雪の面影
俺と蛸川は何度か移動し色々なところで飲み歩いた。そうしているといつの間にか何時間も経っており、このままクリスマスよ過ぎ去れ、と切に願ったのであった。
俺は割と酒に強い方で、酔っても多少愚痴が多くなるだけだが、蛸川は徐々に順調に酔っていき、この頃には中々ヘロヘロになっていた。と言っても普段から蛸川は割とヘロヘロな部分があるのでそこまで大きく変わるわけではないのだが。
蛸川は共食いのごとくたこ焼きを頬張っていた。
「うめえなあ、あったかいなあ」
「しかし寒い」
「だなあ」
そんなことを言いながらたこ焼きを食べながら次の飲み屋へ移動する。そうして次の飲み屋でも飲んで食った。この頃には今日がクリスマスイヴであることも忘れかけてきていた。中々気持ちの良い酒に感じた。
蛸川がまたぐいっと酒を流し込んだ。そして「プッファーーー」と大きな声を出す。するとその声が聞こえていたのであろう見知らぬ女性がこちらに声をかけてきたのだ、というか蛸川に声をかけてきたのだ。
「君!良い飲みっぷりやねえ」
蛸川は少し驚いた後、ニンマリと笑い「いやあ、それほどでもぉ」と気持ち悪く言うのだった。
「よかったら一緒に飲まへん?」
「んあ、いいのですかい?こんなタコみたいな私と」
「いいに決まってるやん!飲も飲も!」
そうして俺たちは三人で飲むことになった。
「私は樽井みさき、みさきって呼んで!よろしくね〜」
「我輩は蛸川っていいます、下は慈蔵っていいます、どうぞよろしく」
「あ、住吉っていいます、」
樽井みさきさんは俺たちより年上の二十七歳のお姉さんであった。茶髪のショートカットで感情が豊かで一緒に飲んでいるときは殆ど笑っているような人であった。お酒の飲みっぷりも蛸川を超えるほどであり驚かされた。うん、可愛い、そして何より、胸がでかい!服の上からでもわかるくらいに!エロい!エロいぞお!おい!エロいんだぞ!こらああ!!いや待て、女と絡んでもろくなことがないであろうことはよく知っているだろう、落ち着け落ち着け、うん、よし、落ち着いたな、よし...。エロい!こらああ!!クリスマス万歳!!!
「へー、まだ大学生なんか〜、若いなあ」
「いやあ、みさきさんもまだ若いでしょお」
「いやもうおばさんよ、二十七やで!歳とったなあ」
「いやいやまだまだ若いですよお」
酒をぐびぐびと飲みながら盛り上がり楽しげに喋っているみさきさんと蛸川を尻目に俺は中々会話に入れずただひたすら酒を少しずつ飲むばかりであった。
するとみさきさんは俺を気遣ってくれたのか、俺の方を見て言った。
「えー、おばさんやんなあ?」
「え、いや、全然、綺麗だと思います」
「うんうん!」と蛸川が大きく頭を振り頷く。
「えー、嬉しいな〜」と言ってみさきさんは酔って赤くなった顔で微笑んだ。
それからまた少し時間が過ぎた。中々のハイペースで酒を飲んでいたら俺も合わせ三人共中々酔いが回っていた。
みさきさんは蛸川のボヨンボヨンの腹を触りながら笑う。
「あはは、慈蔵くん可愛い〜きもちい〜」
「あ、あ、やめてくださいよ〜、みさきさあん」
俺は心の中で言う、この破廉恥野郎め!
こんなにも自分が太っていないことを呪ったことはないであろう。自分よクソったれ!
それからも二人はどんどん盛り上がり、俺はどんどん喋らなくなった。そうしてみさきさんとイチャイチャしながらニンマリしている蛸川を見ていたら段々と腹が立ってきた。クソ、こいつさっき「女はいらん」なんて言っておったではないか、なんなんだこの気持ちの悪いタコ野郎は!ぶち殺してやろうか!おい!変われ!そこを変われ!その女を俺に寄越せ!
