テストの点数の取り方
俺が陽キャに圧倒されていると、
「とりあえず、勉強はじめよーよ!」
と、莉乃愛が大きなテーブルの1席に座った。
パーティールームには、マンションの会議なんかもできるように、大きめのテーブルが設置されているのだ。
そうしよそうしよ~とみんな座りだした。
「あっくんとりあえずどうすればいいの?」
「え…んー……と…とりあえず、み…皆さん思い思いの試験対策をしていただき、わ…わからないところがあったら呼んでください……どこら辺の勉強をやってるのかとかレベルもわからないので……」
そう言うと、「わたし数学やろっと~」みたいな感じで、それぞれ問題集等を出しだした。
そして開始10秒、
「あっくんこれわかんない」
と、莉乃愛が呼んだ。
いや、10秒だよ? そんなすぐにわからないところが出るわけなくない?
と、思いながらも莉乃愛のところに行こうとすると、
「あっくんあたしはこれわかんない!」
と、華蓮さんが呼んだ。
え? 待って待って? どういうこと? そんな難しいことやってんの?
そう思いつつ、
「ちょ…ちょっとおまちください……」
そう言い、とりあえず莉乃愛のところに行き「どれ?」というと、問題の1番最初。
数Aの範囲っぽいけど……俺は中学で終わってたけど……
え? なぜわからないのかがわからないぐらいの初歩なんだけど……
と思いつつも、
「り…りのあ…これのどこがわからないの…?」
「んー、言ってる意味」
まじで……………
そう思ってると、
「あー、それ俺も意味わからないんだよね」
と言い出したと思ったら、「わたしもわたしも~」とみんなが言い出した。
「ほ…本気…?」
「大まじだよ!」
ドヤっと莉乃愛は言った。
「ちょ、ちょっと待って。もうそこからってなると、もはやわからないところを教えるって感じじゃないからテスト範囲教えて…」
莉乃愛が「数学はこのページからこのページで~」と説明しているのを、先生はいったい何を教えてんの…と思いつつ聞いた。
「わかった…。ちなみにこの中で群を抜いて点数がいい人とかはいるの?」
そう聞くと、華蓮さんが、
「いないよ~! クラス全員こんな感じ!」
どうなってんのそれ…テスト意味なくないか……と思いつつ、
「わ…わかった…。ちなみに誰か前回のテストとか持ってない?」
「あ、俺ずっと鞄に入ってたからある!」
何カ月前から入ってんの?! と思いつつも、いちいち突っ込んでたり一向に進まないと思い、出してきた問題文を見た。
なるほど、選択形式が多くて一部筆記な感じね。
「了解、それじゃ全員に等しく、勉強じゃなくてテストの点数の取り方を教えることにするね…」
「なにその画期的そうな方法」
「そんなことできるの?」
と、皆が話し出した。
「あっくんができるって言ったらできるの~! はい、聞く!」
と、莉乃愛が言った。
「なーんかりのあが肩もつなぁー?(ニヤニヤ)」
と、華蓮さんが莉乃愛の横からニヤニヤしながら言った。
「そ…そんなんじゃないから!」
ああ、なるほど…
こうやって一歩進むと、皆で大脱線を起こすのか…
先生も苦労してそうだ…
「とりあえず国語からやりますね…。問題文を見た感じ、解き方を覚えて解き方通りにやれば、内容がわからずとも試験時間30分で8割はとれると思います」
「え、内容わかんないのに? カンニング?」
と、華蓮さんが聞いてきた。
「いえいえ、先ほどもお話しした通り僕が教えるのは勉強ではなく、テストの点数の取り方なので、テストの解き方を覚えてもらいます」
「そんなんあんの? やばくね?」
「まじ? 30分で8割って、30分寝れるじゃん!」
「はい、ということで、皆さん国語の教科書出してください。」
「え、国語の教科書なんて学校だよ?」
と、莉乃愛が言った。
「え、勉強するのに?」
「うん、多分誰も教科書持ってないと思う。問題集は持ってるけど」
「わからなかったらどうするの?」
「飛ばす」
と、莉乃愛が皆を見ると、全員うんうんと頷いてる。
もはや、おれの常識が1ミリも通用しないんだけど…
「ちょっと待ってて…。おれの中学の教科書探してコピーしてくるからそれでやろう……」
「え、あたしらってあっくんの中学レベル?」
「やばっ! まじウケル!」
そう言って皆で爆笑しだした。
とりあえず、俺はパーティールームを出て、家に戻り、古い教科書を引っ張り出してきた。
すると母さんが部屋の入口で、
「どおー? 進んでるー?」
「1ミリも。俺の常識は一切通用しない上に、もう衝撃が多すぎて言葉にもならない」
「あらあら~、まぁあんたはいいところ行ってるんだから、投げずに教えてあげなさいね~」
と言い、出ていった。
テスト対象の全教科の、今回のテスト範囲に近い教科書をもって受付に行き、人数分のコピーをお願いし、そのコピーを持って行くと、母さんが来ていた。
