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【菅谷莉乃愛視点】四谷高校の男子

そのまま高校2年になって、しばらくしたころ一つだけ変化が訪れた。


近頃、隣駅の高校とか含め、近隣の高校生の間で、「西の中里。東の菅谷」というのが広がっていたのだ。




「おお、東の菅谷様がいらっしゃったぞー」




クラスの男子がわたしが登校してきたのを見て話しだした。




「うるさいなー、そのなんか番長みたいなの本当嫌なんだけど」


「まぁお前番長っぽいしいいんじゃね?」


「はぁ?? どこが番長だっていうのよ!」


「そういうとこ!」




そう言って周りの子たちも笑ってた。


なんでも駅を挟んで西側の私立高校に中里さんという美少女がいるらしい。


そして東側のこの高校ではわたし。


東西の高校に彼氏のいない超絶美少女がいるというのを「西の中里。東の菅谷」と言っているのだ。




「大体誰なの、そんなこといいだしたやつーーー! 絞めてやる!」


「ん? ああ、それおれら」




と言って、複数の男子が悪びれもなく手をあげた。




「おーまーえーらかよぉぉぉぉ! 華蓮やっちゃって!」


「おっけー! お前ら、今日のお昼はホットドッグが食べたい!」


「買ってきます!」




うぅ…とわたしは頭を押さえつつ、このクラスの雰囲気はやっぱり好きだった。




「いや、かわいい子がいるっていうから見に行ったのよ。」


「暇だねあんたらも。んで、かわいかったの?」


「いや、かわいいなんてもんじゃねぇ、ありゃ芸能人だ、びびった。なんていうか菅谷とはタイプが違ってて、清楚で儚い感じだ」


「だれが図太いだよ!」


「いや、そうじゃなくて! そうだけど! 菅谷もスーパー美人だと思ってるから俺ら! 正直クラメイトじゃなかったらやりたい!」


「しねー!」




そう言ってホワイトボードマーカーを投げつけた。




「うぅ…んでだ! その高校の友達が、可愛いだろってなんか自慢してくるから、東には菅谷がいるわ! ってとりあえず自慢し返して、その流れで西の中里、東の菅谷になった」


「いや、意味全然わかんないから…」


「まぁ別にお前の写真を売りさばいたりしてるわけじゃねーしいいじゃん?」


「そんなことしたらお前の家燃やす…」




と華蓮が言い出したところで、




「おまえらじゃれてないで座れー」




と先生が入ってきた。悪いやつらじゃないから嫌いになれない、そんなクラスメイト達だ。




まぁもう男子に見られるのはずっとだからある意味慣れてしまっており、クラスメイト達が派手だけど、妙に仲間意識があるから、色んなものから守ってくれたりもして、特に問題もなく彼氏を作ることもなく高校2年も終わりになるという頃に、恵が話しかけてきた。


恵は同じ商業科で仲良くなった子で、テニス部でガチで頑張っていたりもする。


うちの高校テニス強いらしいのよ。恵が夏の大会に出るってことで、クラス全員で応援に行ったりもした。


クラス全員で行くってどんだけ一体感高いんだよと…。まぁわたしも行ったんだけど…




「りのあー、あとマネージャーの華蓮ちょっといいー?」


「んー? 恵どうしたのー?」


「あのさ、来年うちの高校にテニス推薦で入る子がいるのね。んでその子、最近ちょくちょく練習来てるんだけどさ、その子がお兄ちゃんにりのあの連絡先聞きたいって言われてるらしいんだけどどうするー?」


「恵に聞いてきたってことはここら辺の人じゃないの?」


「ぜーんぜん。都心の四谷高校の人だって。なんかその子が今度行く高校にめっちゃきれいな人がいるって話してたのを覚えてたらしい」


「四谷と言えば秀才じゃん天才じゃん! あたしらの倍は頭いいよ! りのあどうするー?」


(四谷か。確かあっくんと一緒だ…)