そうして怒りが収まらず俺は席を立つ。そして店を出ようとしたところで蛸川が俺を呼び止めた。
「おおい、どこへ行くんだ、飲もうや飲もうや」
「うるせえ!お前さっき『ビールと旨い飯さえあれば満足だ、クリスマスを共に過ごす女などいらん』とか言ってたやろ!おい!このホラ吹き裏切り者!地獄に落ちろ!」
そう暴言を吐いて俺は店を出た。金は当然置いていかなかった。あんな奴とここまで割り勘で飲んできたことにさえ腹が立っていた。てめえが全額払え!しかし何故にみさきさんはあんなタコ野郎を!俺の方が絶対にカッコイイだろ!これだけは言える!なのになんなんだあの女は!エロかったなあコンニャロ!!クソが!!クリスマスクソが!!!
そうして俺は怒りを噛み締め俯きながら雪降る街を早歩きで歩いて行った。
歩きながらふと顔を上げた時であった。そこは見覚えのある道であった。近所なのだから見覚えくらいあるだろうが、そうではない、もっと見覚えのある、記憶に刻まれているほどに見覚えがあった。
そこにはある女性の姿が見えた。整っており綺麗で可愛らしい顔、綺麗な白い肌、綺麗で透き通った白に近いほどの金髪。その雪の中に佇むギターケースを背負った小柄な女性、和歌山雪さんの横顔に俺は、見惚れていた。雪さんはその先にある通天閣を見上げていた。
そうして俺は、過去に、過去の記憶に、迷い込んでいた。
雪さんは俺に気づくと可愛らしく微笑み「ありがとう」と言って俺から缶コーヒーを受け取った。そうしてその缶コーヒーで冷えた手を温めながらマフラーに顔をうずめた後、また通天閣を見上げるのだった。俺も隣に立って同じように通天閣を見上げた。夜空の下、そして雪の中、通天閣は燦然と輝いていた。しばらくそうして二人して見上げ眺めていた。ふと彼女は俺を見上げ「すごいね」と言って微笑むのだった。そうして俺はぎこちなく微笑み返しながらまた見惚れ、なんとか「ですね」と言ったのだった。雪は依然として降り続き、俺と雪さんを寒さで包むのであった。でも俺の中には何か温かいものがその時、あったのだった。
過去の記憶から追い出され現在に戻ってきた。あれは丁度一年前のクリスマスイヴのことだ。しかし二年連続ホワイトクリスマスイヴか。そんなことを思いながら、その一年前の過去の記憶を振り切り逃げるように俺はまた行くあてもない道を早歩きで歩きだした。歩きながらも彼女は今何処で歩いているのだろう、なんてことを思ってしまっていた。
寒いクソが寒いクソが、そうマフラーの中でぶつぶつ言いながらひたすらに何処に向かうでもなく歩いているといつの間にか俺は知らない場所に来ていた。携帯で地図を見ると俺は南海電鉄なんば駅の近くまで来てしまっていた。とりあえずこの寒さを凌げる場所に行こうと、俺はなんば駅へと向かった。
駅に入ると人が溢れていた。クリスマスイヴということもあるだろうが、どうやら雪で電車が止まっているらしい。これでは雪は凌げても人に潰される。参ったなあ、と思いながら一度違う場所へ移動しようと、なんばパークスの方へと向かう。そうしてまたマフラーの中で「クソが」と呟いた。
パークスの方もやはり人で溢れていたが電車を待っている人がいない分、駅構内よりはいくらかマシであった。空は段々暗くなりゆき、依然、雪は降り続ける。
しかしここに来たのは間違いであったとすぐに気づく。パークスに溢れる人たちはカップルや家族連ればかりであった。そしてあらゆるところで光り輝くカラフルなイルミネーション。また「クソが」と呟きながら俺は溢れる人々とイルミネーションを睨みつけていた。そうしてまた、ある女性の姿が目に映る。
