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【菅谷莉乃愛視点】助けて欲しい

次の日、学校の昼休みに、




「ねぇねぇ、りのあ昨日どうだったの?」


「んー楽しかったよ」


「おお! まさか脈あり?」


「いやー、うちのクラスの男子と違って正直モテ要素満載だったけど、モテそうだなーって思っただけ」


「おい、俺らと違ってってどういうことだ! そいつ連れてこい! 決闘だ!」


「いやだってあんたら、ベレンシアガのシャツを着こなして、緊張しすぎないようなイタリアンのお店を予約して、会話リードしながら、さりげなくお会計しちゃって、駅まで送る。とかできないでしょぉ!」


「それはうちの男子にはむりだわぁ! 絶対焼肉屋連れてかれそう(笑)」


「焼肉屋もいいじゃねーか!」


「服に臭いがつくから親密になるまでは避けるべきですー」


「ぐ…」


「しかもベレンシアガのシャツあんたが着てたら、ベレンシアガがかわいそう!」


「ほん、それ!」


「ぐは……」




でも、本当気を使わなくてよくてこのクラスメイト達は好きだ。


その後も、直人とは連絡を取っていて、丁度編集部に呼ばれることがあったから、その日にまた都心に行くことを伝えると、カフェでも行こうと誘われて、オッケーした。


 

しかし、都心に行く日の2日前に直人から連絡がきた。




『本当に本当に申し訳ないんだけど、明後日の予定変更させてもらえないだろうか』

『んー、別にいいよー』

『本当に本当に申し訳ない! 必ずどこかで埋め合わせをします!』

『いやいや、別についでだしそこまでじゃないからー』

『いやいやいやいや、埋め合わせはさせてください! お願いします!』

『そこまで言うなら、まぁいつかお願いしますねー』

『本当ごめん!親友の一世一代の大行事についていかなきゃならなくなったんだよ!』

『へー、告白でもするの?』

『いや、相談にのるらしい』

『は?』

『いや、だからなんか相談したいことがあるって言われたから相談にのるらしい』

『いや、それはわかるけど、どこが一世一代の大行事なの?』

『それは話せば長くなるが、要約すると陰キャなんだ』

『すっごい簡潔にわかりやすくわかったわー』

『ということで、ごめん!』

『いいよいいよー!』




少し残念だなーとも思ったが、まぁ用事があるならしょうがないと思いお風呂に入ろうと思ったら、誰かが帰ってきた。




「なんだ、りのあいたんだ」




ずいぶん久しぶりに見た兄だ。髪の毛はロン毛になっていて、なんかガラが悪い感じ。




「なに」


「あー高校の時の制服取りにきただけだから、俺にかまうな」




そういうと、持っていたベレンシアガのクリップバックをダイニングテーブルに投げて部屋に入っていった。バックのチャックが少し空いていたのか中から名刺のようなものが飛び出した。


スーツを着てなんか格好つけた兄の写真に「神崎光」と書かれていた。




「んだよ、見てんじゃねーよ」


「兄貴、ホストやってんだ」


「わりーかよ! 関係ねーだろ!」




そう言って、わたしが見ていた名刺を奪うと、家から出ていった。


まぁなにをやってようが関係ない。わたしにさえ迷惑をかけなければ好きにすればいい。


そう思って、お風呂に入る準備をしだした。



それからは、いつものクラスメイトとワイワイ過ごして、直人ともちょいちょいやり取りをして、またいつもの日常に戻った。

 

しかし、前回兄に会ってから3週間後ぐらいの深夜、それも深夜3時ぐらいにドアがガチャガチャされた。


一体何だと思って起きてドアののぞき穴から外を見ると、ホストっぽい人が立っていて、兄らしき人が抱えられていた。



いったいなんだよ。と心の中でため息をつきつつも、無視するわけにもいかないのでチェーンをかけたままドアを開けた。




「なんでしょうか」


「お、家の人いんじゃん。ってかめっちゃかわいいね。ってかめっちゃスタイルいいね。」

 


わたしは自分の服装をようやく思い出した。いつも誰もいない家の、しかも寝間着だ。


短いホットパンツの様なズボンにキャミソール。


わたしはぱっと横にあったパーカーを取り体を隠すように着た。




「あーもったいない。言わなきゃよかった。ってかそろそろ開けて欲しいんだけどー」


「なんでですか」


「こいつ兄じゃない? 弟かな? まぁどっちでもいいんだけど親族でしょ?」




といって顔を持ち上げると、寝ている兄だった。




「兄ですね。」


「そう、よかった。こいつ潰れちゃってさ、タクシー乗せたんだけど、結構遠い住所いうから、大丈夫か? と思ってついてきたんだよねー」


「そうなんですね、ありがとうございます。」


「というわけなんであけてよ」


「いやです。兄をドアの前に置いておかえりください」


「なんでー。ちょっとお兄さんとお話ししようよ。ついでに気持ちいことしてあげてもいいよー」


「大丈夫です。とりあえず、ほとんど一人暮らしのようなものなので、家にはあげれませんので置いておかえりください」


「あはは、うそうそ。今日はどうせ戻らないとだから、このまま帰るよー! でも、あんまりつんつんしてると、お兄さん力づくでどうにかしたくなっちゃうなぁ」




そんなことをいいつつ、チェーンの向こうからわたしの体をなめるように見てきた。




「んじゃここに置いとくんであとはよろしくねー」




そう言うとホストの人は、駅の方に向かって歩いていった。

 