「んー、いいよ教えても」


「あ、本当? んじゃそう伝えるわー」


「りのあ珍しいーーー! やっぱり頭の良さには天下のりのあ様も落ちちゃいますか?」


「いや、そんなんじゃないからー。なんか気分!」


「ま、りのあがいいんならマネージャーのあたしは何も言うことはありません!」


「頼りにしてるよー華蓮マネージャー!」




そう言ってふたりでキャイキャイはしゃいでた。


しばらくして、恵からその人のLIMEのQRコードが送られてきて、取り合えず登録した。


なおとか。あっくんじゃない。まぁあっくんなわけないか…。


そんなことを思ってると、メッセージが届いた。




『四谷高校2年の八代直人といいます!よろしく!』

『菅谷莉乃愛です。高2です。よろしくお願いします』




四谷高校の名前を聞いてか、ずっと忘れていたあっくんが急に頭の中に登場している。


あの頃は楽しかったな。お母さんも元気だったな。と。変わり果てた我が家のなんとか保っている自分の部屋で、その日わたしは少し泣いた。




その後も、頻繁じゃないにせよメッセージが届き、適当に返事をしていた。


この人タイミングがうまいのだ。


うざくない頻度でうざくない内容を話してくる。そんなことを思っていた。



高校3年になり、高校に入ってからずっとやってる読者モデルで、夏物の写真撮影に出て欲しいと編集者さんから連絡がきた。


お金も少しは稼がないとなので、『了解です』と返事をすると撮影場所と日時が送られてきた。


海沿いかー。去年みんなと海行ったの楽しかったなー。


なんて思っていると、八代さんからメッセージが届いた。




『りのあちゃん、今度どっかでご飯でも行かない?』

『んー遠いからー』

『そろそろ夏物の撮影でこっちの方来るタイミングあるんじゃないかと思ったんだけどー』




見られてるのかと後ろを振り返ったが誰もいない。




『よくわかったね』

『うち親父芸能事務所やってるからそこら辺は結構知ってるのよ』

『なるほど…』

『その撮影終わった後についでぐらいでどう? もちろん奢るよ!』

『んー、わかった、いいよ。』

『イエーイ!撮影いつなの?』

『再来週の日曜に豊洲』

『おっけー、んじゃ適当に店は俺が探しとくね!』

『わかった。撮影現場に来られると色々めんどくさいから、待ち合わせ場所も決めておいて』

『了解だよー』




ノリは軽めだけど、割と紳士そうだし、まぁ別にご飯ぐらいならいいかとオッケーしたが大丈夫だっただろうか…。


幸い、ここら辺からは結構離れてるし噂になったりもしないだろうから大丈夫だとは思うけど…。


噂されて既成事実とかにされると面倒くさい。




「りのあー、今週の日曜にみんなでロウンドワン行こうって話してるんだけど、一緒に行こう―」


「あーごめん。今週の日曜は撮影なんだー」


「なーんと! んじゃロウンドワンに行く日を変えよう!」


「いやいや、わたし抜きでいってきていいよー!」


「んじゃ撮影終わったら来てよ!」


「んー、撮影終わったらご飯食べに行く予定なんだよねぇ」


「ええ!! 誰と??」


「この前紹介された四谷の人―」


「まじ? 付き合っちゃうの?」


「ないない! ついででいいから奢るから行こうって言われたからたまにはいいかなって思って奢ってもらうだけ」


「本当かなー。怪しいな~。りのあが男子と二人でご飯を許可する時点で怪しいなぁ」


「ないって(笑)」


「しかも妹ちゃん情報だと顔だけはイケメンらしいじゃない」


「恵がそんなこと言ってたねー。でもわたし、撮影でイケメンとか割と見慣れてるからさー」


「まぁそれもそうかー。んじゃ来れないかー! じゃやっぱりロウンドワンに行く日を変えるわ!」


「やっぱりそうなるんだ(笑)」




そうして、撮影の日になった。






撮影の日は天気は快晴で、夏物の撮影にはもってこいな感じだった。


撮影現場につくと、ヘアメイクされて、今日の衣装を渡されロケバスの後ろで着替える。そして撮影して着替えてヘアメイクしての繰り返し。




「本日の撮影は以上でーす! おつかれさまでしたー!」


「りのあちゃんお疲れー。今日もよかったよー!」




そう言いながら、編集者さんがやってきた。




「あ、おつかれさまです!」


「これ、食べてねー!」


「いつもありがとうございますー。」


「いいよいいよー! Rinoが着るとめっちゃ人気になるから、おかげでクライアントもすぐ集まるし!」




わたしは、モデルとしてはRinoとして載っている。本名でもよかったんだけど、なんとく偽名にしといた。


 

 