そうして俺はまた、過去の記憶に、迷い込んでいた。
雪さんは俺の少し前を歩きながら、あらゆるところにあるイルミネーションを右へ左へ大きく顔を振り向けながらはしゃいでいる。少し後ろを歩く俺はその雪さんの揺れるブロンドの髪にまた見惚れていたのであった。
ふと振り向いた彼女は俺に向かって何も言わず笑ったのだった。その笑顔が可愛くて、あまりにも可愛くて、俺は一瞬時間が止まったようにさえ思えた。また温かく感じていた。
過去の記憶から追い出され現在に戻ってきた。あれは一年と少し前、十二月の初め頃のことだ。思春期になってからはイルミネーションを見ても小さい頃のように綺麗だとは思わず、今日のように睨むばかりであった。しかしあの日は違ったのだ。俺はその日、そのカラフルな眩しいだけの鬱陶しいイルミネーションなる光を見て純粋に綺麗だと思ったのだ。今思えばあの時の俺は馬鹿だったのかなんてことを思いつつ、今目前に広がる眩しいだけの光の中に、彼女の姿があったのなら、彼女の笑顔があったのなら、やはり俺はまたこの光たちを綺麗だと思ってしまうのだろうな、なんてことを思ってしまい、更には彼女は今どんな光を見ているのだろう、なんてことを思ってしまった。
そうして俺は振り返りパークスから駅構内に早歩きで戻り、人混みをかき分けながらなんばグランド花月方面の出入口から外へ出た。ここも人ばかりである。
話は変わるが、その頃、京都は四条河原町ではなにやら「ええじゃないか騒動」なる謎めいたことがあったそうであるが俺には全くもって関係のないことであるからしてそんなこたあどうでもいい。すまない、話を戻そう。
依然降り続く雪が冷たく鬱陶しいので俺はそのまま近くにあるゲームセンター、タイトーステーション難波店に入った。
まずUFOキャッチャーで欲しくもねえぬいぐるみを取ろうとして失敗し、次に好物のスルメがあったので取ろうとするもまた失敗し、無駄極まりなく金を擦って終了。
苛つきながらレースゲームがあったのでこれで一位をぶんどって気持ち良くなってやろうと思い百円を投入。以前にもやったことのあるこのレースゲームはコンピュータと競い合う一人用モードと、隣の人とコンピュータを交えて競い合う複数人モードがあり、偶然隣に男が座っており、俺はその男とコンピュータを交えての複数人モードで競い合うことになった。前も誰かと複数人モードで遊んだな、なんて思った。
誰か知らんが蹴散らしたらあ!と心の中で叫びレーススタート。
中々悪くないスタートが切れて、その後もどんどん俺は上位に這い上がっていく、そして中盤からはずっと一位をキープ、二位には隣の男が続いている。そして俺が一位をキープしたままレース終盤、二位の隣の男は徐々に迫ってきている、その時、ふと隣で可愛らしい声がした。笑い声だった。可愛らしい聞き覚えのある、俺の好きな声が聞こえた。
そうして俺はまた、過去の記憶に、迷い込んでいた。
彼女は隣のゲーム機に座り必死にハンドルを動かし、そして俺を抜いていった。そして可愛らしい声で「よし!」と言う。俺は負けじと「おい!待たんか!コラ!」と言った。そうしてそれを聞いて彼女は、雪さんは、可愛らしく声を出して笑ったのだった。
俺は煽られた気分になり更に眉を吊り上げ「待てぃ!!」と言うもどうすることもできずに結局俺は彼女に負けたのだ。そして負けてムッとする俺を見て雪さんはまた笑ったのだった。
過去の記憶から追い出され現在に戻ってきた。あれは一年一ヶ月程前、十一月頃のことだ。そうか、前にこのゲームを一緒にやった相手は雪さんであった。あの時の俺はちょっとゲームで負けた如きでムッとして子供だったなあなんて思い、心の中で少し笑ってやった。今の俺ならそんなもんでムッとなんてせずに「いやあ、負けちゃったあ、雪さんは強いですねえ、お見事です」なんて紳士的に言えたのになあ。
