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急に陽キャになれたりしない

莉乃愛がしばらく暮らすということで、喜んでいる母さんを見ていると、




「あ、もしかしたら新、りのあちゃんと一緒が良かった?(ニヤニヤ)」


「いや、それは無理だ。色々難しい…」


「ふふふー、お父さんは自分の布団は自分で移動してね!」


「いやいや、来客用の布団あるじゃ…」


「ダメよ! あなたが寝てた汚いところにりのあちゃんを寝かせられるわけないじゃない!」


「汚いって…まぁそれもそうか……新移動しておいて」


「おれかよ…」


「新が畳の部屋で寝て、新の部屋で俺が寝たっていいんだぞ?」


「う…後でやっとく…」




そうするとりのちゃんが、




「わたしも手伝うよ…」




と、席を立とうとしたので、




「いやいや、いいよ。りのちゃんにあんな汚いものを触らせるわけにはいかないから」




親父の方を見ながらおれがそういうと、




「そんなに汚いかな…」




と、少しショックを受けつつビールを飲んでいた。




「そうと決まればりのあちゃん! 明日早速買い物行かなきゃね!」


「買い物…ですか?」


「そうよー。1日ぐらいならいいかもしれないけど、何日もってなると困らない? 下着とか」


「あ…」


「家に取りに行くこともできないし、買いに行くしかないと思うから、早速明日行きましょうー!」


「でも、いいんですか?」


「いいのよ! 私、娘と買い物夢だったんだ~!」


「でも、わたし制服しかないんですが…」


「まぁ私と一緒だし、制服でも大丈夫でしょ! 最初に洋服屋さんに行って、洋服買ってその場で着替えちゃえば大丈夫!」


「あ、ありがとうございます!」


「学校への連絡は自分でできる?」


「えっと、自分で出来ますが、理由はなんて言いましょう?」


「そうね~。あなた、なんていえばいいの?」


「そうだなー。何日か連続になるから、流石にある程度事情を話しておかないと心配するだろうしなぁ。んー、そしたら明日午前休にするから、一緒に学校まで説明に行って、その足で新宿まで連れてくよ」


「あー、それいいじゃない。さすが! 帰りは、買い物終わったら車は私が運転して帰るから荷物も載せれていいわ!」


「あ、帰り乗って帰っちゃうんだ…」


「あなたは荷物ないんだから、電車で帰ってきてください!」




 そう言われた親父は、「んー…」と言いながらも、ビールを再開した。




「わたし、コンビニとかで大丈夫ですよ?」




りのちゃんが、そう母さんに提案すると、




「ダメよ、こんなに可愛いのに絶対ダメ! お洒落なんて若い時しかできないんだから!」


「す、すいません。ありがとうございます」


「あ、あなたもちろんうちでお金出すけどいいわよね?」


「あ、いや! お金は自分で…」


「それは全く問題ないぞー」


「そういうことなんで、お金も大丈夫だよ~。 むしろ、娘とお買い物デートできるんだから、全然甘えちゃって~」


「あ、いえ…はい、ありがとうございます」




そう言うと、母さんは「今日の寝る部屋を準備しなきゃ~」とリビングを出ていった。




「いいのかな?」




そうりのちゃんが聞いてきたので、




「お金ならいいんじゃない? なんか母さんが楽しそうだし。うちは部屋も余ってるから、家にいるのも特に問題はないだろうし」




「そっか…じゃあお願いしようかな。あっくんもありがとね」


「問題ないよ。結局今回は親父が解決する感じだし」


「んー、でもありがと」




そう言うと、寝室の方から「あらたー、早く布団動かしてー! あとりのあちゃんもちょっと来てー」と母さんの声が聞こえてきたので、二人で席を立ち寝室の方に移動した。


その後、布団を移動して、生活できるように最低限のことを伝え、おれは自分の部屋に戻った。



その日は、配信する気にもならなかったので、SNSを見たりネットサーフィンしたりしながら寝た。




翌朝、朝起きてリビングに行くと、既にりのちゃんは起きて、ダイニングテーブルに座ってスマホをいじっていた。




「あっくん、おはよー」


「…………………おはようございます……」




一晩寝て、冷静になった俺は、陰キャであることを思い出していた。

 

昨日はなんか、いきなりの相談とその内容の衝撃にハイになってたのか、その時の勢いに任せて喋れていたが、普通に考えたら難しい。

だって、りのちゃん完全な陽キャな雰囲気なのだ。あきらかに陽の当たるところを歩いている人間だ。




「え、なんで敬語?」


「…え、いや……」




おれがそうもごもごしていると、りのちゃんの制服に衣服ドライヤーをあてている母さんが、




「りのあちゃんごめんねー、新実はすごい人見知りでねー。本当に慣れた人じゃないとまともに会話できない子になっちゃったのよ~。要はあれね、陰キャ!」




そう、ニコニコしながら話してきた。




「昨日は多分、いきなりのことで気が動転してて逆に喋れたんだろうけど、今日は普通に戻ったからそんな感じなんだと思う~」


「そ、そうなんですか…」


「そうなのよ~。はい! りのあちゃん制服これで大丈夫だと思うわよ!」


「あ、ありがとうございます」


そう言うと、席を立って母さんの近くに行き、制服を受け取って「ありがとうございます」と、寝室に向かっていった。




「ほら、あんたもそんなところに突っ立ってないで、早く準備なさい」




そう、言われたので、俺はいつもの朝の通り、キッチンでコーヒーを淹れ、ダイニングテーブルに座り、スマホを見だした。

すると、制服に着替えたりのちゃんがリビングに入ってきた。




「あっくん、朝ごはん食べないの?」


「え…あ……うん」


「そうなのよりのあちゃーん。うちはお父さんも新も朝ごはんを食べないから、ずいぶん朝ごはん文化がなくなってたんだけど、りのあちゃんが来てくれたから今日から復活! お母さんも食べてくれると嬉しいし!」


「あ、そうだったんですね。ありがとうございます。でも、それだったらわたしも朝ごはん無しでも…」


「ダメダメ! 本来食べた方がいいのに、うちの男子どもはいらないっていうから、特別に無くしてあげただけだからね! 遠慮しないでね~!」


「さ、準備できたら行きましょ! 車で行くと学校まで少し時間かかるみたいだし!」


「あ、はい!」




そう言うと、親父がソファーから立ち上がり、母さんと一緒にリビングから出ていった。


後を追うようにりのちゃんがリビングを出ていくときに、小さな声で、




「いってくるね」




と、言われた。俺は何も言わず、少しりのちゃんの方を見たが、りのちゃんは部屋から出ていった。



昨日はあんなにしゃべれたのに、挨拶もできない俺。


本当失礼なやつだなと我ながら思いながら、飲み終わったコーヒーカップをシンクに置き、自分の部屋に戻り、制服に着替えて学校に向かった。

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