【中里雪菜視点】ホロサンジの太田さん
アークさんこと湯月新さんから、もうファミレスについたから、先に入ってると連絡がきた。それを妹の彩春に伝えると、
「ほらー、お姉ちゃんが中々トイレから出てこないからー」
「だって、一応少し化粧しておこうかなと思って…」
「もーお姉ちゃんなんてそのままで絶世の美少女なんだから気にしなくていいのに―」
そんなことを言いつつ、妹と待ち合わせのファミレスまで歩いた。
中に入ると、奥のBox席から一人の高校生の男の子が手を振ってきた。
彩春は、八代くんの妹のお家に遊びに行ったときにお兄ちゃんとも会ったらしく、イケメンだから多分わかるだろうと言っていた。
ドリンクバーを取ってきて席に着くと早速と、八代くんが手短に自己紹介を始めた。
八代直人くん。四谷高校の3年生。髪は落ち着いた茶髪で、きれいにセットされてる。
顔立ちも整っていて、特にアクセサリー等をつけているわけではないが、シャツのボタンの開け方とかも含めて品がないわけでもなくお洒落をわかってるって感じだった。
正直、雑誌のモデルをやってますと言われても不思議じゃない。お話もうまいし、この人はモテるだろうなーと思った。
そしてアークさんこと湯月新くん。同じく四谷高校の3年生。
髪は黒色で特にセットなどはしておらず、目にかかりそうな前髪を横に流してる。
制服はなんかこうよれっとしていて、とりあえず着れれば何でもいい感がにじみ出ていた。
ただ、彩春が事前に言っていた脂ぎって太っているとかとは真逆で、細身でスラっとしていて、普段のアークさんの優しい感じからは想像できない程クールなイケメンなのだ。
間違えた、多分ちゃんとすればイケメンになる人だ。
なんて思いながら自己紹介をしたが、アークさんはうまく話せないのか黙ったままだった。
しかし、八代くんの妹ちゃんから場が和むようなメッセージが来て、湯月くんはしゃべることができるようになった。
そして実際相談してみると、本当多分この二人頭いいんだろうなって感じがものすごく伝わってきた。
湯月くんはやっぱりアークさんで、OPEXを教えてくれる時と同じように結論を先にはなし、なぜならばと続けていって証明する。
とりあえず私と妹はぽかんだ。
この人たち本当に高校生なのか? なんか大人の人と話しているような感じだった。
意外だったというか、当たり前なんだけど…八代くんが湯月くんの証明のペースに完全についていっていてびっくりした。
湯月くんはいかにも頭いい感じだけど、やっぱり八代くんも相当なんだなと。
結局、どういう風に連絡を取るかまで教えてもらって、なんだかすごくすっきりした。
私が湯月くんの心を開いた二人目だと言われたときはちょっと嬉しくなっちゃったし、何より妹の彩春も私と変わらない程可愛いと言ってくれていたのが嬉しかった。
そうなのだ。彩春だってめちゃくちゃ可愛いのだ。お姉ちゃんから見たら彩春の方が可愛いと思うぐらいだ。
二人と別れて彩春との帰り道、
「いやー、やっぱり頭がいい人は頭がいい人だったわ」
「そうだね。二人とも回転がすごい早いね」
「ってかおねーちゃん、生アークさんはどうだったの?(ニヤニヤ」
「っ…生アークさんって…。カッコよかったよね。意外にって言っちゃうと失礼だけど…」
「いや、本当! 私もびっくりした! 確かに気にしてないんだろうなー感はめっちゃでてたけど、ちゃんとしたらあれはクール系イケメンだよね」
「私もそう思った。八代くんは聞いていた通りのイケメンだったし、あれで二人とも頭もいいって相当もてそうだけどね…」
「まぁ四谷高校は男子校だし高校での外部受験もないから、そういうのはあかねのお兄ちゃんみたいに活動的にしてないと特にないんだろうけどねー」
「そうなのかもね。でも相談できてよかった」
「よかったねお姉ちゃん!」
そうして私は、相談した通りフリーのメールアドレスで記載されていたメールアドレスへ連絡した。
すると、翌日ちゃんと署名付きでメールの返信が来て、メールだけでお話しするのもなんだから一度オンラインでお会いしませんか?と打診された。
太田さんは、太田宏美さんと言い、ホロサンジのマネジメントの部署の方のだ。
配信用の機材も持っているので問題ない旨連絡し、日程を調整した。
そして、実際にオンラインで面談する日時となった。指定されたアドレスにアクセスすると、
「あ、こんにちは、ホロサンジの太田です! 今日はお時間ありがとうございます!」
「あ、いえ、こちらこそありがとうございます。白風あげはです。」