「お菓子とか飲み物とか置いといたからね~」
と、母さんが戻っていくと、
「あれがお金持ちのお母さんか…」
「うちの母親と違って、なんか余裕を感じる」
等々、感想をいいつつ早速脱線していた。
「…じゃあ国語やるから、まずこれ」
そう言ってコピーを配り、
「それじゃあ、全員俺の言うところに線を引いて」
と線を引く場所を説明した。
一通り説明して、皆の線を引いた場所があっているか見て回り、
「では、全員同じところに線が引けていたので、次にこの文章の後ろにある問題の2番に選択肢があると思いますが、その選択肢の人っぽい単語に線を引いてください…」
そうやって教えていき、一通り教えたところで、
「ではこれで国語は点数が取れますので、皆さんお持ちの問題集だしてください」
「え? まじ? 俺全然中身わかってないんだけど?」
「うちも、うちも…」
「はい、問題集出しましたかーー」
というと、皆せかせかと問題集を出した。
「では、さっきの教えた通りの順序で教えた通りに解いてみてください。解き方があやふやになったら周りの人に聞いてもオッケーです。はいじゃあはじめー」
と、俺が言うと、「え、やべ、えっと最初は~」みたいな感じでみんな口々に喋りながら問題を解きだした。
というか最初は線引くだけだから、皆線を引いてるだけなんだけど…
途中、「やば、この後なにやるんだっけ…?」みたいに各々がなった時は、覚えてる人が答えてと、とりあえず何とか進んでいった。
意図せず、皆でやり方の復習になるから早く覚えられるだろう。
問題集の問題なので少し短かったが、最初ということもあり全員少し時間がかかって40分ぐらいで全員が解き終わった。
「では皆終わりましたので、答え合わせしてみて下さーい」
と、俺が言うと、皆問題集の後ろの方にある答えの冊子を出して採点しだした。
そしてしばらくすると…
「えええええええええええええええ! やっばあああああああああああああああああああ! わたし、一つしか間違ってないんだけどおおおおおお」
と、莉乃愛が言い、
「うちも間違い2つだけ! えええええええええええええ! どういうことおおおおおおお!」
と華蓮さんも言い出し、
「おれ全部あってる……人生で初めてだ……内容全然わかんないのになんでえええええええええええ! 神かよおおおおおおおおおお!」
と、全員大騒ぎになった。
暫く騒がせておいて、落ち着いてきたころに、
「これが国語のテストの解き方です。中身がわからなくても点数はとれます。前回のテストの出題傾向を見た感じ、問題集よりも選択肢が多いですし、このやり方でやれば必ず解けます」
と、俺が言うと、
「神だ…神がいる…」
「わからないのに点数は取れる……」
と、口々に言い出した、
「あくまでこれはテストの解き方なので、国語の勉強ではありません。テストで点数が取れても皆さんの国語の学力が向上しているわけではないので、その点は注意してくださいね」
「「「「「「学力と点数の違いが判らない…」」」」」」
「じゃあ、こんな感じでテストの解き方を各教科教えるので、少し休憩して、次は社会やりましょう」
「「「「「「りょーかい!」」」」」」
そうして、皆席を立ち、お菓子を食べたりジュースを飲んだりしだした。
おれも、ふぅとソファーに座ると、莉乃愛と華蓮さんともう一人の女の子が来て、
「あっくん、やばくない? どうなってんの頭の中?」
そう莉乃愛が言うので、
「いや、いちいち全部読んで解くの面倒くさいけど点数はとらないとなと思った結果、こういう方法にいきついた」
すると華蓮さんが、
「てか、あっくんってどれぐらい頭いいの?」
「んー、どれぐらいってのが難しいですけど、前に試しで帝大の医学部の判定を出したら、A判定だったから、数字上は日本に入れない大学はなさそうなぐらい?」
「本物の天才だ…」
「いやいや、うちの学校だと俺より頭いい人いっぱいいるよ?」
「まじか…もう別世界…」
「俺からすると皆さんが別世界すぎて衝撃受けました…」
と話していると、莉乃愛が、
「あっくん普通にしゃべれてるじゃん!」
と言い出したので、
「りのあ、それ以上そこは掘らないで。今、あまりにも世界が違う衝撃の勢いに任せって突っ走ってる感じだから、一度止まると戻れない」
「あ、お…おけ…!」
「じゃあそろそろ社会やろうか」
そう言って立ち上がると、皆「やばいよねこれー」とか言いながら座りだした。
そうして、5教科全部のテストの解き方を教え終わったのは、21時前だった。
「おわった…1日で全教科の対策が終わった…」
そう莉乃愛が言うと、
「これやばくない? ってか学校の勉強ってなんなの?」
「どの教科も内容を覚えてないのに答えはあってる…」
と、口々に感想を言った。
とりあえず、問題を解くことはできるようにできたようでよかった。