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【菅谷莉乃愛視点】幼い頃の約束

「りのあ、大人になったらあっくんと大きなお城に住むから、そしたらママも住ませてあげるね!」


「おー、そしたらママはプリンセスのお世話係だなー」


「いいわね~、そしたらわたしにもお部屋かしてね~」




そう言って、あっくんのママが話しかけてきた。




「いいよ! りのあがプリンセスだからね!」


「うんうん、全然いいよ! あっくんのママもお世話しちゃう!」




そうやって、ママとあっくんのママと話してたら、手に石を持ったあっくんが返ってきた。




「今日はいいモンスターが倒せたよ! はい、これ!」




そういって、あっくんは持っていた石を渡してきた。




「ありがとう! あっくん大好き!」




わたしは石を受け取り、お城という名のレジャーシートに持って行った。





わたし、菅谷莉乃愛は、両親と兄がいる4人家族。


お母さんは毎日仕事に行っていて、お父さんは結構家にいる。

その頃はお兄ちゃんとも仲良しで、よく遊んでもらっていた。


でも3歳年上のお兄ちゃんは虫が大好きで、わたしは虫があまり好きじゃなく、遊びたいことが折り合わないことも多々あった。



あるお母さんがお休みの日に、お母さんが話しかけてきた。




「りのあー、公園でも行くー?」


「うん、行く!」


「こうすけはー?」


「虫の家作ってるから行かない!」


「んじゃりのあと行ってくるから、あんたみといてね」


「あーはいはい」




そうスマホをいじりながら返事したのが、父雄一だ。




「りのあー今日は何やるの?」


「今日は砂場でお城作る!」


「ええ、砂場セット持ってきてないよー」




ママの話はほとんど聞かず、砂場に走っていく。




「ママ、しゃべる欲しい!」


「だから持ってきてないってー」


「えーーーーー」




そうすると、先に砂場で遊んでいた男の子が近づいてきて、




「これ、貸してあげるよ!」




そう言って、しゃべるを差し出してきた。




「ありがとう!」


「なに作るの?」


「お城!」


「あっくんも手伝ってあげる!」




そう言って、その子が持ってきたのであろう砂場道具を近くにいくつか持ってきて、二人でお城を作り出した。

 

お母さんは、その子のお母さんに「すいませ~ん」みたいに話しつつ、お母さん二人で話し出した。

 

結局その日は、砂場の後もその子、あっくんと一緒に遊んだ。


あっくんはお兄ちゃんと違って、虫がそんなに好きじゃないというか嫌いなようで同じペースで同じような内容で遊べて、すごく楽しかった。


蚊が飛んできたときに、「うわぁ、むしぃー…」とお母さんに訴えかけてるときは、わたしはあっくんよりは大丈夫だわと思っていた。


 

それ以降も公園で会うと必ず一緒に遊んだ。


幼稚園に行くようになると、なんとあっくんと同じ幼稚園で同じバス停から幼稚園に通った。


文字が書けるようになってからは、あっくんと手渡しのお手紙のやりとりもして、もうあっくんと結婚するものとばかり思っていた。


手紙の内容はほとんど「あっくん大好き!」「りのあちゃん大好き!」という、手紙というか意思表示の繰り返しではあったが…



ある日幼稚園バスに乗って帰ってくると、バス停にお父さんもお母さんもいなかった。




「あ、りのあちゃん。りのあちゃんのママからあっくんのママに連絡が来て、ママどうしてもお仕事が抜けられないらしいから、少しうちであらたと遊んで待ってよーね」


「りのちゃんをお家にご招待するの?」




そうあっくんが聞くと、




「そう、ご招待!」


「え、いいの! 行く!」




あっくんの家はバス停からすぐ近くの大きなマンションで、入ると小さな公園みたいな中庭があったり、まぁマンションなので当然なのだが家なのにエレベーターがついていたり、当時のわたしには色々と新鮮だった。


そしてあっくんのお家に入った。




「あらた、りのあちゃん手洗ってきてね~」




そうあっくんのお母さんがいいつつ部屋の中に入っていった。




「あっくんがおうちをご案内するよ!」


「うん!」




そう言って、ここが洗面所でここがお風呂でと案内してくれた。


あっくんのお母さんが、「あ、寝室はやめて~~」と遠くで言っているが時すでに遅し。

 

