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いったい何があった

俺は今マンションのエントランスにいる。


八代兄弟の駆け引きをバカだなーと聞き流し、ラーメンを断り、どんな配信をしていこうかなーなんてことを考えながら、帰ってきたらエントランスに見慣れない女の子がいた。




そして今抱き着かれている。




菅谷莉乃愛、小さい頃よく遊んだ。


あんまり覚えてはいないけど、よくうちで遊んだ。確か5階の廊下からの景色が好きだったはずだ。

小学校が別々になってから疎遠になったけど、別に喧嘩したわけではない。


母さんがこれは捨てれないねぇと言っていた、りのちゃんから俺への手紙は、「あっくん大好き」と大体書いてあった。



そんな、この時までもう過去の思い出になっていたりのちゃんが、なぜか今ここにいる。


そして大泣きしてるし、制服はところどころ汚れてるし、抱き着かれてるし。


ってかちょっと待った。落ち着いてきたら、大きな問題に気が付いてしまった。



りのちゃんは「うっうっ」って泣きながら、俺に前からぎゅっと抱き着いているので、泣くたびにその…なんだ、むにゅむにゅっと柔らかいものが当たるのだ。




「ちょちょちょちょちょちょちょちょっと待って! りのちゃんどうしたの?」




そう言いながらりのちゃんを無理やりはがした。


あのままだと免疫の一切ないおれは、爆発してしまっていたかもしれない。




「ってかここエントランスだしさ、とりあえず家に行こう! てかインターホン鳴らしてくれれば母さん居たのに!」




まだ泣いてるけど、その合間にりのちゃんはボソッと言った。




「……………………部屋番号知らないもん…うっ……」




確かにそうかーーーー。あんな小さい頃だから部屋番号なんて覚えてないか。




「ち、小さかったもんねお互い。と、とりあえず家に行こう!」




ソファーのわきにあったりのちゃんの鞄を持って、手を引いて家に向かった。




「ただいま」




家の鍵を開けて玄関に入ると、ドアが開いたのに気付いたのか母さんが出てきた。




「あらたおかえり~~ってあら、どなた? 彼女?」


「いや、母さんよく見て。泣いてるからわかりにくいけど、りのちゃん」


「あ、本当だりのあちゃんだ久しぶりねー! どうしたの~そんなに泣いて? とりあえずあがって!」




そう言うと母さんはりのちゃんの手を引いて、りのちゃんもそれに従って靴を脱いで家にあがった。




「とりあえず、ちょっとりのちゃんと部屋で話すから、母さんは入ってこないで」


「あらた変なことしちゃだめよ~? まぁ、あなたにそんな根性はないと思うけど~」


「あーもう! りのちゃんこっち!」


「飲み物とかほしかったら取りに来なさいねー」




そう言うと、母さんはリビングの方に戻っていき、俺はりのちゃんを手を引いて自分の部屋に入った。


りのちゃんにおれの寝てるベットに座らせるのはあれなんで、俺のゲーミングチェアにりのちゃんを座らせて、おれがベッドに座った。

 

 

っと待て! ゲームチェアの方が若干座面が高い故に、りのちゃんスカート短いからこれだと見えちゃう! おれが爆発しちゃう! 


そう思って、慌ててクローゼットからパーカーを取ってりのちゃんの膝にかけた。



とりあえずおれは冷静さを取り戻すために、




「飲み物とってくるから少し待ってて」




そう言って、リビングの方に行き、冷蔵庫にあったペットボトルのお茶のオレンジジュースとコップを持って、部屋に戻ろうとしたときに母さんが、




「あんた、結構泣いちゃってたしタオルかなんか持って行ってあげなさいねー」




確かに。そう思い飲み物を持ちつつ洗面所で新しいタオルを一つ持って部屋に戻った。




「どっちにする? あとこれ」




タオルを渡しつつりのちゃんに聞くと、りのちゃんは少しだけ顔をあげて、




「……………おちゃ………」




とだけ答えたので、コップにお茶をついでりのちゃんの横の机に置いた。




「落ち着いたらでいいんだけどさ、どうしたのか教えて? じゃないと俺もどうしたらいいかわからないし」




首を縦に振って頷いて、とりあえず顔をタオルで拭いたりのちゃんは、泣きはらした目で話した。




「長くなるけど…いい?」



「うん、ちゃんとずっと聞いてるから大丈夫だよ」




そう言ってしばらくするとりのちゃんは話し出した。


俺と疎遠になった小学校以降いったいどうしてきて、どうして今ここに来たのか。


ゆっくり話してもらったから結構時間がかかったけど、色々と衝撃的だった。

 