「そう言ってもらえると嬉しいです!」


「まぁみんなRinoが着たからってRinoになれるわけじゃないんだけどねー。特にこの胸とか」




といって、つんと胸の横を編集者さんが突っついてきた。




「ひゃ、ちょ、ちょっとやめてくださいーーー」


「かわいいねー!どうするー? 駅まで車で送ろうか?」


「あ、大丈夫です! 今日この後ご飯に行く予定なんでー」


「おお! 彼氏?」


「いえいえ、そんなんじゃないですー。そうなる予定もないですが、奢ってくれるっていうんでたまにはいいかなーと」


「そうなんだねー! まぁ変な男には気を付けなよー。スタイルいいんだし、男ども常にそんなこと考えてるから」


「りょうかいでーす!」




そう言いながら、現場を後にし、待ち合わせのセタバに向かった。




『終わったんでこれから向かいます』

『了解―!おれもう中にいるから着いたら教えてー』

『わかりましたー』




そう連絡して暫くすると待ち合わせ場所のセタバについた。




『つきましたー』

『一発でわかったから今出るとこw』




そう連絡がきたので出入口を見ていると、高校生ぐらいの男の子が出てきた。




「どうも、八代直人でーす」

「菅谷莉乃愛です。」

「よろしくねーりのあちゃん! んじゃ行こうか」




とわたしの横を歩き出した。


八代直人さんは、イケメンだとは聞いていたが、本当イケメンだった。


目が二重でぱっちりしていて暗めの茶髪。ザニーズ系の顔立ちだ。


細身の黒いスボンを履いて、ベレンシアガのシャツを着ている。


本当いまどき。むしろ高校生にしては大人びてる雰囲気すらある。

 


そうしてしばらく歩くと、アットホームな感じのイタリアンのお店についた。




「なんかかしこまったお店も嫌だし、楽に話せた方がいいから、この店にしたんだけど大丈夫―?」


「あ、うん。むしろこういうほうがいいかも」


「それならよかったー」




なんかもっと背伸び感のあるところとかに連れていかれるのかと思っていたから逆によかった。


こういう気遣いまでできてこの顔で、モテること間違いなしだろ。


ベレンシアガのシャツを着てるぐらいだから、お金もそれなりにはあるんだろうし、普通のJKなら即落ちだわ。


そんなことを思っていると、席に案内された。




「りのあちゃんどれがいいー?お勧めはパスタだよー!」


「あー、それじゃこのえびのトマトクリームパスタにしようかな」


「おれは、マルゲリータピザ!」


「パスタがお勧めなのに、八代さんはパスタじゃないの?」


「八代さんじゃなくて、直人で! 同じ年なんだし!」


「んじゃ直人はパスタにしないの?」


「ふふーん、ピザにすればりのあちゃんとシェアできるでしょ! なんならりのあちゃんのパスタもシェアしてくれてもいいよ! あーんって!」


「ふふ…キモ」


「ちょっとぉ! キモっていったでしょぉぉ!」


「いやだってー。あ、すいませーん!」




店員さんを呼び注文した。


結果的に、楽しかった。なんかこう話題が豊富で、会話がうまい。


「どんな人がタイプなのー」とかも聞いてきたけど、別に自分を押し付けてくるわけでもなく、会話をリードしてくれて、時折自分を引き合いに出して笑わせてくれる。


普段あんなクラスメイトとばかり一緒にいるので、その大人っぽさにびっくりした。



そして食事が終わり、そろそろ帰ろうかーと言われお会計をもっていった。


慣れてる。慣れすぎてて逆に怖いぐらいだった。



「ごちそうさまでしたー」


「いえいえ、これぐらい大丈夫だし、りのあちゃんとご飯行けるなら席料払わないといけないぐらいだよ!」


「あはは、1時間50,000円になりまーす」


「たっかぁ!」


「でも、意外に楽しかったしありがとう」


「意外にってどういうことよぉ!」


「いや、こうなんていうか? 同年代の男なんて基本めんどくさいものとばかり思ってたからさ」


「まぁりのあちゃんぐらい可愛いと、そうなっちゃうのかもねー。うちは男子校だしそういうのないからなぁ」




と話していると駅についた。




「んじゃりのあちゃん東進線でしょ? おれ中圏線だからあっちなんでここで!」


「あ、うん。ありがとねー!」


「いえいえ、また今度一緒に行こうねー!」


「機会があったらー。じゃあばいばーい!」


「ばいばーい」




あれだけスマートにエスコートしておきながら、子犬のしっぽのように手を振っている。ふふっと笑いながらわたしは電車に乗った。

 

エスコートもうまいし、会話上手でイケメン。そしてうざい行動をするわけでもなく、次はいつ! みたいに迫ってくるわけでもない。こりゃモテるわー、そう思いながらその日は帰った。

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