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会話のトラップ

それから、3週間程経った。


莉乃愛が我が家にいる生活にもすっかり慣れて、もはやそれが普通になった。


莉乃愛は母さんとことのほか仲が良く、休日に二人でアンスタ映えなカフェとかにも行ったらしい。

 

母さんも本当の娘のように可愛がっており、まぁこれも一つの形かと俺も完全に受け入れていた。


莉乃愛に配信していることがばれていたようなので、配信中は立ち入り禁止ではなく配信中と記載したホワイトボードをかけるようになった。

 

そうしてようやく日常に戻ると、やはり日向ゆきはさんは、話題の人ということでホロサンジの様々な会に呼ばれており、もう登録者が15万人を超えている。ホロサンジのパワーが流石にここまでとは思っていなかった。


俺も、ソロ配信を中心に行いつつも、過去にご一緒したバーチャル配信者さんに呼ばれ、何度かコーチングしながら同時配信を行った。

 

俺がご一緒する方々は個人勢の方ばかりなので、「白風さんのことは知ってたんですか~?」とか色々聞かれたりもした。

 

雪菜さんに連絡し、どう回答したらいいか事前に聞いており、『事務所の人に聞きましたが、相談されていたことぐらいは言ってもらって大丈夫ですよ~とのことでした!』と回答をもらっていたので、「どうしようかと相談はされましたね~」と話していた。


そうすると、実は…と配信後に相談されることが多くなった。


どうも個人勢のバーチャル配信者の方々に、現在様々な事務所のアプローチがホットになっているようだ。

そして聞いていると、それらが全て転生告知を前提としている。



まぁ、雪菜さんがあれだけ話題になれば、自分の事務所でその流れを作りたくなるか。



と、思いつつ、当たり障りない感じで相談にのったりもした。

 

 

しかし、定期的なコラボ配信も実施できていたこともあり、俺の登録者数も15,000人を超えた。




「ありがとうございました~またお願いします~。では、俺の配信も今日はここで終わりにしますー。ありがとうございました!」




と、配信を終わらせ、キッチンからお茶を取ってきて、ドアのホワイトボードを取ってしばらくすると、ドアがノックされたと思ったらバンっと開けられた…




「りのあー、ノックしても開けちゃったら意味ないじゃんー…」


「まぁ別にいいっしょ!」


「……」


「ところであっくんさ、今週末暇でしょ?」


「ええ、まぁ配信するぐらいしか予定はないけど…」


「だと思った! じゃあさ、勉強教えて!」


「ええ? ああ、期末テストか…」


「そうなのだよ~」


「うちの高校はもう模試が中心で定期テストってないからな。そういう時期か」


「そうなのだよ~。そして困っておるのだよ~」


「りのあって勉強苦手なの?」


「んーーー、あっくんよりは苦手!」


「全然わからない…前のテストで一番悪い点数何点だった?」


「前のテストか~…んーっと数学の28点かな!」




そうドヤ~っと莉乃愛は言っているが…




「まじか………」


「ということで、お願い! 高校最後の夏休みに補講は嫌だぁぁ」


「あーうん、いいよ、わかった」


「本当? ありがとー!」




そう言うと、莉乃愛は自分の部屋に戻っていった。






そして勉強を教えると約束した日、




「「「「「おじゃましまーす!」」」」」




何事? と思い、部屋から出ると、莉乃愛とその友達らしき男女5名




「あ、幼馴染くん!」


「り…りのあ、こ…これはいったい…?」


「え、勉強教えてって約束したじゃん!」


「りのあの勉強を教えるんじゃないの…?」


「わたし含む全員!」




えっへん! みたいな感じで莉乃愛は言った。




「え…いや……そ…それは…」


「おー確かに陰キャだ! 見た目が小綺麗になってるのに陰キャ!」


「でしょ~、わたしが改造した!」


「りのあセンスいいね~!」




そんな、陽キャ集団に圧倒されていると…




「あーでも、よく考えたらこの人数が勉強できるようなテーブルなくない?」




と、莉乃愛が「どうしよっか?」みたいな感じで、話し出した。




「パ…パーティールームが空いていれば……」




うちのマンションにはいくつかの共用施設があり、その一つに10人ぐらいまでなら入れるパーティールームというものがある。

 

