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人生を悲観していない陰キャ

「てか、奢りじゃなくていいからこの後ラーメン食いにいかね?」


「んー、いや今日は帰ったら動画配信するからやめとくわ」


「いや、お前昨日もそういって帰ったじゃねーか…」


「まぁ、そういうことなんでー」


「ったく、ラーメンは彼女が一緒に行ってくれねーんだよ!」


「そんなこと俺に言われても…」




俺、湯月新ゆづきあらたは、都内の私立四谷高校に通う高校3年生。中高一貫校と言われるところ で、話しかけてきた八代直人やしろなおととは、もう中学1年から6年の付き合いになる。



直人は、まぁいわゆる高スペック男子で、イケメンで頭もよく家もお金持ちでお洒落で社交性も高く、うちは男子校のくせに彼女が切れない。


中1の時に、たまたま俺が得意だったゲームを直人がやっていて「ここからあがらねー!! これどうしたいいん??」と、隣の席だった俺に話しかけてきて、そこから何故かかまわれ続ける、唯一と言ってもいい友達だ。


多分。俺はそう思ってる…



6年間、殆どの学校行事を直人が仕切り俺が巻き込まれる形でボッチ回避され、学校で俺がゲームの実況配信をしていることを唯一知っている人間でもある。


俺は、なにせ陰キャ。


とりあえずひきこもり体質なのだ。


洋服考えるのが面倒くさい、髪切るのが面倒くさい、そんなことやるならオンラインゲームやるわ。という、自分でも救いようない陰キャ性質だと思ってる。



「食べることも面倒くさいからゲームやる」という性質も併せ持っていたため太りはしなかったが、目にかかりそうな前髪、ひょろっとした体型に微塵もお洒落に気を使っている感を感じさせないよれっとした制服で、見事世の中の陰キャのイメージを体現していた。


男子校ということもあって異性の目に触れるのは通学時ぐらいだから、女子にキモいと言われる機会もなく、特に彼女が欲しい! とも思っていないので、そんな外見でも高校生活に何ら支障がない。



中身に関しても、親父がゲームをやる人間で兄弟もいなく、小さいころからゲームに触れてきて、小学校高学年では溜まったお年玉でカスタムPCを購入しPCでゲームを始めた。 


両親ともにそういうことへの理解が高く、「勉強ちゃんとやるなら別に悪いことしなければ何やってもいい」という感じで、変に時間の制限をされることもなかったため、見事に陽キャな皆さんとの話し方もわからず話すネタもなく、無口でいつもゲームしている奴という中身も形成された。



更に通っている高校が、家の格でカーストが決まるような金持ち学校でもなく、有象無象によってカーストができてしまう公立高校でもなく、カッコいいや可愛いでカーストが決まる共学校でもなく、都内有数の高偏差値男子校で全生徒が変に大人びている。


それもあってか「イジメとか無駄じゃね?」「見た目がどうの言うなら芸能人になればよくね?」的な感じで妙に達観していて、


こんな俺でも!


別に好かれているわけではないけど!


特にいじめられたり蔑ろにされることなく!


高校生活を送れてしまっている…


そう何事もなく高校生活が送れてしまっているのだ。直人のおかげという部分もかなりあるが…



尤も、これに気が付いたのは高校生になってからで、特に不満があったわけではないがよくわからず塾に通わされ受験し、この中高一貫校に受かっていた自分を褒めた。


ついでにその道を強制することなく指し示してくれた両親に感謝した。心の中で。




そんな数々の奇跡的な巡りあわせと、割と緩い校風と男子校特有の「そんなんいいからつるんでバカやろうぜ」という空気が掛け合わさり、それを普通とは違う形で取り入れた、他の高校ではとても生きていけないような見た目も中身も陰キャだけど別に人生を悲観しているわけでもない、全肯定陰キャとして出来上がったのが俺だ。




さて、今日の配信でミスリルランクに行けそうだなー。チーターに捕まらないといいんだけどなぁ。なんて思いながら、家に帰る電車に乗り込んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 別に自分の生きるステージと言うかテリトリーと言うかをきちんと理解して、その中で生きれば陰キャだろうがDQNだろうが良いんだよね。何も考えずにやってると行き詰まるから気付くまでの運は必要だけど…
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