いなくなったのを確かめてから、玄関前にいる兄を引きずってなんとか玄関にいれた。もう家の中だしここでいいだろ。


と思い、わたしは鍵をかけ再び寝た。

 


朝起きても、兄はまだ玄関で寝ていたが、とりあえず無視して学校に行った。授業中に、兄からメッセージがきた。




『どういうことだ』

『知らない。真夜中に潰れたからってホストの人が連れてきたから、とりあえず家の前に置いて帰ってもらって、ひきずりこんでおいただけ』

『その人名前は』

『知らないし、聞いてない。てかホストの人とか連れてこないで』




それから連絡は返ってこず、放課後家に帰ると兄は既にいなかった。

とりあえずよかったと思い安心して、わたしは届いていた雑誌の見本を見だした。



兄からの連絡はあれ以降なく、とりあえず連れこなきゃなんでもいいや。むしろ帰ってこないで欲しい。

 


そんなことを思いながら、また数日たち、その日は放課後に何も予定がなかったので、そのまま家に帰ると、家の鍵が開いていた。

 

締め忘れ? と思って家に入ると、玄関に見慣れない男物の靴が何足かあった。


家の中を見てみると、この前兄を連れてきたホストの人と、もう一人知らないこちらもホストっぽい人がダイニングに座っていて、兄がソファーで寝ていた。




「あ、おかえりー。こいつ店で潰れちゃって店で寝かしてたんだけど、店締めるって言われても起きないからとりあえず連れてきたんだよねぇー。鍵はこいつの財布漁ったら出てきたからそれで開けたよー」


「……そうなんですね」


「制服もかわいいねぇ。しかもやっぱりめっちゃ美人だ。」


「とりあえずもうお帰りください」


「まぁそう言わずさ、二回も送り届けたんだから、少しぐらいお話ししようよ」


「いえ、特にわたしはお話しすることないので」


「まぁまぁ、二回ともタクシー代俺が出してるんだから、少しお礼してもらわなくちゃさ…」




そう言って、ホストの人はわたしの前に立つと、肩をつかんできた。




「しかし、いい体してるねぇ。とても高校生には思えない。まぁ、お兄さんの面倒見たお礼ってことでさ、優しくするからさ」




そう言うと、そのホストはわたしの胸を揉んできた。わたしは思いっきり肩を振って、なんとか肩の手が外れたから後ろに逃げた。




「おー、でかいと思ってたけど、これは本当に大きいねー。何カップあるの?」


「やめてください。警察呼びますよ」


「おれ結構うまいと思うからさ? 気持ちよくしてあげるってー。そんな感じなんだから処女ってわけでもないでしょ? だからこっち来なよー」



そう言いながら、ゆっくりとこっちに向かってくる。


もう一人のホストの人が、「無理やりは流石にやばくないっすか…」みたいなことを言ってるが、全く聞いてない。

 

そしてまたわたしの前まで来ると、また胸を揉んできた。




「やめて!!!!」


「まぁまぁそう言わずさ。流石にここじゃなんだからベットに行こうよ」




そう言われ腕を持たれわたしの部屋に向かっていくホスト。わたしのいない間に家を見たようだ。



本気でヤバイ。そう思っていると、机に置かれたスマホを別のホストの人が見て、




「蓮さん! 咲夜さんから電話ですよ!」




男はそう言うと、チッっと舌打ちしてわたしの腕をつかんだままスマホの方に向かいだした。


わたしは、ここしかない!と思い、思いっきり腕を振って離れて、近くにある鞄をとり、靴をもって走って家を出た。

 


必死に走った。手に持ってる靴を履くために立ち止まることすら怖かった。


わたしは駅までずっと走り、駅についてようやく持っていた靴を履いた。もう怖くて怖くて、今にも泣き崩れそうだったけど、「ここにいちゃ危ない!」と思い、泣きたい気持ちを堪えて必死に考えた。



どこかに隠れなきゃ。でもどこに? 華蓮の家? でも華蓮に迷惑がかかるかもしれない。じゃあどこに?



わたしは電車に乗った。本当に小さい頃に言われた言葉を思い出しながら。








「あっくんが守ってあげるから大丈夫だよ!」










連絡先も知らない。


今もあの家に住んでいるのかもわからない。


でも、もうどうすることもできない。



わたしは、急いで電車に乗り、小さい頃住んでいた場所の近くの駅に向かった。




幸いマンションはあった。小さい頃の記憶だから朧気だけど、同じだと思う。

でも、部屋番号がわからない。

わたしは、マンションの受付の人に「どうしたんだろう?」みたいに見られながら、エントランスのソファーに座った。



ずっと下を向きながらどれぐらい待ったのかもわからない。


今にも涙が出そうだ。もう耐えられないかもしれない。


そう思っていると、エントランスの自動ドアが開いた。


そっと入口の方を見ると、小さい頃とは全然違うけど、ネットで調べた四谷高校の校章が書かれた鞄。少しだけ昔の面影がある。あっくんだ。




そう思ったら、涙がどんどん出てきた。




「………あっくん…!」



「助けて…!」




もう涙がどんどん出てきて止まらなかった。




「え…もしかして、りの…ちゃん?」




覚えていてくれた。


すごく懐かしい。りのちゃんと呼んでくれた。


わたしはもう怖い気持ちをどうすることもできず、あっくんに抱き着いた。

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