東の菅谷
それから数日後、莉乃愛達はテストが実施されたようで、どうだったか聞くと、「正直教えてもらってるときから、できてるかどうかわからなかったから、わかんない!」と、テヘみたいな感じで話してた。
翌週、俺が学校から帰ると、
「あっくん見て!」
そう言って、紙を持った莉乃愛がリビングから出てきた。
靴を脱いで家に入りながら受け取ると、それはテストの回答用紙だった。
国語の回答用紙で点数は78点。
「8割まではいかなかったけど、人生最高得点!!」
「それならよかったよー」
と、テストを莉乃愛に返した。
「他の教科も同じぐらいで、先生鬼ビビってた~! でも、うちらカンニングしたって周りも同じだから意味ないこと知ってるからさ、まじでただただ衝撃受けてたぁ!!」
「まぁこれまでの点数と比べるとびっくりするだろうね(笑)」
「女子は大体同じぐらいで、男子3人は60点台が多かったけど、それでも、うちら6人クラスのTop6!」
と、ウケルよねーって感じでニコニコしながら話している莉乃愛が本当に可愛く見えた。
「よかったよ。りのあも嬉しそうだし、本当可愛いね」
そう言って、俺はニヤッとしながら莉乃愛の頭をなでた。
「んな…!」
と言った莉乃愛は下を向いて、
「とりあえずありがと!」
というと、ダッシュで部屋に入ってしまった。
ふふふ、この前の下着の色の件をやり返すタイミングを待っていたのだよ俺は。
そして部屋に戻り、母さんから「ご飯だよ~」と呼ばれたので、部屋を出ると莉乃愛も出てきて、目が合って、バンっとドアを閉めて部屋に戻ってしまった。
ふふふ、照れてるな。と思いつつリビングに行き、座っていると莉乃愛もやってきて座った。
ご飯を食べながら、母さんが普通の話をしてくるので、莉乃愛も元に戻り普通に喋りだした。
そしてご飯も終わり、俺がキッチンでお茶をついで飲んでいると、莉乃愛が「んーー」と言ってスマホを見ているので、
「りのあどうしたの?」
そう聞きつつ、俺はお茶を飲む。
「んー、なんか前予定がつぶれちゃった人から、「埋め合わせさせてくれ」って何回か言われてるんだよね」
「へぇ、ま、なんか危険なことじゃないならいいんじゃない」
「そんなに興味ないんだよねー。というか男子大体興味ないんだけどー」
と、莉乃愛は言い、俺はお茶を飲んでるのでカウンターキッチン越しに話してた。
「んー、あ、でも、そう言えば四谷の人だよ?」
「おお、そうなんだね」
「あっくん知ってる人かも?」
「俺が知ってる同年代は一人しかいないから…」
「八代直人っていうんだけど…」
俺はタイミングよくお茶を口に含んでいる状態でその名前を聞き、
「ぶふぉあ!!」
と、盛大に噴出した。
「え…な、なに? どうしたの?!」
「ゲホゲホ……ご、ごめん」
そう言いった俺に、母さんが横から「汚い…」と言いながら、キッチンペーパーを渡してきたので、俺は汚したところを拭いていると、
「まさか、その唯一の一人?」
「まさかの、その唯一の一人だよ直人は…」
「まーじーでーーーーーーーうけるーーーーーーー! そんな偶然あるんだねぇ!!!」
「いや、俺も本当びっくりした。思いっきり吹き出しちゃうぐらい…」
「いやーウケルウケル」
そう、莉乃愛はケラケラ笑っていた。
そこで俺は気が付いた…
「…え、もしかして、りのあって…東の菅谷?」
「あーそう言われてるねーってかなんであっくんが知ってるの?」
「いや、直人から聞いた。そう近隣の高校生に呼ばれてるって」
「そうなんだよねー。なんか番長みたいで嫌なんだよねー」
「俺も最初聞いたとき思った…」
「あ、ってかあっくんの友達ならあっくんと一緒に会えばいいか。『湯月新くんも一緒ならいいですよ』っと」
「ちょ、ちょっとまってそれーーーーー!」
と、慌ててり莉乃愛の方に向かうが、
「え? もう送っちゃった」