まずお母さんが既に俺達が中1の年齢の時に亡くなっていたこと。


そして、そのタイミングで転校していたこと。おれは、私立の中学に受験で入ったので、地元の中学に行かなかったから全く知らなかった。


そして、家が荒れて父親がほとんど帰ってこないこと。


更に、兄がホストをやっていること。あの虫が大好きなお兄ちゃんがホストになっているとは…



そして今日、その兄のホスト仲間に襲われそうになったこと。


胸を揉まれたって言ってたから、もうそんなもん襲ったのと同罪だからなと、すごいイラっとした。




結構落ち着いて聞いていたつもりだけど、ちょっと衝撃的過ぎて飲み込むのには少し時間がかかったけど、冷静になって俺はとりあえず目の前の問題の解決方法を考え出した。




「しかし、ホストとなると厄介だね…」




そうなのだ。色々考えたが、いきなり結構手詰まりなのだ。




警察に言ったところで逮捕まではされないだろう。


おれとかが直談判したところできっと逆効果。


家を知られていてお兄さんが鍵を持っている以上家は入られる可能性があり危険。


家の鍵を交換しても、家の場所がわかっているから待ち伏せできるから無意味。


まぁ無理だけど、喧嘩等力で押し切ったとしても、いつかりのちゃんに報復があるかもしれない。


被害届を出して裁判にしようにも、多分相手は「それで?」ぐらいの感じだろう


既に夜の人間だから、捕まることが怖くないかもしれないし、もはや危ない人達であるだろうから、常識が通用しない。




「考えても、結構詰んじゃってるんだよなぁ…」


「あっくん頭いいんでしょ? 考えて…」


「なんとかしてあげたいけど、俺が考えうる手段だとどれも片手落ちな感じというか意味がなさそうなんだよね」


「じゃあわたしはどうしたらいいの?」


「そうだよねぇ。このままがんばれ! なんてもちろん言わないけど、解決しないことには前にも進めないし…んー嫌だけど、親父に相談するしかないか…」


「あっくんのお父さん会ったことない」


「あー確かに、俺が小さい頃は仕事が忙しくて早朝深夜だったから会ってないかもね。今は仕事が変わってそこそこ余裕あるっぽいんだよ」


「そうなんだ」


「ちょっとだけ母さんと話してくるから待ってて」




そう言っておれは部屋を出ると、リビングにいる母さんに話しかけた。




「母さん、今日親父何時ぐらいに帰ってくる?」


「んーもうすぐじゃないかな?」




時計を見たら、もうすぐ19時半だ。全然気が付かなかったけど2時間以上も話してたのか。




「あなたたちご飯は? 作ってあるよ?」


「そうだね、あとでりのちゃんに聞いてみるよ」


「りのあちゃん大丈夫なの?」


「まぁ今は落ち着いたし大丈夫だけど、ちょっとおれでは解決できなそうにない問題に直面してる」


「あら~、とりあえずお父さんに電話してみたら?」


「わかった」




そう言って、俺はポケットのスマホを取り出し親父に電話した。




「あー、親父、今日何時に帰ってくる?」

「なんだあらたから電話なんて珍しい」

「いいから、んで何時に帰ってくんの?」

「今会社出たところだから30分後ぐらいかな」

「わかった、ちょっと俺ではどうにも解決できない問題に直面しているから寄り道せずに帰ってきて欲しい」

「なんだなんだ。え、怖いから帰りたくなくなってきた」

「いいからすぐ帰ってきて!」




と言い、俺は電話を一方的に切った。

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