マンションの住人がいれば、予約すれば無料で使える施設だ。




「あ、そういや、そんなんあった! みんなちょっと待っててー!」




と、インターホンから受付に莉乃愛が連絡した。




「使えるってー! とりあえず18時まで取ってもらった!」


「おー、パーティーやろうぜパーティー!」




そう男達が盛り上がりだした。




「あたしらはベンキョーするから邪魔しないでね! 補講おつ~」




と小柄な女の子がバカにしたように言った。




「はっ! それはまずい! 俺達の命運は君が握ってる! 幼馴染くん!」




と、肩を掴んできた。


俺はもう圧倒されて、魂が飛んでいっている。




「ほら、んじゃ行くよー」




と、部屋から色々持ってきた、莉乃愛が家から出ていくと、ぞろぞろとみんな着いていった。




「あ、あっくんも準備して来てね~」




というと、ガチャっとドアが閉まった。




「りのあが来てから、なんか本当ににぎやかになったわね~」




と言いながら、母さんがニコニコしながら出てきた。




「俺に一体どうしろと…」


「勉強教えるって約束したんでしょー?」


「したけど、まさか友達もだとは思ってなくて…」


「でも、どうせりのあ一人に勉強を教えて! と言われたわけでもないんでしょ?」


「ぐ…それはそうだけど…」


「はい、あんたの負けー。諦めて行く! 後で飲み物とか持って行ってあげるわね~」




と、リビングに戻っていった。




いや、まさかじゃん…


いやまさかさ、


莉乃愛は正式な家族ではないけど、いまや家族みたいなもんだからさ、


そんな家族の会話にさ、

 

俺友達と勉強なんてしたことないしさ、、、


そんなトラップが仕掛けられてるなんて思わないじゃん!


さっきの表情見た感じ、絶対確信犯だし!




でも、母さんの言う通りその場でちゃんと確認していない俺の負けと言えばそうなので、とりあえず行かないわけにはいかない…




1ミリたりとも気乗りしないが、筆記用具とノートパソコンを持って、俺はマンションのパーティールームに向かった。




パーティールームのドアを開けると、




「やばー、うちのリビングより広いんだけど!」


「俺の家のテレビよりでかい!」




等々、パーティールーム内を物色していた。




「あ、あっくんー。今日はよろしくね~」




と、莉乃愛が近づいてきたので、




「ねーりのあ、友達も教えるの?」


「うん!」


「だったら事前に言ってよ…」


「だって事前に言ったら嫌だって言うでしょ?」


「ぐ…そりゃそうだけど…」


「ふふふ、甘い甘い! でも皆大事な友達だからさ~お願い」




そう言いながら、下から見上げてきた


いや、これはまたあれだ、断れない流れのやつだ…




「ね…?」




はぁ、やるしかないのか……




「今回だけだよ……」


「イエーイ!」




と、莉乃愛が腕を組んできた。


いや、その、当たってるんですよ…。むにゅっと……




「あーりのあが色目使ってる~~~」




と、小柄な女の子が近くに来た。


すると、莉乃愛はパッと離れて、




「そ…そんなわけないじゃーん! 友達来ることは言ってなかったからお願いしてただけだってー!」


「ほーんとかなぁ?」




と、莉乃愛をジッと見るその子。




「ま、いいや! あたし華蓮! よろしくね~あっくん!」




 すると、わたしは~おれは~と自己紹介が始まった。




「ゆ…湯月新…デス」


「あっくんこいつら、陽キャな感じだけど悪い奴等じゃないから大丈夫だって!」


「そうそう、男子なんて男でもないただのバカだから!」


「んだと! お前の方が…」




と、皆がギャーギャー喋ってる。


これが陽キャの学校。


まじで四谷でよかったと思った。

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