ここが寝るところだよーと案内された寝室は、洗い終わった洗濯物が山積みになっていた。

「りのあちゃん内緒にしてね」と言われたので「うん!」と返事をすると、あっくんはもう移動していて「りのちゃんこっちー」と呼んでいた。



そして最後に案内されたリビングは、広かった。

うちの倍ぐらい広かったんじゃないだろうか。

リビングの角には畳の部分もあり、畳のエリアはおもちゃがあふれかえっていた。




「ここが遊び部屋だよ!」




そう言って、案内されてわたしは目を輝かせた。


わたしの家はあまり広くないからと、あまりおもちゃを買ってもらえたりはしないんだが、ここはおもちゃ屋さんか? というぐらいおもちゃがいっぱいだった。


更にあっくんは一人っ子なのに、なんと女の子のおもちゃまである。




「あらたじゃなくて、ママが小さいとき持ってなかったから欲しいなぁと思って買っちゃったんだよねー」




と、あっくんのお母さんが言っていたのはサルバニアファミリーの数々だ。


他にもリカちゃん人形やビーズ等、女の子向けのおもちゃが少しあるではなく、もう完全に揃っているのだ。




「りのちゃん、サルバニアやりたいの?」


「うん! わたしのおうちにはないけど、おもちゃ屋さんで見たことある!」


「じゃあ…」




と、大きな赤い屋根の家をあっくんは引っ張り出し、あれやこれやと出してきた。


驚いたことにあっくんも一緒にサルバニアで遊びだした。




「もう少ししたらおやつにするからね~」




と、あっくんのお母さんが声をかけてきたが、完全に二人の世界に入ってしまっており返事をすることなく、あーだこーだと遊んでいた。




サルバニアで遊んでおやつをもらって、またサルバニアで遊んでいると、「ポロロン、ポロロン、ポロロン」と音が鳴り、あっくんのお母さんがモニターに向かって話して、しばらくするとお母さんが入ってきた。




「りのあごめんねー、遅くなってー」


「あ、ママ、大丈夫だよ! あっくんこの子たちはね…」


「りのあ…もう少しママー! とかないの……」




とお母さんは言っていたが、もうわたしはあっくんと遊ぶのを再開していた。


お母さんも「コーヒー飲みますか~?」「あ、すいません、いただきますー」と、ダイニングテーブルの上で話し出していた。

 

そして、夜ごはんだからそろそろ帰ると言われ、しぶしぶあっくんとはバイバイした。


帰り道では、どうやって遊んだかを力説し、「たのしかったねー」と、ヨシヨシと頭をなでられた。



それからは、あっくんにご用事がないときは、よくあっくんのマンションで遊ぶようになった。


お母さんも一緒の時もあれば、お母さんがあっくんのお母さんに連絡してくれて、あっくんの家で遊びながら待っているときもあった。

 

サルバニアやブロックで遊んだり、中庭にレジャーシートを広げてプリンセスごっこをしたり。


あっくんは普段はゲームをやることが多いみたいで、わたしも少しやってみたがちんぷんかんぷん。


ただ、これはあーで、ここはこーでと説明しながらゲームをやるあっくんを見ているのも好きだった。

 

そしてもう一つ。あっくんの家は5階建ての3階。だけど、5階までいけないということではないので、「5階まで行ってみよう」と二人で向かったところ、景色が良かったのだ。


超高層とかじゃないけど、ひらけたマンションの空間の向こうに都心の高層ビル群が見える。なんかいいなぁとわたしは思い、その景色を見るのが好きになった。



それからは、あっくんと二人で度々5階の廊下まで行き、階段に座って景色を見てお話ししていたりした。




「きれいだねーやっぱり」


「んーあっくんは普通だけど、りのちゃん好きだよね!」


「うん、大好き! あっくんも大好き!」


「あっくんも、りのちゃん大好きだよ!」


「りのあ、大人になったら景色がいいところに住みたいな! でも、高いところは危ないかな」


「あっくんが守ってあげるから大丈夫だよ!」




と、二人で肩を寄せ合って階段に座りながら手をつなぎ話していた。


わたしたちの後ろでお母さん達が、




「かわいいねー」


「かわいいですよね~。手も繋いじゃって!」


「本当このまま結婚!なんてなったらおもしろいねー」


「あらたにはもったいないけど、なんかいいですよね~」




と、写真を撮りながら話していた。


幼稚園を卒業するまで、そんな生活が続き、あっくんともずっと仲良しだった。

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