「白風さんよろしくお願いしますね! あ、今顔見えちゃってますけど、顔出ても出てなくてもどっちでも大丈夫ですよ?」
「あ、このままで大丈夫です」
「しかし、白風さん見るからに若いね。そして可愛いね…最早なぜバーチャル配信者なのかわからないよ…」
「まぁ色々ありまして…一応年は17で高校3年になります」
「若いねー。まぁそれぐらいの子は他にもいるし、実際の本人が可愛いかどうかは関係ないからいいんだけどね!いきなりお住まいとか聞いちゃうのもあれなんでオンラインにしたけど大丈夫?」
「はい、大丈夫です!」
「それじゃ早速なんだけど、ホロサンジという会社は知ってるかな?」
「はい、存じてあげてます。多くのバーチャル配信者の方が在籍されている事務所の様な会社さんですよね?」
「そうです! ご存じ頂けていてよかったです! あ、あとそんなに固くしゃべらなくて大丈夫だよ! 高校生だとあんまり慣れてないだろうし!」
「あ、ありがとうございます」
「知ってもらってるなら、もう単刀直入に言うと、ホロサンジに所属してバーチャル配信者をやりませんか? という感じだね! ただいくつか条件もあるから、今日はそれを聞いてもらって考えてみて欲しいなって感じだね!」
「わかりました! ありがとうございます」
「それでホロサンジに所属してもらう為のこちら側の条件なんだけど、まず、週に5本以上の動画投稿もしくは動画配信が必須となります。まぁ白風さんは、今でもこれぐらいやってるから大丈夫だとは思うけど。」
「はい、それは大丈夫そうです」
「二つ目、これが大きくて、もしうちに所属してもらう場合、転生してもらうことになります。なぜかというと、既にあげはという名前を使っているバーチャル配信者をホロサンジで抱えてしまっている為です。白風さんの場合、炎上しているわけでもないし今伸びてるから、被らなかったら転生しなくてもいいかなと思ったんだけど、流石に被っちゃうのはどうしようもできず…」
「そうですよね…」
そうなのだ。
実は後々気づいたのだが、苗字は違えど「あげは」という名前のバーチャル配信者さんが存在していたのだ。
ホロサンジでもまだまだ始めたばっかりの方みたいでなぁなぁで進めてこれたが、ホロサンジに所属するとなると私が転生ということになるんだろうなぁとは思っていた。
「後は細かいお金の取り決めもあるんだけど、これは白風さん一人ではなくご両親の方も交えてお話ししたほうがいいと思うので、実際にさっきの二つの条件が受け入れられるかというところをまず検討してほしいなと思っています。」
「はい、わかりました」
「その代わり、ホロサンジとしては、スケジュールのマネジメントや各種機材の提供及び各種宣伝活動等全面的に活動をサポートさせていただきます」
「了解しました」
「ちなみに、白風さんが聞きたいことはある?」
「あ、ではいいでしょうか?所属すると、何か強制をさせられるようなことはあるのでしょうか? 例えばこの案件をやらなければならないとか、顔出ししなきゃならないとか」
「そうですねー。後でもめてもあれなんで正直にお伝えすると、ホロサンジも企業なので、案件でこれお願いできないかなー?みたいな感じで、こちらからお願いさせてもらうようなことはあります。ただ強制をすることはありません。強制しちゃうと、リスナーさん離れちゃったり、ネットでホロサンジが袋叩きにされちゃったりするので…(笑)」
「なるほど、ではお願いされても最終的に私が断ったらそうはならないということですか?」
「そうですね! 私みたいなマネージャーみたいな人間が付くので、マネージャーは味方ですから逆に社内で、そういうことは白風さんはやりません! みたいな感じで守りますしね!」
「そうなんですね」
「あと、顔出しはないですね。むしろSNSも含めてできうる限りご自身は映らないようにしていただきたいと思っています」
「そうなんですね…よかったです」
「あら、うちではありえないけど、白風さんなら顔出しでも全然いけるってか、顔出しの方がすごいことになるんじゃない? って感じだけど(笑)」
「それは妹にも言われるんですが、私はバーチャル配信者の方がよくて…」
「そうですか、まぁ深いところは大丈夫ですんで、まずはそこら辺の条件を考えてみてください!」
「わかりました! ありがとうございます!」
「では、なにかあったらSNSでもメールでも構わないので連絡してください! よろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いします!」
こうして、ホロサンジの太田さんとの打ち合わせが終わった。