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お手紙

今日からりのちゃんが家にいることになり、普段だったら回る頭が、なんかポンコツになっている気がする…。



家に帰ってきた瞬間に、母さんからいきなり投下された爆弾。


まさかの、物置部屋の掃除だ。


りのちゃんは見ていないだろうから、それがどういうことなのかを理解していないのか、「え? 別にいいじゃん?」みたいな顔をしているが、正直これはかなりきついはずなのだ。


いつもなら言われるだろうからとカウンターを準備しておくのだが、全く想像もしていなかった為、結局今日やらざるを得ない…。


今日の自分のポンコツ具合に後悔しつつ、ジャージに着替えてリビングに戻ると、りのちゃんはソファーに座ってスマホをいじっていた。




「あっくんそれじゃやろっかー」




そう言って立ち上がったりのちゃん。


さっきはよく見てなかったので気が付かなかったのだが、恐らく今日買ったのであろう部屋着を着ている。

 

大分大きめの黒色のTシャツにスウェットのズボンだ。


露出が低くて助かったが、びっくりしたのはそんな服を着ていても、りのちゃんはキラキラがあふれ出ていて美人なのだ。


普通の洋服とか制服姿とか、直視したら、俺は死ぬんじゃないだろうか?


そんなことを思いながらも、




「…うん。こっちきて…」




と、リビングをでて物置部屋に向かった。

りのちゃんも、「ふん♪ふん♪」とついてきた。


そして物置部屋を開けて、中を見たりのちゃんは沈黙した。




「……こういう状態でして、そもそも今日終わるのかもわからないレベルです……」


「あーうん。あっくんが絶句したのわかったわ」




物置部屋と言っても普通の部屋なのだが、家族の人数に対して部屋が余っているので、必然と使ってない部屋に物が集まり、結果的に物置部屋となったところだ。

 

だから、ただ掃除をすればいいというレベルではなく、捨てるものを選別し、残すものをどこに動かすかを決め、動かして設置する。という、もはや引っ越しに近いことをやらなければならないのだ。


 


「さーて、がんばりますかー!」




そう、りのちゃんは言い出しゴミ袋を手に取り部屋に入っていった。

 

どうやってやらないかとか、最小限で出来るようにするかとかを考えるんじゃなく、いきなり行動を開始するりのちゃん。


俺とは行動の原理が違うようだ。


ただ、そう考えていてもしょうがないし、妙案があるわけでもないので、俺もゴミ袋を手に取り明らかにゴミっぽいものからゴミ袋に入れていった。

 

りのちゃんもとりあえずゴミっぽいものを集めているようだ。


む、二人で同じ行動は、今後待ち構えるやらなければならないことを考えると非効率だ。




「り…りのちゃん……」


「なにー?」


「…っつ。あの…お、おれは断捨離をやるから…明らかなごみをとりあえずは集めてもらっていい……?」


「あ、おっけおっけー」




そう言うとりのちゃんは、「ふん♪ふん♪」と鼻歌を歌いながらゴミっぽいものを袋に入れていく。


俺は気を取り直して、断捨離を始めた。リビングから付箋紙を取ってきて、捨てるものに付箋紙を貼っていく。


そうするとりのちゃんが、




「あっくん、明らかにゴミって感じのは大体詰めたけどこの後どうするー?」




と、ゴミ袋を持ちながら話しかけてきた。




「え…えっと、このオレンジの付箋が貼ってあるものは捨てるもので……燃えるごみに出来るからゴミ袋にいれてもらっていい…? あ…青の付箋は粗大ごみになるだろうからそのまま廊下に、だ…出す感じで……」


「あいよー」


「お…俺は、ちょちょっと母さんに本棚の移動場所とか…聞いてくる…」


「りょーかーい」




そう言って、りのちゃんは再び鼻歌を歌いながら作業を再開した。

 

俺はとりあえず、満杯になったゴミ袋を玄関に全部持って行き、明らかに捨てないであろう、本棚や電子ピアノ等の移動場所を、母さんに相談しに行った。


 

一通り移動場所を聞いたので、物置部屋に戻ると、りのちゃんがなにかを見てた。

 