ふと我に返る。思わず「んがぁ!!」という声が漏れる。俺が過去の記憶に浸りボーっとしていたことで、俺の車は壁にぶつかった状態で壁に向かってひたすらにタイヤを回しているばかりであった。いつの間にか隣の二位だった男にも抜かれている。急いでハンドルを切ってコースに戻るも時すでに遅し、隣の男は一位でゴール、結局俺はコンピュータにも抜かれて八位中六位でゴール。
そして俺はムッとした。
隣を見るとハンドルを握り画面を見つめ笑う男とその隣に立って男を見て同じく笑っている女の姿。クソ!妨害だ!あの女が笑ったから!だから俺が過去に迷い込んでしまったのだ!今聞いてみれば全然違う声ではないか!なんなんだあの女!クソが!そう心の中で罵倒していると、ふと隣に座る男が俺の視線に気付いてこちらに顔を向ける、俺は瞬時に目を逸らしゲーム機から立ち、歩き去ろうとする。そこに後ろから「おい!」という声がかかる。ビクッっとなり体が固まる。鼓動が速くなる。後ろからまた次の声がかかる。それは思わぬ言葉であった。
「住吉?」
思わず「え?」という声を漏らし振り返る。見覚えがありそうななさそうな顔がそこにはあった。
その男は俺の顔を見て「やっぱり!よお!久々やなあ!」と言ってきた。それに対し俺は戸惑いつつ顔を顰めて言う。
「誰だね」
「俺や!忠岡や!中学同じやったやろ」
「あー」
「あーってなんやねん!久しぶり!」
「ああ、久々」
忠岡は中学時代の同級生である。クラスが一緒の時もあったが、別に仲が良かったわけでもないのであまり覚えていないが、まあこいつも所謂陽キャラだったと思う。真冬だというのに地黒なのかなんなのか肌は多少焼けた感じに黒く、あまり外に出ない俺の白い肌とは全然違った。
「いやあ!ほんま久々やな!てかこんなとこで何してんの?」
「いや、まあ」
「あ、彼女ときてんのか、クリスマスイブやもんな」
「いやそういうんじゃなくて」
「あ、友達ときてんのか」
「あぁ、うん、まあそんな感じや」
事実を知られたくないので適当に答えた。
「てことは彼女とかおらんのけ?」
「まあ」
「なんやねん!作れよ!!」
俺はそこで舌打ちをしたが忠岡は気にせず続ける。
「ほら、俺の彼女、かわええやろ」
すると隣に立っている先程俺の妨害をした女が「もう、やめてよ〜」なんて馬鹿らしく言った。そうして二人は顔を見合わせ笑った。
もう一度俺は舌打ちをしてそのまま歩き出し店を出ようとする。
「おい、どこ行くねん」
「帰んのじゃ」
「友達は?置いてくんか?」
「あ?んなもんおらんわい!ボケが!」
「なんで怒ってんねん」
「怒ってないわ!」
「怒ってるやんけ」
「うるせえ!」
「なんやねん、嫉妬か、なあせやろ!羨ましいんやろ!」と忠岡は少しちょけて言った。しかし俺はそれに腹を立たせて、丁度店から出たところで振り向いて言った。
「ああ!?何が嫉妬じゃ!女がいるのがそんないいことなんか!この阿呆垂れボケが!女なんかいらんのじゃ!友達もいらんのじゃ!一人でええわボケが!お前らみたいに一人じゃ寂しくて死んでまう兎みたいな奴じゃねえんだよ俺は!クソったれ!雪に埋もれて凍え死んでしまえ!クソが!タコが!ゲボが!コンニャロメ!!」
