興味しかない
そして俺は家に帰り部屋に戻ると直人に電話した。
「あいよー、俺が大学生活の合コンに思いを馳せてるときにどしたー?」
「あーうん、ちょっと聞きたいことがあって」
「なんだー?」
「直人の親父さんの会社さ、動画部門作るかどうかって話してたじゃん」
「あー、うん」
「それって進んでるの?」
「んー? どうも動画系の出演者と、ガチガチの芸能人ってマネジメントの仕方とかも全然違うっぽくて、結構厳しいかもみたいな話をこの前してたな」
「そうなんだ」
「それがどうした?」
「いや、ここだけの話にして欲しいんだけど、ホロサンジの社内が今ゴタゴタしてる」
「そうなん?」
「うん、詳しいことは言えないけど、マネジメントの人引き抜けるかも」
「まじ?」
「うん、可能性はある」
「ってかなんでそんなこと知ってんの?」
「色々雪菜さんの相談にのる過程で…」
「まぁいいや、それで俺にどうしてほしいと?」
「正直引き抜けるかどうかは、話してみてもらわないとわからないけど、もし引き抜けたらホロサンジのバーチャル配信者が移動する可能性がある」
「……まじ??」
「少なくとも雪菜さんは動くと思う」
「それ大丈夫なん?」
「わからない。日向ゆきはでは無理だろうから、再び転生的なことをすることになるだろうけど。告知もできないだろうけど…」
「そこまでなん?」
「うん」
「まじか」
「それで、正直、法的な問題とか業界的な問題とか色々あるだろうから、もうこれは直人の親父さんにその気があるなら動いてもらうしかないかと思って」
「確かにな。ちょっと大事すぎて、俺等だけじゃ危険しかない。しかもどんだけ金かかるんだそれ」
「わからないけど、もし直人の親父さんの会社でバーチャル配信者をマネジメントするとなると、ホロサンジと同レベルを視聴者さんに求められると思う」
「うわー。もうわかんねーわそれ。ただ、やるべきことはとりあえずわかった。親父に相談してみる」
「うん、わかったら教えて」
「りょうかーい!」
そう言うと電話が切れた。
そして暫くすると、直人から再び電話がかかってきた。
「めちゃくちゃ興味あるって」
「そっか」
「んで、詳しい状況聞きたいから一回直接話が聞きたいって」
「俺はいつでも大丈夫だけど、既に雪菜さんは困ってきてるから早めが嬉しい」
「あーんじゃ、このまま電話で話しちまうか、ちと待ってて」
そして暫くすると、電話が生活音を拾うようになりスピーカーのような感じになった。
「あー、親父、とりあえず早めがいいって新が言うから、もう電話で」
「湯月くんこんばんわー」
「こ、こんばんは、りのあの時はありがとうございました」
「いえいえ、お役に立てたようで良かったですよ。それで直人から軽く聞いたんだけど、ホロサンジさん本当なの?」
「はい、本当です。もし直人の親父さんが興味あるようであればと思いまして」
「いや、興味はそりゃあるというか興味しかないけど、どういう人を引き抜ける可能性があるの?」
「えっとですね、マネジメント部門の責任者だった人が3月末で異動するそうです」
「それは……」
「あと、その人に紐づいていたというか、その人の考え方を支持していた方々もあるかもしれません」
「えっと、予想より大分社内が揉めてるみたいだね…」
「そうみたいです…詳細は僕もわかりませんが、どうしようもないとお話しされてました」
「なるほど…ちなみに、どういう揉め方してるの?」
「すごい簡単に言えば、お金の稼ぎ方の違いでしょうか。一方は配信者のストレスをなくし登録者を増やし広告売上を増やす、もう一方は案件等を積極的に実施して売上を増やす。こんな感じです」
「あーー。なるほど、ありそうな話だね。それでその異動になる方はどっち側だったの?」
「一番上の責任者だった方なのでどっち側と言うことはないのかもしれませんが、スタンス的には前者でしょうか」
「なるほどねー。ちょっと上手くやらないといけないけど、一回紹介してもらえるかな?」
「わかりました、それでは先方に話してみます。ちなみにご都合的に難しいタイミングはありますか?」
「あるにはあるけど、最優先事項として調整するから、基本先方に合わせるで大丈夫だよ」
「わかりました、ありがとうございます」
「んじゃそういうわけだからー! あ、一応俺も話聞くときは行くぜー」
「あ、うん、了解」
そう言うと電話が切れた。
そして俺はそのまま太田さんに電話をした。
「太田でーす! アークさんさっきぶりだね!」
「先ほどはありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ。雪菜さんにはできる限り迷惑が掛からないように、私達も頑張るから!」
「あ、はい、それでちょっとご相談なのですが、今社内ですか?」
「今日はもう家だよー!」
「あのですね、芸能事務所のエンゲージってご存じですか?」
「あー、あの夏川りささんとかが所属してるところでしょ?」
「あ、はい、そうです。実はそこの社長の息子が僕の親友でして」
「へぇーすごい人脈だねそれはー」
「それで以前から動画部門を検討しているって話は聞いてたので、太田さんからお話しを伺った感じ今後雪菜さんが楽しくやれる可能性はかなり低いと思いましたので…」
「ので?」
「小平さんを引き抜いて、動画部門を立ち上げないか打診しました」
「な、なんと…そ、それで?」
「非常に興味があると」
「ま、まじか…でもそれ大丈夫なの?」
「そこは逆にプロであるその社長さんとかの方がわかってるかと思いますので…」
「な、なるほど…」
「すいません、全てではないですが勝手に内情を話してしまって」
「あ、いやいや、業界内でもあそこの会社はどうだとかそう言う話は出回ってるから、もはやうちの今回の話も遅かれ早かれだとは思うからそれはいいけど…」
「それでもしよければ小平さんと一度話したいと言われておりまして、ご紹介いただけないでしょうか?」
「そ、それは、全然いいけど……その話、私も一緒に聞いてもいい?」
「それはもちろん大丈夫だと思いますよ」
「わ、わかった。一回小平さんに連絡してみるから、そしたら連絡するね」
「よろしくお願いします」
そしてその日の夜のうちに、太田さんから『一度話を聞きたいと小平からもらいました』とメッセージが届いたので、直人に連絡し日程を調整した。