少し近づくと、何を見ているのか分かった。


りのちゃんが見ていたのは、小さい頃にりのちゃんからもらった手紙達だ。


りのちゃんは俺が部屋に入ってきたのがわかったのか、ニヤニヤ少し見上げながら話してきた。




「あっくんこの箱、付箋が貼ってないから捨てないんだ~(ニヤニヤ)」


「え…いや…あの……」


「この箱はいったいどこに移動するつもりなのかな~~?(ニヤニヤ)」


「え、えっと…」


「懐かしいよね~。わたしもまだ持ってるよ手紙」


「そ…そうなんだ…」


「そんな恥ずかしがらなくていいのにー。大事にしててくれてうれしいよ?」


「え…いや…その、母さんが…」


「へぇー、じゃああっくん的には大切じゃないんだ?」


「あ、いや…そういう…わけじゃなくて……」


「悲しいなぁー。わたしはずっと覚えてたのにー」




そう言うと、顔を手で覆って下を向いてしまった。




「うっ…あっくんはわたしのこと嫌いなんだ…」




ちょ、ちょっと待ってーーーー。

 

そんな意図があったわけでもなく、ただ喋れないだけだからーーー。ちょちょ、どうしよう…!




「あ…いや…そういうわけじゃなくて……だ…大事だよ! その箱は俺の部屋!」



そう言い切って、りのちゃんの下にある箱に手紙をしまい、さっと取ろうとしたところで、りのちゃんが急に蓋の上に手を載せて、




「ふふふ、大事なんだーそうなんだーそうなんだー!(ニヤニヤ)」




と言いながらニヤニヤしていた。

 

くっ…完全に会話を誘導された……。




「大事なら、敬語もやめてお父さんやお母さんみたいに話してくれるよねー?」




と、少し真顔にして言ってきた。


こ…これは…断れない流れのやつだ……




「ぜ…善処…します…」


「善処じゃなくて、絶対だよねー? 大事なのにー善処なのー? そうやって言って、わたしを疎外してまた一人にするんだ…」




そう言ってまた顔覆うりのちゃん。


のわーーーーー。逃げれない…ここで逃げてはりのちゃんのくそみたいな親父さんみたいなもんじゃないか……




「や…約束します……」




そう言うと、りのちゃんは手を顔から取り笑って、




「します、じゃなくて、する!でしょ」


「う…約束する」


「それでいいーよくできましたー!」




と言って、頷くりのちゃん。




「あ、それとこの年でりのちゃんもあれだから、りのあでいいよ! はい、言ってみて」


「え…いや…」


「り・の・あ」


「り……りのあ」


「そうそれ! んじゃこれからそれで!」


「…わかった……」




完全に勢いに任せて押し込まれた…

く……くそ…。完全に負けた感がある。

 

俺だって上手くしゃべれないだけで、負けず嫌いな気持ちがないわけではない…




「り…りのあ…」


「んー? なにー?」




そう、作業を再開した莉乃愛は、ゴミ袋に物を詰めつつ答えた。




「お、俺も同じ年だしさ。あっくんじゃなくて、あらたでいいよ」


「…お、おっけー。あ…あ…」


「あ…?」


「あ…あっくんはあっくんだからあっくんのまま!!」



 

そう言うと、莉乃愛は俺に背を向けて作業しだした。

 

でも、心なしか耳が赤くなっている。

少しやり返せたな。


そう思っていると、自然と、




「くくく…」




と言ってしまっていた。




「あーーー!!! からかったでしょーーーー!!!!」


「……はて」


「もーーー!」




そういう莉乃愛を見ると、ニコニコ笑っていて、二人で「あはは」と笑った。

 

そうして、二人で作業を再開して暫くすると、




「二人ともー、もすぐご飯よーー」




と、キッチンから母さんが呼んだ。




「…りのあ、ご飯だって」


「そう言えばお腹すいたね」


「んじゃいくつかごみ袋捨ててきて、ご飯にしようか。ついでにゴミ捨て場と捨て方も教えるよ」


「おっけー、てか普通に喋れるんじゃん」


「…結構頑張ってる……。でも、りのあは小さいころ遊んでたからか多少大丈夫なこともあるのかも…」


「それは良き良き。ではゴミ捨て参ろうぞ~」




と言って玄関の方に歩いて行った。


その後を追い、二人でゴミ袋を持てるだけ持ってゴミ捨て場に行き、捨て方を教えた。

 

家に戻り、母さんとり莉乃愛とご飯を食べて、作業再開。

母さんはご飯を食べながら「いっきに家が賑やかになってうれしいわ~」と、終始ニコニコしていた。


結局その後、何度も何度もごみを捨てに行き、粗大ごみを持って行き、移動するものを移動してと、大方終わったのは23時半ごろだった。


こんな時間になると、がっつり掃除機とかはかけれないので、結局部屋はまだ使えないねと、今日は昨日と同じフォーメーションで寝ることなった。

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