもが「そうだ、そうだ」と食べながら話だした。
すると華蓮が、
「ふふふ、残念ながら定員オーバーだ」
と話し、それを聞いた男子が、
「海に定員なんてねーだろうが!」
というので、わたしが、
「残念ながら、今回は四谷男子のつてで、海辺の別荘に行く予定だから定員あるんだなーーー」
と、チッチッって感じで話すと、
「まーーーーじかーーーーーよーーーーーー! 急に金持ちの一員になりやがってぇぇーーー!」
「ふふふ、なんとでも言え!」
「てか別荘ってことはまさか…」
「そう、1泊2日!」
「いきてえええええええええええええ」
そんな話をしながら、結局みんなでハンバーガー屋で話して、その後男子も含めて全員でカラオケに行った。
カラオケで歌いながら皆で話していると、一人の男子が話しかけてきた。
「そういや、前の菅谷の家俺の家の通り道じゃん?」
「んーあーそうだっけ?」
「そうなんだよ! 何度か送ってやったじゃねーか!」
「記憶にないなぁー」
「まぁいいや。んで、この前夕方ごろ帰るときに前通ったら、なんか変なおっさんがお前の家のドア入ったり出たりしてたぜ?」
「んーあー、父親じゃない? まぁもう、あっくん家がわたしの家だから他人みたいなもんだけど」
「んで、なんかこっちに気づいて、向かってきたからさ、逃げた(笑)」
「いいんじゃなーい。どこ住んでるとか言ってないし、わたしの物も、もう何もないからびっくりしたんじゃーん」
「ま、一応話しておこうと思って!」
「ん! ありがと!」
そう言えば、最近楽しすぎて、存在ごとすっかり忘れてたけど父親いたんだった。
特に連絡もしてないし、連絡も来てないから一旦無視でいいや。
「てか菅谷なんか、前に比べて凄いこう柔らかく? 優しく? なったよな?」
と、別の男子が話しかけてきた。
「そお?」
すると華蓮が、
「確かに前よりなんか性格が丸くなったというか余裕がでたよねぇ!」
「そうなんだー。自分じゃ全然わからないや」
「まぁ余裕がある家で過ごしてたらそうもなるよねぇ」
そう華蓮に言われると、確かに昔に比べると、なんかこうどんなに楽しくてもどこか落ち着かなかった心がすごい落ち着いてる気がする。
これもあっくんの家のおかげかー。なんて思っていると、勉強会に参加した男子が、
「寿司とピザだぜ? パーティーメニューを一度に総なめ! これぞ夢!」
と、アホみたいなことを話だした。
「ちなみに菅谷よ、まさか幼馴染くんも海一緒に行くのか?」
「もち、行くよ」
「うがあああああ、神はなんて不公平なんだぁぁーーーーーー!」
そんなことを話していたら、また父親のことはすっかり忘れて、皆とカラオケで遊んで、その日は19時ぐらいに家に帰った。




