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動画配信業界

そして次の日の20時、場所は直人の親父さんの芸能事務所エンゲージの会議室だ。


俺と直人は予定時間の20時の1時間前に事務所に行き、親父さんと今日いらっしゃる方についての説明をした。


そして予定の20時ごろになると、小平さんと太田さんが会議室に案内されてきた。




「初めまして、エンゲージ代表の八代です、こちらどうぞ!」




と、入ってきた二人を直人の親父さんが席を立って案内した。


そして二人が席に着くと、




「すいません、話の内容が内容なので、名刺をお渡ししてしまうとお2人にご迷惑がかかる可能性がありますのでこちらに置かせていただきますね」




と名刺をテーブルの上に置きつつ、案内した。




「あ、いえいえ、こちらこそありがとうございます」


「ありがとうございます!」




そう小平さんと、太田さんが言ったのを見て、直人の親父さんが話し出した。




「おおよそのご状況は湯月くん、あ、アークさんから伺っております」


「そうですか…なんかみっともない社内で申し訳ないです…」


「いえいえ、どこの会社でも起こることですから」


「そうですね…私も今日から商品部ですよ」




と、小平さんが言った。


確かに今日は4月1日だから、異動が実行されたのか。




「それで、単刀直入に申し上げますと、これを機に小平さんにうちの会社に来ていただき、一緒に動画配信部門を立ち上げませんか?」




と、直人の親父さんが聞くと、




「なるほど…。しかしお言葉ですが、業界的にも結構寡占になりつつあるというか、上下の差が激しくなっているというか、正直バーチャルで登録者の多い配信者がいない状況下で、新規配信者を擁立して立ち上げるというのは容易ではないかと思っています」




と小平さんが言った。


確かに最近は個人勢含めてバーチャル配信者は非常に多い。


ゆきはさんがここまで大きくなったのは、ゆきはさん自身の努力と、性格と、運がうまく重なった結果だ。




「はい、その点についてはある程度は存じ上げているつもりです。ただ、我々のような旧態然とした事務所も、やはり時代の流れに取り残されるわけにはいかないとも思っています」


「なるほど」


「しかし、この動画の流れで我々のような事務所が手を出して成功していないのは、我々にはこれまでにこの事務所を大きくしてきた成功事例や教訓があり、逆にそれらの教訓が障害となっているのです」


「そうだったんですね」


「なので、やるならその道を知っている人達とと思っており、丁度その折にお話を伺いまして是非と思いまして」


「なるほど、ありがとうございます。ただ、正直本当に今からの0スタートでやれるかと言われますと…」


「そこは、我々は逆に皆さんが触れていないリアル芸能人の業界ですので、その知識や経験は様々なところで活かすこともできると思います。例えばですが、夏川りさを動画配信者化するとかも含めて」


「なるほどですね…。確かにそれであれば活かせることがあるかもしれません…」


「ただお話し伺っていた感じですと、小平さんがそのように動かれると、他の方も動かれる可能性があり、配信者の方も動かれる可能性があると」


「はい、ありがたいことですが、正直その可能性はあります。ただでさえ、今ホロサンジのマネジメント部門は空気が良くないですから」


「なるほどですね…」




と直人の親父さんが言うと、




「はい! 私もお願いします!」




と太田さんが手をあげた。




「太田…。ありがたいけど、お前が動くといよいよ配信者の人にも迷惑がかかるだろうが…」


「だって今のままの方向性は、私の方向性と違いますもん!」


「しかし、それは会社に発信して変えていかないと…」


「社長まであっち側なのにどうやってやるんですか! むしろそれやってきた結果が小平さんの異動じゃないですか!」


「ま、まぁ…」


「なるほど、アークさんがおっしゃってた通りですね。ちなみに太田さん、もし小平さんがこのように動いたら、動く可能性のある社員の方はどれぐらいいますか?」


「そうですねぇー、旧第1グループは全員ぐらいの勢いで動きそうなんで10人ぐらいでしょうか!」




と太田さんが元気に答えた。


それを聞いた直人の親父さんは、




「なるほど、これはちょっとちゃんと対策してやらないと泥沼化しそうですね…」




と言った。




「ちなみに太田さん、配信者の方々は動かれますか?」




と直人の親父さんが追加で聞くと、




「そうですねー、そればっかりは配信者個人によるところがありますし、動くにしてもそのまま移動はできないでしょうし、転生告知とかもできないでしょうから、今まで積み上げたチャンネルを捨てなきゃいけないので、全員ではないとは思いますが…」


「なるほど…これは進め方もちゃんと考えないと、視聴者さんにも迷惑かけちゃいますね。それだけは、うちみたいなところもホロサンジさんみたいなところも変わらないでしょうから」


「それはそうですねー!」


「しかし、とにもかくにも小平さんがいらっしゃらなければというところではあるのですが…?」




と、直人の親父さんが小平さんの方を見ると、




「い、いくつか条件があります」


「はい、なんでしょう」




そう言うと小平さんは条件を話した。




1.ホロサンジから移動してくる社員がいた場合、待遇を維持することを約束してほしい。


2.もし配信者で移動したいという人が出た場合は、その配信者の1年分の収入の維持を約束してあげて欲しい。


3.配信者に寄り添うという文化を壊したくないので、文化の維持を約束してほしい。


4.小平さん達から現ホロサンジ配信者への勧誘は一切行わないことを了承してほしい。




小平さんの顔は真剣だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんかキリ悪いところで終わった?
[良い点] 小平さんも悩んで真剣に考えたんだろうなぁ。と思わせる条件ですねぇ。
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