そう言い捨てて俺は近くの植え込みの上に積もっていた雪を掴み取り、しかし投げる勇気はなく少し迷った末に、それを口に放り込んだ。冷たい、冷たい、とにかく冷たい。そうして「んぐぅ!」と言いながら忠岡と隣の女を改めて睨んだ。二人は怒るでもなく、俺の奇行を見てただ呆然と立ち尽くしていた。辺りにいたカップルたちも驚いたような表情でこちらを見ていた。
そうして俺は「クソが!」ともう一度吐き捨てて行くあてもない道を再び歩き出した。
歩き出したはいいものの本当に行くあてもなく、寒空の下、苛立ちながらふらふらするだけであった。結局しばらく歩いたが何処に行き着くわけでもなく、マフラーの中でまたクソがと呟いたあと、帰ろうと再びなんば駅の方へと戻ることにした。
苛々しながらふと思いつきポケットから携帯を出し「ダンボール制作員」という名前を見つけそれに電話をかけた。数コールして、あれ、出ないか?と思ったところでようやくダンボール制作員は電話に出た。
「もしもし住吉さんどうも」
何故かいつもより明るく聞こえるダンボール制作員の声が聞こえた。
「おお、箱作、お前暇やろ、ちょいと寒いやも知れんが今から一緒に飲もうや」
箱作は「あー」と言って少し黙った後、言った。
「いやあ、ちょっと今ゲームが忙しくて。」
「ゲームなんていつでもできるだろ、なあだから飲みに行こうや」
「いやちょっとオンラインで一緒にゲームしてる人がいて...」
「え?ああ、そうか、どうにかならんのか」
「いやちょっとその子が一人じゃ難しいっていうんで手伝ってあげてるんですよ、だから...」
俺は眉間にしわを寄せた。
「あ?その子?なんだその子って言い方は、おい、もしかしてそいつは女なのか?あ?」
箱作が息を「ヒッ」と吸うのが一瞬聞こえた。そうしてまた少しの沈黙の後、箱作は白状した。
「いやあ〜すみません、まあ女の子なんですわ、はい、いや、今日初めて一緒にゲームする子なんですけどね、なんかクリスマスイブに一人で寂しいよ〜なんて言うんでね、まあ、僕も男ですからね、まあ一緒にゲームくらいしてあげようみたいな〜」
俺は沈黙したままである。箱作は続ける。
「いや、ねえ、せっかくのクリスマスイヴですしねえ、女の子と一緒にねえ、その、過ごしたいじゃないですか、ねえ」
ようやく俺は口を開き、ぼそっと言う。
「クソが」
「いや、あ、住吉さんもどうです?一緒にやります?」
その言葉を聞いて俺は一気にブチギレた。
「おい!クソ裏切り者が!お前よ、前に女と関わるとろくなことがないって俺と語り合っただろ!そんで肩組んで女なんていらねえ!って叫びあっただろ!忘れたんかクソ野郎!おい!お前はそういうところがあかんのじゃ!クソヘタレ裏切り野郎が!何がクリスマスイヴじゃ!ただの十二月二十四日じゃなかったんか!クソが!クソヘタレ裏切りキモキモスケベ野郎が!」
そう俺はまた人を罵倒して電話を切った。そうしてまた怒った。クッソ、女と関わってもろくなことがないとあれほど言ったろ。
ふと顔を上げて辺りを見るとまわりにいた人々がまた俺を驚いた表情で見ていた。気まずくなり俺はなんば駅へと歩を進めた。
もう怒りで頭が爆発してしまいそうだ。これも貝塚と蛸川が俺に外に出ろと煽ったせいだ!クソが!どいつもこいつも!女と絡んだって嫌なことばかりだと未だに分からんのか!クソが!
そうして怒りながら歩き、なんば駅の近くまで来たところで突然お腹が「ギュリュリュゥ」と鳴った。そうして同時に寒さによるものとはまた違う鳥肌が立ち、俺は顔を青ざめさせる。なんなんだこんな時に、クソがあ。さらに俺の怒りは増したがもはやそれどころではなかったので一旦怒りを抑え息を整える。
そうして俺は尻をキュッと締め息をフウフウ吐きながら、青ざめた顔でなんば駅構内のトイレへ入って行った。