テヘっと、莉乃愛は舌を少し出しながら俺を見た。
数秒後、俺のポケットでスマホが鳴りだした。
「直人から電話だ…」
「出ないの?」
「一旦無視する」
しかし、永遠に鳴り続ける。
はぁ…とため息をつきながら電話に出ると、
「おい!一体どういうことだよ!りのあちゃん…東の菅谷にお前と一緒なら会ってもいいって言われたんだけど!!」
「んーあーんー、面倒くさい」
「説明しろよおおおおおお!」
「あーもうわかったから、そしたら明日休みだし明日でいい?」
「俺はいいけど、あっちは大丈夫なん」
「わかんない。そこら辺は調整して。じゃ」
そう言って、電話を切ると、莉乃愛が、
「ウケルウケル、明日の予定そのままここで聞けばよかったのにーー?(ニヤニヤ)」
「んー、いや、どこまでの情報を開示するかりのあと相談しないとと思って」
「え…あ…うん、そ…そだね。ありがと」
そう言って、莉乃愛とどうするかそのまま相談し、直人から莉乃愛に連絡が来てたので、莉乃愛が日程を調整した。
そして次の日、待ち合わせ場所のハンバーガーショップに莉乃愛と入ると既に直人が座ってた。
「な…なぜ…お前がりのあちゃんと一緒に来る……んだ?!?!」
「んーあー…」
「ま…まさかお前等付き合ってるのか…?!?!」
と、俺の話をさえぎって直人が話してきたので、
「あー…」
と、俺が話そうとすると、今度は莉乃愛が、
「わたし達一緒に住んでるの!」
と、遮られ、更に腕を組んできた。
「っつ…な……」
と、直人が絶句した…。
「ちょちょ! りのあ! そんな誤解しか産まないような断片情報を!」
と、組まれている腕を抜きつつ、
「と…とりあえず、事情があるから話すからちとまずは頼んでくるわ」
「…お…おう、わ…わかった……」
そう言うと、俺は莉乃愛と二人で注文しに行き、受け取ると直人の座ってるテーブル席に行き、あらかたの事情を話した。胸を揉まれた云々は話さなかった。なんか直人に莉乃愛が下賤な目で見られたら嫌だなと思ったからだ。
直人、下賤だし。
一通り話を聞いた直人は、
「なんか、あれだな、衝撃的な展開だな」
「俺もびっくりしてるよ」
「ん! あっだから髪の毛切ったのか!」
「いいでしょ! わたしが魔改造した!」
「いいね! りのあちゃん流石!」
と、二人で話し出したので、俺は頼んだハンバーガーを食べだした。
「しかしなるほどなぁ~、まぁでも家近くなったし、これからはもうちょっと会えるね!」
と、直人が莉乃愛を見ながら言うと、
「そうだねー! あっくんと一緒ならいいよ!」
「俺を巻き込まないでよ…」
「えー、りのあちゃんこいつなしでもいいじゃんー」
「えー、あっくんはわたしが他の男と一緒にいても、何とも思わないの~?」
「いや、俺が関与するような話じゃないでしょ…」
「…そうやってまた私を疎遠に…」
と、下を向いた。
いや、チラってこっち見たの見えてたからね????
しかし、それでもいいとはとても言えないので、
「…はぁ……、直人、俺と一緒ならりのあに会わせてやるよ」
「まさかのお前の許可制かよおおおおおおおお」
「すまんな…そういうことだ」
その後、普段の湯月家での生活はどんな感じとかを、主に直人と莉乃愛が話していた。
そして、もうすぐ夕方だしとお開きになり、俺は莉乃愛と一緒に駅に向かい、家に帰った。
家に帰り、自分の部屋で少し勉強をしていると、直人からメッセージがきた。
『二人で一緒に帰るとか羨ましすぎるんだが』
『いや、しょうがないじゃん』
『そうかもしれんが…』
『お前なんとも思ってないの?』
『なにが?』
『え、家にりのあちゃんがいること』
『母さんは喜んでるしいいんじゃない?』
『ええ、まぁ、とりあえずいいか…』
『よくわからんけど、そういうことだ』
『俺は西の中里を頑張る』
『連絡先聞けたんだ』
『45万』
『ご愁傷様』




